blue studioトップページ > Magazine > INTERVIEW > No.07 <「ビジネスはクリエイティブに!」> 森田威 / 中嶋志朗 / Takeshi Morita / Shiro Nakajima
INTERVIEW No.07
森田威 / 中嶋志朗 / Takeshi Morita / Shiro Nakajima
今回ご紹介するのは公認会計士の森田さんと(株)リトモ・クリエイト社長の中嶋さんです。お二人はカフェ併設のビンテージバイクショップ「ritmo sereno」の共同オーナーでもあります。ビンテージバイク、カフェ、生き方、ビジネス、ガレージライフ、デザイン、ファンド、証券化、エンタテインメント・・・と様々なフィールドを縦横無尽に語っていただきます。ブルースタジオとのコラボレーションの可能性も!?
ブルースタジオ(以下BS) 森田威(以下TM)中嶋志朗(以下SN)
ビンテージバイクをシゴトに・・・
BS | はじめに、お二人とバイクとの出合いは?そしてお二人の出合いは? |
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SN | 僕は小学生の頃からクルマやバイクが好きでしかたなかったですね。 |
TM | 僕は小学生の頃からクルマやバイクに乗ってましたね・・・(笑)
僕らの出合いはあるオートバイ雑誌です。中嶋と浮田(=リトモ・クリエイト役員、現米国在住)が記事を書いていました。彼らはガレージをもっていて、バイクいじりの趣味の延長で海外での仕入、国内での販売をインターネットや雑誌でやっていて面白そうなので連絡を取ったんです。僕自身もバイクも彼等から買ったんですよ。中嶋や浮田のガレージにもよく遊びに行って「ガレージとカフェが併設のバイクショップをつくりたいね」という話をよくしていました。 |
BS | それで、このショップが出来たわけですね。 |
TM | 当時の中嶋や浮田の生活は、仕事と趣味が渾然一体としているようでした。バイクの輸入販売や修理にせよ、音楽や文筆活動にせよ、一見趣味のように見えながら実はそれで食っている。僕らはもっとビジネス寄りの人間ですが、「彼らのような生き方ともっと身近でありたい」という思いを持っている人は多いのではないかな。つまり英米アングロサクソン的な、仕事(生活手段)とは切り離してガレージライフをエンジョイするというスタイルより、南欧ラテン的な生活手段と趣味(と言うかライフスタイル)が時間・空間を隣接させているようなイメージですが・・・ |
BS | つまりシゴトとアソビの中間的な位置付けですか? |
TM | そうですね。「大好きな一台のバイクを30年かけてカッコ良くしました。」とか、「自分の家を長い時間かけて自分の好きなようにリノベートしました。」という英国風スタイルもお洒落で豊かなものだと思うし、日本でも増えてるでしょう、僕らのお客さんにもいらっしゃるけど。それとは別に、浮田らの生活と自分の接点を考えたとき、好きなことやってそれで食えて、というのは、日本では限界があると思ったのです。それで浮田はLAに移り住んじゃったんですが・・・(笑)それはおいといて、彼らのようなライススタイルを広げたい、でもそのためにどうすればいいかを考えると、それを収支がきちんと合ったビジネスベースに乗せていく必要がある。僕にとっては、ここで大儲けするということではなくて、彼等の個性的な生き方が喰っていけるということがとても重要なことです。 |
BS | そういえば、ritmoで扱っているビンテージバイクとブルースタジオで扱っているリノベーションマンションは似ているところあるのでは・・・? |
SN | 同じだと思いますよ。古いものに手を加えてバリューアッドするんですから。みんなコンクリ打ち放しにフローリングでシステムキッチンみたいなお決まりのマンションをほしがっていたような気がしていたけれども、実はもっと個性的なものが欲しいという時代になってますよね。 |
TM | 仕入れの感覚や視点も近い? |
BS | 近いでしょうね。それから客層も近い? |
SN | そうでしょうね。 |
バイクショップritmoから、ガレージライフへ
BS | カフェを併設しているのはどうしてですか? |
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SN | 普通、バイクショップで出される一杯のコーヒーってものすごくプレッシャーになるじゃないですか。ritmoでそれはイヤなんです。だったらお金だしてもらって、お客さんに居る権利を持ってもらうんです。バイク眺めてもらってるだけでもいいですよって。そうして出合いの場にしていきたい。 |
TM | 「バイク好きな仲間を集めたい」というのが出発ですから。お客さんが自分のバイクをファクトリーに持ち込んで「おれのバイクをいじらせろ!」なんていうのは普通のバイク屋では考えられないでしょうが、ritmoではそういう仲間も歓迎していきたい。 |
BS | ガレージ、ファクトリーって何度か話に出てますが?たとえばヨーロッパで地下にDIYの作業スペースを持ってたりしてる人がたくさんいるじゃないですか・・・ |
SN | そのイメージですよ。(掲載された雑誌を見せながら)僕が以前借りていたガレージはこれです。10坪くらいの貸店舗なんですけど、こういうガレージライフができる物件はめったにないんですよ。ただ、需要は間違いなく増えてますよ。 |
BS | 僕も物件を見て廻っていますからよく分ります。中嶋さんはそういう個性的な賃貸物件が無いという状況をどう捉えていますか? |
SN | ひとつは、バイクを家の中に入れることに対する大家さんのネガティブなイメージがあって、そういう物件がとても少ない。だからガレージ物件を探すとなると保証金などお金のかかる貸店舗になってしまうんです。 |
BS | ブルースタジオでは賃貸物件と販売物件をつくっていますが、いま販売の物件が多くて賃貸派のメンバーの方々にはかなりお待たせしているんです。今お話聞いていて、ガレージライフ用賃貸物件のラインナップも可能性があるかも知れないと思いましたね。ここはファクトリーとカフェが併設の店鋪ですが、ガレージとキッチンが併設の生活があってもでもいいと思うんです。 |
TM | 例えば、入口は大きめのガレージでクルマが止められてあって、リビングにカウンターバーがあってそれでお客さんをもてなす・・・その生活、不自然ではないですよね。その感覚なんです。 |
BS | だんだん「賃貸ガレージ物件!」やりたくなってきましたよ。 |
TM | 例えば、みんなで探してきた物件を、ritmoの中嶋がプロデュースしてブルースタジオさんがリノベートするというコラボレーションは出来そうですよね。このコラボチームには実際にガレージライフの実践経験もあるし、50件を超えるガレージ取材の実績、居住空間のリノベーションといった実績もある。「ガレージライフのような生活に憧れるけれど、どうしていいか分らない」という人にもデザイナーが目に見えるカタチにした選択肢を用意することができます。生き方の価値観は多様になっているのに、実際我々の目の前にある選択肢はまだまだ少ないですよ。ritmo createという会社では中嶋的な生き方をぜひ提示していきたい。 |
ファンドビジネスとは・・・
BS | こ森田さんはファンドビジネスをいくつも手掛けられていますが、ファンドや証券化といったものを分かりやすくご説明していただけますか? |
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TM | 近頃は、商品や不動産のブローカーまで「ファンド・マネージャー」とか言うらしいんですが、ファンドってのが不必要に分かり難く、そのためかなり都合いいように誤用もされていますね。一言で言えば、株式会社のような資金プールの仕組みを想定して貰えばいいでしょう。例えばたくさんのワンルームマンションでも、たくさんのミカンの樹でも、肉牛でもアーティストのCDでも何でもいいんですが、一方で将来キャッシュフローを生むような資産やプロジェクトがある。これに対して、休んでいるカネ、遊んでいるカネがある。これをどう結びつけるか。結びつける仕組みとして、株式会社があり、ファンドやTK(匿名組合契約)なんかがある。別に、先にファンドとか証券化とかいうスペシャルな箱があるわけじゃないんですよ、道具ですからこれらは。 |
BS | なるほど。 |
TM | 要は、カネを必要とする企業家とカネの運用をしたい投資家サイドのニーズを聞いて、それに最も合う仕組みを作る、その仕組みの一例がファンドだったり株式会社であったりTKであったり。ファンドや証券化が先にあるわけではなく、あくまで関係者のニーズを聞いて、安くて簡単・便利で尤も相応しい道具を選択する。ファンドや証券化というとすぐにケイマンにSPC作ってPLNとかややこしい証券発行させて・・・なんてこと言い出す金融マンがいますが、何でそんな高くて手間かかることすんの?と。周富徳先生の中華包丁のように、何でも使える名刀が1本有れば、ケイマンもリンク・ノートも要らんのですよ。ただ、コストや税法の関係から周先生の出刃包丁では刃が入らんことがある、その時はゾリンゲンのペティ・ナイフも使うよっていうのが、我々のファンド・アレンジメントであり証券化なんです。 |
BS | ベイビーフェイスの来日公演にそのファンドの手法を使われたそうですが・・・ |
TM | ある広告代理店の営業マンの方とそこに出入りされてる業界の方が、エンタテインメントにも証券化の手法が使えるんではないか、と考えられたんです。出演料や移動費、滞在費など多くの出費が入場料収入に先行するんですが、普通プロモーターはそれを自己資金あるいは金融機関からの借り入れでまかなっているんですね。例えば、この話を持ってきてこられたのは、とても力のあるプロモーターの方でしたが、ベイビーフェイスの公演の前に、別のアーティストの公演が2つくらい重なっていたらしいんです。そうすると彼が自己資金でやっている限り、ベイビーフェイスの公演は前の2つ(の公演に必要な事業資金)に押されて、場合によっては呼べなくなる、という可能性もあった。そこで、この会社の若い役員の方が、「投資家から資金を集めてみてはどうだろうか?」と。このときは正確に言えばファンドというより、TKですね、これを使いました。新たに設立した会社が、法的な仕組みやリスクとリターンの関係などの情報を投資家層にしっかり開示・説明し、彼等と匿名組合契約を交しました。結果、投資家だけに特別のチケット等の特典をお付けした上で、リターンも年利換算で二桁近いところが出せて、関係者皆に喜んで頂けたようです。 |
BS | 一般のファンの人達にこういう話は難しいのかと思って聞いていましたが、公演中止のリスクが無くなるということはファンにもとても大きいメリットがありますね。 |
TM | そうですね。ファンの方にも楽しんでいただけたし、いいシゴトが出来たと思っています。 |
共感される仕事をしたい・・・
BS | 居住系ファンドの話にしてもそうですね。エンドといわれる一般のお客さんがハッピィーになるための仕組みなんだと思います。そうだとしたら、先程のガレージライフのポテンシャルニーズを掘り起す手段としてファンドや証券化の手法というのはとても有効なんではないでしょうか? |
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TM | ええ、それには実績が必要です。ブルースタジオさんがやられているように、ボロ家でもリノベートすれば、そこにこれだけの金額を支払って住みたいという人が実際に居るという実績です。投資した金額とリターンの金額を開示して投資家の方々を説得していく必要があります。あまっているお金を、それを必要としている人達のところへ流していくのが金融であり、私の仕事だと思っています。血流をよくするということです。ファンドによって物件を取得してデザインマンションやデザインオフィス、デザインショップ、ガレージライフ・・・いろんな商品が考えられますよね。ブルースタジオの大島さんともそんな話で盛り上がった・・・ |
BS | 他に「スケルトン貸し」ファンドもやりたいですね。スケルトンで借りて自分で自由にリフォームできる・・・ |
SN | アメリカではそれは基本なんですよね。僕もスケルトン貸し物件があったら僕絶対入りますよ。 |
BS | こ絶対? |
SN | 絶対入りますよ。 |
BS | お客さん1人ゲットですね(笑)。 |
TM | 一般のお客さんを見ていると、彼等はもう用意されたものを信じなくなっていますね。彼等は余裕があるからそれを買うんではなくて、もっと切実なんです。「マスに買いに行くんではない」という自分の感覚にとても素直ですよ。 |
BS | 眠っている価値を価値と感じるマーケットが確実に存在しているのに、今はそれを満足する供給がないという状況です。一方、投資家サイドでもそうしたものに興味を持ちはじめている方々がいる。この辺がうまくリンクしてくると絶対面白い。 |
TM | 共感される仕事をしたいですよね。 |
BS | 是非一緒にいい仕事をしていきましょう。本日は貴重なお話有り難うございました。 |
2002年7月2日 ritmo sereno cafeにて
インタビュアー:泥谷英明(blue studio)
森田威 / 中嶋志朗
Takeshi Morita / Shiro Nakajima
森田威
Takeshi,Morita/公認会計士、
あるとコーポレーション株式会社代表取締役
http://www.alt.gr.jp
旧ビック8国際会計事務所、独立系コンサルティング会社、不動産投資会社、米系証券会社等を経て、
2000年あるとコーポレーション株式会社及びあると法律経済綜合事務所設立。
弁護士、公認会計士、税理士等士業のネットワークによるワン・ストップ型の総合事務所としてスタート。
不動産ファンド組成や貸付債権小口化等の経験を生かし、
2001年にはベイビーフェイスの来日公演に投資家の資金を呼び込み、
国内初の「エンタテインメント証券化」商品として話題に。
また、2001年3月には中島氏他と共同で「ritmo sereno」を出店。
中嶋志朗
Shiro,Nakajima/(株)リトモ・クリエイト代表取締役社長
http://www.ritmo-sereno.com
幼少の頃から四輪に親しむ。
大学生の頃に二輪に傾倒し10坪の貸店舗をガレージに改造してガレージライフを楽しみながら、
友人浮田氏とともにビンテージバイクの輸入販売を始める。
2001年3月「ritmo sereno」を出店と同時に代表取締役に。
バイクのライター、ミュージシャンでもある。
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