blue studioトップページ > Magazine > INTERVIEW > No.15 <「ビジュアル不動産誌」のつくり方> 坂本二郎 / Jiro Sakamoto
INTERVIEW No.15
坂本二郎 / Jiro Sakamoto
書店には建築家やデザイナー、そして彼らが設計した住宅を紹介した雑誌であふれています。その影響もあり、かつてより建築家の存在が一般の人に身近になったともいわれます。そうした中では比較的新しい雑誌<LiVES>は、独自の視点による紙面構成が人気で、ブルースタジオのお客さんの中にもファンは多いようです。人気の秘訣などを編集長、坂本二郎氏に伺いました。
ブルースタジオ(以下BS) 坂本二郎(以下JS)
広告代理店自ら雑誌を出版!?
BS | すっかりおなじみになったLiVESですが、第一プログレスさんから発行・発売されていますね。広告代理店さんが雑誌を自ら出版するケースはそう多くはないように思いますが、この雑誌の生い立ちを教えていただけますか?。 |
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JS | 雑誌づくりは広告も含めた新しいマーケットを作ることだと考えているんです。当初は広告代理店としていろんな出版社に企画を持ち込んでいたんですが、以前立ち上げた田舎暮らしの雑誌では、媒体の影響で「田舎暮らし不動産」といったような新しいマーケットが育っていくのを経験しました。一方で、「洗練された都心居住」というスタイルもあるはずだという気もしていたので、「今度は都市型の新しい住宅誌をつくることで、新しいマーケットを育てよう」ということになり、<LiVES>を自社で出版したわけです。 |
BS | 2003年中を目標としていた隔月化を前倒しで達成されましたね。おめでとうございます。 |
JS | ありがとうございます。また、LiVESが誕生する間接的なきっかけになった「田舎暮らし」のテーマについても、<自休自足>という新しい媒体で再スタートしています。(http://www.yumeinaka.net/)
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BS | 「都心居住」のテーマを取り上げる他の雑誌もそのとき既にあったと思いますし、建築家のつくる家も専門誌があります。LiVESとしての特徴は? |
JS | 30代をメインターゲットの読者にしているので、広い土地に何不自由なくお金をつぎ込んで建てた「豪邸」のような家にはちょっとリアリティーがないなと感じていました。デザインはもちろん、都市が抱えている土地や制度の様々な制約や問題に対して、かけ離れたような物件が多いですし。 |
BS | 「都市が抱えている様々な制約」というお話がありましたが、掲載する物件をチョイスする時にこうした点をやはり意識されますか? |
JS | やはり、ほとんどの人が避けて通れない都市的な問題と葛藤しているような家にいちばん惹かれますね。但し、「狭小住宅」や「ローコスト住宅」といった言葉であらかじめカテゴライズすべきではないと考えています。それらは目的ではいはずですから。 |
BS | というと? |
JS | つまり、かっこいい部屋なんかをビジュアルで見せられてそれを手に入れたいと思ったとしますよね。すると都市の中のどこかの土地を買って、最後に家を手に入れるまでいろんなものと葛藤しなければならないわけです。そうした道筋のなかで土地の大きさや形、コストなんかの問題がその中で出てくるわけですよね。中にはコストを削りすぎて後悔する例もある。目線を変えて探せば広い土地が見つかるケースもある。これらは結果であって、目的ではありません。 |
「ブームはもう終わった。」
BS | そう、そこなんですけど。僕がLiVES見ていて思うのは、「流通に対して発言している雑誌だな」ということなんです。かっこいい家や、かっこいい部屋を載せているだけでなく、それを手に入れようとする段階で必要な情報がそこにあるというか。。。 |
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JS | 「ビジュアル不動産誌」って呼ばれてもいいって思っていますよ。だから、土地の情報も中古マンションの情報も掲載するようにしています。ローンの話なんかもあります。 |
BS | それから、面白いのはLiVESが共同でプロデュースするようなプロジェクトです。雑誌がきっかけとなって、住宅ができていくという状況が現実になっていますね。 |
JS | こういうものはどんどん増やしていきたいです。とにかく「デザイナーズ住宅」を形だけでくくりたくはないのです。打放しコンクリートとらせん階段で「はい!デザイナーズ」ということでは一過性のものに終わってしまいます。これを超えるには唯一無二の「そこにしかない」と言える付加価値をもったような物件が求められるんじゃないでしょうか?もしブルースタジオともうまくマッチするような案件があれば企画したいですね。 |
BS | こちらこそ、やってみたい。。。ところで、これはちょっと厳しい質問になるかもしれませんが、、、LiVESはじめ様々な雑誌の影響も手伝い、そして「カタログ建築家」という言葉が生まれ、善し悪しは別としてこれは「ブームなんだ」と言うことができると思います。ブームだとしたらいつか終わると言う危機感はありますか?これは自らへの自戒も含めでそう思うのですが。 |
JS | 現実はともかく、雑誌の上での「インテリアブーム」、「住まいに対するブーム」はもうピークを過ぎたかな?という認識を持っています。ブームや流行はボトムアップという点に寄与しますし、それなりの意義はありますが、LiVESではブームに埋もれない新しいものをこれからも常に探して提供していきたいですね。取材を重ねることで、今、ユーザーが求めているのはこんな住宅なんだ、ということを逆発信する雑誌でありたい。そうすることで、需要と供給のギャップが縮まっていけばいいかなと。だからこそ、そこに住む人のライフスタイルなどを通して、「なぜこんな住まいが必要とされているのか?」といった竣工写真だけでは分からない情報を載せていくことが大切なんだと思います。 |
BS | 紙面を読めば今お伺いした話はよく理解できます。lives in communityなどは僕も個人的に好きなコーナーです。 |
JS | とにかくこの業界だけではないと思いますけれど、メインストリームがなくなりニッチばかりになったのかもしれませんよ。大きいニッチや小さいニッチがあるような時代です。LiVESもそういう時代の中で特徴を出していきたいと考えています。 |
BS | 今日はありがとうございました。 |
JS | また物件で会いましょう。 |
2003年5月3日 LiVES編集室にて
インタビュアー:泥谷英明(blue studio)
坂本二郎
Jiro Sakamoto
LiVES編集長:坂本二郎
Jiro sakamoto /'94年より(株)第一プログレスにて広告制作に携わる。
'01年LiVES創刊と同時に編集長に就任。
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