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プロジェクト背景
複合ビルを美術館へ

東京・中目黒における美術館別館の開設

「郷さくら美術館」は、企業のメセナ活動施設として開館した近代日本画の専門美術館。本館は福島県郡山市にあり、昭和生まれの日本画家の作品を中心にコレクションしています。

近代日本画にふれる機会をさらに多くの人に提供するため、
郷さくら美術館が別館の開設場所に選んだのは、東京・中目黒。
桜の名所として知られる目黒川のほとりです。

そこに建つ平成14年築のオフィス・店舗ビルの活用し、
美術館に転用することが検討されていました。

日本のストック型社会への移行は周知のことですが、
建物が短命で取り壊される状況は依然として続いています。
当プロジェクトにおいても、美術館の開館にあたり、
既存の建物を解体のうえ新築することは容易な手段でした。

しかしこれからは、人びとが「継承したい」と思えるストック活用の方法を、
多様化・高度化していくべき時代です。

ブルースタジオは、既存建物のリノベーションによっても
美術館の開設という目的を十分達成できることを検証し、その実現に取り組みました。

プランニング
既存建物を有効活用

テナント棟・美術館棟からなる複合施設へコンバージョン

既存のオフィス・店舗ビルを活用し、美術館の開設という目的を実現すると共に、
余剰床についても有効に活用するため、既存のビルをテナント棟・美術館棟からなる複合施設へコンバージョン(用途変更)することを計画しました。

コンバージョンにあたっては、関連する法令への適合や
異種用途間における防犯性能と避難性能の両立を克服していきました。

美術館という用途の特性上必須であったバリアフリー新法への適合においては、
小規模な改修計画という制限のなか、限られた面積を有効に活用することにより、
幅広い人が快適に美術作品を鑑賞できる空間を実現しました。

デザイン
昼夜で異なる表情

1100 枚の桜紋様の陶器タイル

美術館のファサードに使用した、
郷さくら美術館の桜の紋様をモチーフとした1100枚の陶器タイルは、
昼夜で大きく異なる表情を演じます。

伝統的な瓦と紋様を連想させる昼間の表情と、
背面からのライトアップによる斬新で煌びやかな夜間の表情。
多面的な印象は、幅広い層を気軽に近代日本画へと誘引します。

作品展示という特性をもつ美術館内部は、
建物の正面裏に増設した階段室をアメニティ空間と兼ねた空間にすることによって、
展示室への直射日光を遮るとともに、エンターテイメント性、快適性も向上させました。

その後の展開
地域のランドマークに

「中目黒は、マチにふさわしいものを手に入れた」

2012年3月、目黒川の桜が満開を迎えるなか、
「郷さくら美術館 東京」は開館しました。

下町と先進的な文化が入り交じる東京・中目黒の街で、
伝統と斬新さが共存する陶器タイルのファサードは
意匠性の高いランドマークとして、来館者への道標になっています。

「郷さくら美術館 東京」は、2012年のグッドデザイン賞(公共領域のための空間・建築・施設部門)を受賞。「小規模の個人的な感性を大切にした美術館。そしてそれにふさわしい、既存施設の改修と言う手法で実現された美術館。……中目黒は、マチにふさわしいものを手に入れた」と評価をいただきました。



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