blue studioトップページ > Magazine > INTERVIEW > No.19 <中古を『買って』から『つくる』という選択> 平野麻子さん / 戸山博さん / Asako HIRANO / Hiroshi TOYAMA
INTERVIEW No.19
平野麻子さん / 戸山博さん / Asako HIRANO / Hiroshi TOYAMA
平野麻子さん:都内某企業勤務。ブルースタジオと一緒に選んだ目黒区の中古マンションを今年3月に購入。リノベーション後、5月より居住中。
戸山博さん:某法律事務所勤務。ブルースタジオと一緒に選んだ新宿区の中古マンションを平野さんと同じく今年3月に購入。リノベーション後、5月より居住中。
ブルースタジオ(以下BS) 平野麻子(以下平野)戸山博(以下戸山)
平野 | わあ、スゴ~い。かっこい~い。・・・はじめまして。お邪魔します。 |
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BS | お邪魔します。 |
戸山 | どうぞ。どうぞ。はじめまして。 |
平野 | かっこいいし、ここは眺めがイイですね。大通り沿いなのに逆を向いているから音もなく静かだし。。。 |
戸山 | そうなんですよ。この景色で決めたんです。 |
平野 | ここの床もとっても気持ちいい。わたしの家の床は、、設計の打合せで(ブルースタジオの)石井さんが、「平野さんの家の床は新宿系イメージでいきま せんか。」なんて感じで、ある意味ノリで決めていったんですが、塗装がつるつるした仕上げでしょ。それはとっても気に入っているんですが、ここの床はまた 全然違いますね。 |
戸山 | 私も石井さんに設計を担当してもらいました。床は、サンプルつくっていただいて一緒に塗装の具合を決めさせてもらったし、特にお気に入りです。入居してしばらくは、一日30分くらいは撫でてましたよ(笑)。 |
平野 | でもわかる気がする!わたしもキッチンずーっと拭いてましたから(笑)。 |
BS | そんなに大切に使っていただいて、つくる側の甲斐がありますよ、本当に。平野さんの家と戸山さんの家ではまったく考え方が違うんですよ。平野さんの お宅では朝を気持ちよく過ごせるように、それからやっぱりキッチンとバスが主役になってるじゃないですか。一方、戸山さんのお宅では新宿の夜景も良く見え るし、「陽が落ちてからの時間を過ごすために設計した」と言い切っても良いくらいかもしれません。それから、キッチンとバスは究極にコンパクト仕様です。 |
「自分用に思いきってカスタマイズする」
BS | お二人はブルースタジオと一緒に物件を探して、ブルースタジオと一緒にリノベーション進めていったわけですけれど、終わって振り返った率直なご感想は? |
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平野 | 「同じ立場」というのは厳密には違うかもしれませんが、「これからこういうリノベーションをしていくんだ」という同じ目的があって、その目線で一緒 に物件を探してくれるのは、素人の私にはとっても心強かったですよ。普通の不動産屋さんじゃ言ってくれないようなアドバイスもいただきましたし。隠れて見えないような瑕疵、怪しい部分にも気付いてもらえるじゃないですか。。。私の部屋でも実際にありましたけど。。。 |
BS | そう。「雨漏かも知れない。でも表面を見ただけでは断定できない」ってところがあって、僕は平野さんに「この原因がはっきりするまで買っちゃいけま せんよ」ってアドバイスしたんです。売主の了解を書面でもらって、一部解体して調査しました。結局、雨漏じゃなく結露だということがはっきりしましたし、 工事で取替える予定の範囲に含まれていましたので、気持ちの良い売買が出来たんじゃないでしょうか。 |
戸山 | 中古物件は、新築物件よりも選択肢が広いというメリットがあると思いますよ。物件のエリアも建物そのものも。それから自分用に思いきってカスタマイズすることが出来るのは大切なポイントだと思います。型にはめられた新築に自分の生活をあわせるのではなく、何もないスケルトンの空間から自分の生活を創造していくことが出来るんですから。 > |
BS | 逆に、何か不便を感じたり、デメリットを感じたりする事はありませんでしたか? |
平野 | ど~んとお金がなくなったことかな~(笑)。でもどうせ使ってしまうお金だったから、デメリットじゃないか。。。 |
BS | リノベーションの工事代金は、原則的に融資を受けられないケースがほとんど(注)なのでどうしても現金(キャッシュ)が必要になってきます。このこ とはファイナンシングを検討していく上で一番のヤマ場で、優先的にキャッシュを充てていく部分とそうでない部分を見極めていかなくてはいけません。物件購 入代金と工事代金のコストバランス、これもまた大切な要素です。 |
戸山 | これは前提なんですが、中古マンションを買うところから始まる訳じゃないですか。僕は全然気にならなかったんですが、中古は新築に比べて耐久性が無 いとか、欠陥部分ありとかそういう懸念、概念をお持ちの方には無理なプランしょうね。 |
BS | 「中古ってホントのところ大丈夫なんですか?」これはお客さんから良く聞かれる質問なんですよ。今まで「古くなったら壊して新しく建てましょう」っ てやり方で成長してきた国ですから、「中古=弱い」って言う話になっちゃうんでしょうね。でもまた別のあるお客さんは「まだ完成していない新築マンション を買っても大丈夫でしょうか?」ってこぼされます。「大丈夫」の意味にもよると思いますが、「新しい/古い」でそれは決まらないと思います。本当に大切な ポイントは、「どう作ったか」「どう使っているか」です。 |
(注)リノベーション代金に関して融資可能なケースはありますが、条件が厳しくまた金利が高いことがほとんど。
「でも、何はともあれ、ファイナンシングは無理なく慎重に。」
BS | 戸山さんは「東西線沿線で」っていうのが条件でしたね。それは勤務地まで乗換無しで行けるという事だったと思いますが、本当に近い場所で探すとなれ ば、御茶ノ水や根津・千駄木なんかも考えられたんじゃないでしょうか? |
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戸山 | そうですね。確かに。でもそのエリアに行くと都心に出るまでが大変になってくるんじゃないでしょうか。西麻布からタクシーで帰ってくるとしてもここなら本当に直ぐですよ。 |
BS | |
山田 | それと「ベランダは要らない」。だって、ベランダって僕はほとんど出ないんですよ。 |
BS | 「南向きに広いベランダが欲しい」っていう方が一般的でしょうけど、戸山さんはそれが自分に取って本当に必要な条件じゃないって事をご自身で良く理 解されてましたよね。そういう自己理解というか、、、つまり自分にとって本当に必要な条件とそうでない条件を見極める作業は、購入条件を有利にしますね。 |
平野 | わたしの場合は、買い物が便利なところっていうのが条件でした。 |
BS | それとペット可。平野さんの場合は、いくつも物件を実際に見ながら条件を絞っていった感じでした。 |
平野 | はじめは「会社まで歩いていける」っていう条件で探していたんですよ。でも「会社の為の家選びじゃない」と気付いて自分が本当に住みたいエリアをイ メージしはじめたところから急に選択肢が広がりましたよね。結果的にはかなりの数を見ましたから、そのうちスケルトンの状態を透視できるようになるまでに なりました(笑)。 |
BS | そこに関しては、ある意味お客さんを教育しました。「透視するように!」って(笑)。・・・これから住宅をお買いになられようとしている後輩の方々にアドバイスを頂けますか? |
平野 | 賃貸の生活か、持ち家の生活かを金額だけでは判断できないと思いますが、できるだけ比較検討しましょう。私の場合は、月々の出費を考えると、賃貸では住めない環境で生活出来ていますから最高ですね。 |
戸山 | でも、何はともあれ、ファイナンシングは無理なく慎重に。不安なことはエキスパートの方々から「サルでもわかる」言葉で納得いくまで説明してもらいましょう。出来れば書面でもらうようにすればベスト! |
BS | ところで、戸山さんは海外生活が永いようですね。 |
戸山 | 16の時に、「お前なんか要らない。出ていけ。」と父親に言われまして(笑)、その後アメリカとヨーロッパを13、14年行ったり来たりしていろんな場所で生活して来ました。 |
BS | 日本、特に東京の生活空間は、それ以外の都市と比較して戸山さんにはどう映りますか。 |
戸山 | 東京に戻ってきていつも思うのは建築物が「ちゃっちく」見える。 |
BS | それは、スケルトンが「ちゃっちい」って意味ですか。 |
戸山 | そうそう。多分、国の政策なんかでメイドインジャパンが保護されてきた事もあったんだと思うんですよ。建築資材が高くついてきたんじゃないですか。 ほんとはもっと安くいいものが出来たとしても、戦後私たちが選んできたものにはあまり選択肢がなかったんですよ。木造と石造の違いもあるでしょうし地震の 問題もあるでしょうけれど、多分それ以前の問題。 |
平野 | それと天井が低いのはどうしてでしょうね。 |
戸山 | それはありますね。 |
BS | お二人は特に背が高いですからね。戸山さんのこの家は、スケルトンの状態で高さがあまり確保されていませんでしたから、戸山さんからの「床をできる だけ低く、天井をできるだけ高く」というリクエストは技術的にも厳しさが求められるもので、ブルースタジオでもシリアスに取り組みました。正直これはミリ 単位の話でした。 |
戸山 | ヨーロッパに住んでいた頃は天井裏でしたけれど、天井高はこの家の倍以上ありましたよ。 |
BS | 日本なら、もう一つフロアをつくってしまうかもしれませんね(笑)。 |
戸山 | あと、これは都市のレベルですが緑が少ない。それから、ひとりひとりのスペースが少ない。これは住宅でも、オフィスでも、街の中でも。。。とにか く、みんなパンパンですよ。日本のこの成熟した社会でいろんな商品で溢れているじゃないですか、そんな世の中で住宅や都市、不動産だけですよ。こんなにバリエーションがなくて窮屈な感じなのは。 |
平野 | 日本って、お城をつくった国で技術的にも素晴らしいんじゃないんですかね~。 |
「でも全部持っていかれて、逆にスッキリしたんですよ。正直。」
BS | ところで、この家にはパソコンがないんですよね。 |
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戸山 | 何もないですよ。電話も、ファックスも、電子レンジも。今までの僕の生活を振り返って、DVDと液晶モニターの2つがやってきた事はもうほとんどルネッサンス。革命に近い出来事なんですよ。 |
BS | シンプルライフ、つまり要らないものは持たない。戸山さんの生活はこの究極の姿かもしれませんけれど、、、 |
平野 | わたしは「貯蓄が特技」だって自分で言い切っちゃうくらいで、使う時はポーンと使う反面、普段はあまりお金をかけませんね。毎日お昼はお弁当だし。 これは習慣なんでわたしにとっては普通のことなんですよ。戸山さんはどういう場面でお金を使いますか? |
戸山 | ・・・(しばらく考えて)・・・思い出。 |
一同 | 思い出? |
戸山 | つまりモノとして残らないもの、旅行とか、コンサートとか、、、ひととの出合いとか。過ごす時間とか。これはかなりえらそうなものの言い方かもしれませんが、四畳半の部屋にルイ・ウ゛ィトン置いても僕はそういうことに幸せを感じませんね。物質的なものにあまり幸せを感じません。でも物質的なものに幸せを感じたり、ルイ・ウ゛ィトンの開店に並んだ300人の方を批判するつもりはありません。逆にうらやましいと思う時もあります。 |
平野 | 以前の私は、まさにルイ・ウ゛ィトンを買い漁っていたんです。そのために貯蓄をして、100万や200万はスグにお洋服やバッグに注ぎ込んでいたん ですよ。それが、3年程前ドロボーに入られて、ブランドモノのバッグや指輪、時計までぜ~んぶひとつ残らず持っていかれました。 |
戸山 | それ、本当ですか? |
平野 | そう、本当。でも全部持っていかれて、逆にスッキリしたんですよ、正直。って言うのも、そういう風に全てモノに頼った生き方をしていくと、途中で止まることが出来ないんですよ。捨てられなくなって、自分がいつもモノと一緒にある状態。その延長線上で最後に買ったのはベンツですけど、それも人にあげてしまった(笑)。 |
一同 | マジで? |
平野 | マジです。わたし、物質的な面では欲しいものほとんど買ってしまったようなところあったし、仕事も任されるようになり、結婚もして、豪華な結婚式も やって、ベンツも買って、でも家だけはそのリストに入ってなかったんですよ。 |
BS | どうして? |
平野 | それは、元の夫が住むところを会社から与えられていたってこともあるし、転勤が多かったってこともありました。 |
戸山 | そこに現に住む所があるんだったら、わざわざローン組んで身を削ってまでも家をおうなんて思いませんよね。多分。 |
平野 | そうなんです。だから、家に関しては自分の欲望が満たされる事はないと思ってたんですよね。そんな時期にブルースタジオのHP見て、「あれ、私そんなに諦めなくてもいいんじゃないの?」って、それで走り出しちゃったんですよ。「家買うぞ~」って(笑)。 |
BS | はじめてブルースタジオのこと知ったのは、確か、、、 |
平野 | わたしは雑誌でまず読んでから、HP見たんですよ。 |
戸山 | わたしは、仕事で時間があまった時に「そろそろ引越すか~」って思いついた感じで、何となくネットサーフィンしていたんです。検索結果出してよ~く 見てたら、「ブルースタジオ」ってあって、、、「ん?なんだこれは?」って思いまして、それでHPみたらかっこいいんですよね。 |
平野 | ヒヂヤさんとブルースタジオとの出会いが私の人生を変えちゃったんです。 |
BS | え? |
戸山 | 私もそうですよ。単純に生活水準が上がっただけでなく、感謝してます。ブルースタジオさんとの出会いはとても意味がありました。間違いなくイベント・オブ・ジ・イヤーです。 |
BS | ドキッとしましたが、これ以上に嬉しい言葉はありませんね。本当にありがとうございます。 |
「友人も来るとみんな気に入ります。近い将来、ここを貸せるようになりたいですね。」と戸山さん。お二人とも今の家を「一生暮らす家」とはまったく捉えておらず、マイホームでありながら投資的な意味合いも強い選択。戸山邸、平野邸がそのうちHPで「FOR RENT」に掲載される日も近い?!
2003年9月15日 戸山邸にて
インタビュアー:泥谷英明(blue studio)
撮影:武井良介
平野麻子さん / 戸山博さん
Asako HIRANO / Hiroshi TOYAMA
平野麻子さん:都内某企業勤務。
ブルースタジオと一緒に選んだ目黒区の中古マンションを今年3月に購入。
リノベーション後、5月より居住中。
戸山博さん:某法律事務所勤務。
ブルースタジオと一緒に選んだ新宿区の中古マンションを平野さんと同じく今年3月に購入。
リノベーション後、5月より居住中。
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