blue studioトップページ > Magazine > INTERVIEW > No.08 <「アイデアは地球を救う」> 長岡 勉 / Nagaoka Ben
INTERVIEW No.08
長岡 勉 / Nagaoka Ben
今回は建築設計を行うかたわら、プロダクトデザイン、インテリアデザインと幅広く活動されている建築家 [ POINT ] の長岡勉さんにスポットを当て、今年4月に自らリノベーションした事務所兼サロン[ kiss cafe ] にてデザインについて、御自身の活動目的についてインタービューしました。
ブルースタジオ(以下BS) 長岡 勉(以下BN)
デザインはボーダレスに!
BS | 長岡さんは建築設計活動だけでなく家具設計、ワークショップの企画とジャンルの垣根を飛び越えたマルチな活動をされていますが、多岐にわたる分野で活動するようになったのはなぜですか? |
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BN | いつの間にかいろいろなモノに興味が向いていた‥‥というところでしょうか。だって世の中にはいろんなモノがありますよね。それらを自分なりの視点で捕らえ直してみたとき、「あっ、こんな使い方もあるんじゃないの?」と思えるものが結構ある。そう考えたらいろんなアイデアが出てきて気付くと作ってた。まあ、多くの仲間たちに囲まれ、刺激しあえたせいもあるかもしれないですね。 |
BS | 確かに、身の周りにあるものを眺めてみたとき、私たちはモノに囲まれて生きているワケですから、何でも自分なりにカタチにしたり、新しい使い方を提案したり、そんな発想を持っていたら楽しいですよね。 それでは、長岡さんのアイデアの原点はどこから来ているのですか?具体的に今まで作られた作品をもとにお聞かせ下さい。 |
BN | 空間を間仕切るドアに収納の役割を持たせてみたら面白いなって、ドアドロアーを作りました。これは、ドアを薄い収納と考え、内部にモノをしまうことができるようにしたドアです。しかもドアをアクリルなどの透明素材で作ることにより、自分の好きなモノを入れて、こちらとあちらの空間を間仕切ることができるようになっている。お気に入りの雑誌やカラフルな小物を入れてみたらその隙間から向こうの空間が見えたりする。楽しいですよ。 |
BS | それだけではただの透明な扉。使う人が内部に好きなモノを入れることによって初めて空間が仕切られるというわけですね。なるほど。 |
BN | [Dice Chair]というイスがあります。このイスはさいころを転がすと様々な目が出るように、使う人が『転がす』というポジティブなアクションを起こすことで、モノとの『かかわり方』がダイナミックに変わるイスです。テーブルを兼ねたイス、チョコッと腰掛けるイスというように、座り方を使う人にゆだねるコミュニケーションツールとなるインテリアです。 |
BS | ♪何が出るかな?ってイスを転がして。何だかワクワクしてきますね。こうして長岡さんの作品を見せていただくと、カタチを見ただけでは一見何に使ったらいいか分からないようなモノがありますけど、そこがむしろ面白いですね。使う人が自分のライフスタイルに合わせてその商品をカスタマイズする喜びが与えられているところにアイデアのツボがあるような気がしますがいかがでしょうか? |
BN | 私にとってアイデアとは、当たり前と思っているモノの視点を変えてみることにより、人とモノとの間に新しいコミュニケーションのカタチが生まれてくるのでは?という発想から導き出されてきます。私がモノの規模、分野の枠などに捕われることなくボーダーレスに活動している理由はそこにあります。それこそ私たちの生活のレベルから地球規模へのレベルにまで視野を広げて、人とモノとの新しいコミュニケーションのカタチを、デザインする事を通して提案していきたいですね。 |
アイデアで捨てられたモノに命を吹き込む
BN | 私の手掛けたプロジェクトに『廃材小銭変換計画』というものがありますが、このプロジェクトはイベント施工時に出た廃材にちょっとだけ手を加えて、100円均一で販売した試みです。世の中のモノの流れではゴミ捨て場に行くしかないような言わば"使用済み商品"に光を当てて、いい所を残しつつ新たな機能、デザインを与えて生き返らせたものです。カード立てや歯ブラシスタンドなど、けっこう売れてしまったのですから、廃材が社会的な「商品」として生まれ変わったといえるのではないでしょうか。このように、モノの見方を変えるという発想は意外な所から社会のあり方を見直すことに通じるのではないかと私は考えています。 |
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BS | 社会的に価値を失ったとされるモノを、全く違う観点から蘇らせる発想はまさにブルースタジオのリノベーションの考えと同じですね!長岡さんはここ事務所兼サロンである [ kiss cafe ] や住宅のリノベーションもされていますが、そうした空間のリノベーションに関しても同じように取り組まれているのですか? |
BN | 空間のリノベーションの場合もやはり今まで紹介してきた商品、プロジェクトと同じで、空間がもつ隠れた魅力、可能性を視点を変える事によって発見し、構築し直していくという事を考えます。 |
BS | 視点を変えアイデアを注ぎ込めばこの世に存在するものは全て価値を持つ可能性を秘めている。‥‥"愛は地球を救う"ならぬ"アイデアは地球を救う"といったところでしょうか。 今回は貴重なお話を聞かせていただきましてありがとうございました。これからもアイデアや楽しさのあふれる空間を楽しみにしています。 |
2002年8月9日 吉祥寺kiss cafeにて
インタビュアー:増田徹也(blue studio)
長岡 勉
Nagaoka Ben
長岡 勉
Nagaoka Ben /建築家、デザイナー
建築設計をはじめインテリア、家具、プロダクトなどのデザインを手掛ける。
2000年に越野和香とデザインユニット [ POINT ] を結成。
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