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INTERVIEW No.11


「プリミティブな視点」

野老 朝雄 / Asao Tokolo

今回は建築、デザイン、美術等ジャンルを問わず幅広い領域で活動を続けている野老 朝雄さんにスポットを当て、「アイデアの素」についてお話を伺いたいと思います。

ブルースタジオ(以下BS) 野老朝雄(以下AT)

BS はじめに、トコロ氏の現在の主な活動内容をお聞かせ下さい。
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黄金率を使用した組み立て式20面体シェルタ-と
そのハンガ-DDDによるインスタレイション
AT 今はゲ-ム、玩具や柄などをつくっています。また、何人かの仲間でDDDという活動を行っていて服やテントなどを作ったりしています。
BS 特に「模様」の制作に没頭しているそうですが、「模様」のどんな所に興味を持たれたのですか?
AT グラフィックの作業として以前よりロゴ/マ-ク等の制作を行ってきていたのですが模様の持つ奥深さにもはまりきっています。自分でつくり始め、改めて日本古来の紋と紋様の文化に敬意を持ちました。トコロ柄のプロジェクトはGARAMONS(柄/紋/図)という名前がついています。
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近年発表予定のボ-ドゲ-ム
BS トコロ氏のアイデアのヒントはどういった所から生まれてくるのですか?
AT そういえば改めて考えたことはありませんでした。 恐らく、とても日常的な事なのだと思います。非常に沢山の事から影響を受けているのでしょう。突然雷にうたれるとか、そういった事はないです。つくっている最中に次を考えているのかもしれません。
BS 頭を柔軟にするために特に心掛けている事はありますか?
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トコロ柄がデジタルプリントされたオ-ガンジー
AT 自分の頭が柔軟かどうかはよく解りませんが、なすがままに脳みそを泳がせています。話がよく脱線する傾向をよく反省していたのですが脱線や集中力の欠如といった自分の駄目な部分も無理矢理に愛でるようになりました。たまにプラスに転じるようです。
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光を覗く光学玩具
BS 作品を拝見すると、○や□といった基本の「形」を操作して生まれた作品が多いように思えますが、これは意識されているのですか?
AT はい。とても。模様の制作においては極力単純に考えようとしています。コンパスと三角定規を使用して何が出来るか、を常に考えています。 コンピュ-タ-は使用しているのですがエフェクトなどは殆どつかいません。というより使えないんです。自分が納得出来、責任のとれる図をつくろうと考えると非常に狭い範囲での作業になります。ただ、その中にも新しい価値を生む可能性があると思います。
BS 自分の作ったものが100年後も人に影響を与えられる。そんな作品を残せたら素敵とおっしゃっていましたよね。
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覗いた内部
AT 100年後というのは単に例えなのですが、100年前に存在し得て、100年後にも生まれ得る価値がつくれたら良いですよね。短期間で消費され、忘れられるものよりいいなという単純な思いからそのように考えます。つくったモノや考えは わが子のようにかわいいので単にコドモの長寿を願う親馬鹿なのかもしれません。要するに、お爺さんの古時計ってすごくいいなと思うのです。それがまた動き、愛されていればなおさらです。
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zuccaによるVOLKSWAGEN
New BeetleのBUG-galaの制作
乗用車の柄/インテリア担当
BS 今後はどういったスタンスで活動していきたいとお考えですか?
AT 常々、周囲のコンディションをもってどうすれば最大の効果を得られるかを考えています。例えば手元にドリルがありその作業環境がある時は穴を穿つ(うがつ)事だけで何ができるかを考えました。その結果、出来た物がピ-スコ-プという万華鏡のような玩具のシリ-ズです。
BS (実際に作品に触れて)子供の頃に受けた純粋な感動受けました。
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絵画と家具の間の人間の為の台座
AT 今は紙とペンとマックがあるので模様をつくっています。どうしたら長く生きるモノをつくれるか、という事は今は明解にはいえません。ただ、しつこく つくり続けていければと思っています。
BS 今回アトリエで様々な作品を見せて頂きましたが、トコロ氏の作品自体アイデアのヒント発見道具の様に思いました。
AT なるほど。今つくっているモノは次に来るものの準備だと思っています。 過点というと良くない印象があるかもしれませんがそうではありません。
BS その道具一つ一つは完成された物ではなくて、組み合わせる事によってまた別な物をつくり、発見して。その繰り返しで作品が進化し続けているという感じですね。
AT DDDというモノをつくるグル-プをやっているのですがDevelopping Devices Devisers開発途上の装置をつくる人々という意味です。前向きな意味で常に途上でありたいと思うのです。
BS 今後の作品も楽しみにしています。本日は遅くまで有り難うございました。

2002年11月13日 野老氏アトリエにて
インタビュアー:増田直美(blue studio)

野老 朝雄

Asao Tokolo

野老 朝雄/Asao Tokolo
東京造形大学、AA Scoolにて建築を学ぶ。
建築/デザイン/美術 等の領域で活動。
所属:イエロウスタジオ/(株)野老設計事務所/DDD/東京コンピュ-タ-専門学校非常勤講師





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