街にかつての賑わいを
旧家の地主だからこそ可能な
「アートを育むまち」
プロジェクト背景
街にかつての賑わいを
西調布らしさの “最後の砦”
「西調布一番街」は、西調布駅と旧甲州街道の間にある長さ100mほどの商店街。
かつては商店がひしめき、地域の人たちの暮らしの中心地でしたが、近隣にあった工場が閉鎖したことで人の流れが変わり、数年のうちに空き店舗が増加しました。
「かつては上石原という宿場街として栄えた西調布。
そんな歴史ある街に賑わいを取り戻したい」
そう考えていたのは、西調布一番街にも多くの物件を所有している
上石原の旧家・石川家の人たちです。
テレビ番組「カンブリア宮殿」でブルースタジオが紹介された特集を見て、
「この人たちなら街の行く末が違う方向に進むのではないか」と、問い合せました。
2年前からの駅前の再開発事業で西調布駅周辺の建物は取り壊され、
その風景は様変わりしていました。
石川さんとともに街を歩いたブルースタジオは、かつての街の歴史を汲むこの商店街こそ、西調布らしさの“最後の砦”だと実感しました。
石川家の兄弟姉妹の皆さんとワークショップを重ねるなかでつくり上げた
「ここに住む人、関わる人がまちを盛り上げて、“特色のあるまち”をつくる」というビジョンを基に、「西調布一番街つくるまちプロジェクト」を始動。
ブルースタジオはプロディースを手がけました。
コンセプト
アートを育むまち
旧家の地主だからこそ可能なアーティストの応援団
コンセプトは、「街ぐるみでアートを育むまち」。
隣の調布駅周辺に比べて賃料が低く、沿線に美術大学が点在する西調布という立地。そこには、ものづくり作家志望の学生の卒業後の創作場所・アトリエのニーズがあるということです。
そこで、一番街に多くの物件を所有する石川家の人たちが、
商店街をアートのインプット(創作)の場として提供するとともに、
その活動を支援することによって、まちを盛り上げていくのです。
東京にはアートのアウトプットの場は豊富ですが、
インプットの場は不足しています。
創作活動の場の提供は、簿価が低い状態で土地をもつ旧家の地主だからこそ可能なこと。旧家・石川家の兄弟姉妹が地主であるからこそ、アーティストの応援団が可能であり、それによって西調布らしいまちの賑わいをつくり得ると考えました。
デザイン
最低限の箱づくり
最小限の投資で、2軒の空き家をアトリエに
ここで活動するのは、アートの作り手たち。
そのため、入居後に自分たちで内装の仕上げをすることを想定し、
最低限の投資で創作活動のための場をつくりました。
西調布一番街の空き店舗2軒を改装し、
1軒はワンフロアを3つに分けたシェアアトリエに。
もう1軒は、商店街に住みながら活動する人をターゲットとし、
1階をアトリエに、2階を最低限の暮らせる機能を備えた住居にしました。
道に開かれた間口のつくりは、製作・販売・展示の風景がまちの一部となり商店街へと拡がります。ここに昼間に活動する人たちを呼び、まちに活気を育んでいきます。
プロモーション
街を使い尽くす活動家
プロジェクト趣旨への共感が入居の条件
「ここに住む人、関わる人がまちを盛り上げて、“特色のあるまち”をつくる」という
ビジョンを実現するためには、単なる“入居者”ではなく、“まちの当事者”という意識を
共有できる人を集めなければなりません。
そこで、このプロジェクトの趣旨を明確に伝えることを大事にして、
SNSや沿線のカフェやギャラリー、地元メディア等を通じ入居アーティストを募集。
5組の募集枠に対して、24組の応募がありました。
入居者の決定にあたっては、石川家の兄弟姉妹の皆さんによる面接を行い、
“一緒にまちを盛り上げていきたい”というビジョンを共有できる人を選考しました。
最終的に、パフォーマンスチーム、ものづくりユニット、デザインユニット、
そして、3人のイラストレーターという5組11人の入居アーティストが決定しました。
その後の展開
各々が活動を展開
“人”をきっかけにまちに活気を取り戻す
アーティストたちの入居から数ヶ月。
西調布一番街のアトリエでは、各々の入居者たちが物販やワークショップ、ダンス、
絵画造形教室などの活動を展開しています。
既存の商店街店舗と入居アーティストがコラボレーションしてイベントを行うなど、
まちとの繋がりも生まれています。
これらの活動がメディアに取り上げられたり、SNS等で口コミが広がったりして商店街に人を呼び、このまち独自の賑わいが生まれつつあります。
まちを“人”で変えていく試み。西調布一番街のつくるまちプロジェクトはこの先も続きます。