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INTERVIEW No.26
入川秀人 / Hideto Irikawa
1999年の「Wired Cafe」をオープンして以来、カフェ・飲食業界でオンリーワンの位置を不動のものとしているのがコミュニティー・アンド・ストアーズ(C& S)。ブルースタジオプロデュースのコンバージョンプロジェクト「Lattice Aoyama」の顔となるのも彼らが運営する「CAFE246」である。会長の入川氏にお話しを伺う。
ブルースタジオ(以下BS) 入川秀人(以下HI)
独自のマーケティング哲学を開発
BS | ダイエーにおられた時は、どのようなお仕事をされていたんでしょうか? |
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HI | デベロッパー事業本部というところにいました。 |
BS | 出店計画ですか? |
HI | 出店と、、、それと業態やな。これは、いろいろあって、、、まずSM(スーパーマーケット)それからSSM(スーパースーパーマーケット)、GMS (ゼネラルマーチャンダイズストアー)、DS(ディスカウンター)、他にも幾つか業態があるけど、どう言う品揃えとボリュームで出店していくかを地域ごと にそれを決めていく・・・そういう仕事ですよ。 |
BS | どういうところを調べて、決めていくわけですか? |
HI | 例えば子供の顔見たら、家族の生活、家の環境が分かるわ。。。最近の子供は鼻垂れてへんやろ・・・あれ、加工食品ばっかり食うてるからや。ほんまや で。青い野菜食うてたら鼻垂れてくんねん。あと、人間はマンションで生活してたらほっぺたは赤くならへんとかな、、、 |
BS | 自然な環境にいるかそうでないか、それは自ずと表に出るって事ですね。 |
HI | そう。それからブランドでがっちり固めてる人が多かったら、「コンサバなマーケット」やという判断になるし、これは昔の話やけど、、、例えばギャルソンの服に自分らしい鞄あわせて持っているとか、プラダの服とユニクロのシャツが一緒に着れるような人がいるとかしたら「なかなかアドバンスや」という風に考えるわけ。 |
BS | これは、一般的なマーケット分析の方法でしょうか? どうも、お話しを聞いていると、入川さん独自のやり方のような気がしますが、、、 |
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HI | ああ、これは独自と言うか、僕がずっとやって来たことですよ。分析には、定量分析と定性分析の2つがあるでしょ。定量分析では、人口動態とか、世代調査とか、、、○○総研とかがやっているヤツ。僕はそんなことはやりません。僕がずーっとやってきているのは、「スタイル分析」。これは定性分析なんや。どういう人が住んで、どういう服着て、どういう化粧して、どういう犬連れて、、、それをマス・マーケットの中で分析するわけ。 |
BS | 全国飛び回っていくわけですか??? |
HI | そう。先攻部隊。地域ごとに対して、どんな属性の人がいて、これからのどんな変化要因があるか、、、という「読む作業」。これを9年間やったわけ・・・ |
BS | 9年間も、全国を飛び廻ったってことですよね。 |
HI | 家のゴミ箱みて「箸」の数を数えたり、買い物袋はどこの店のものか、、、これを1週間定点観測する、、、 |
BS | 1週間!? |
HI | そう。出店する前、1ヶ月はその街に住み込むからな。 |
BS | 店を出すのに面白い街、面白くない街というのがあるんでしょうか?場合によっては、「出店をしない」っていう結論になるとか・・・ |
HI | そういうのとは違うわ。何をその街に出すか。その街で変化するだろう要因を見極めるのが仕事。「今これが足らない」「こう変化するだろう」「だからこう出そう!」これがオレのルーツやな。 |
BS | そのルーツはどう発展するのでしょうか。 |
Wired Cafeの誕生
HI | そのあと、パソナで新規事業開発をやりました。アメリカに飛んで、お好み焼き屋つくったり、レストラン、日本語学校、中古車のレストア会社、こういう新しい業態をどんどんつくった。 |
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BS | それぞれはまったくつながりのなさそうな仕事ですが、同じ人間がどうして出来るんでしょうか??? |
HI | それは出来るで。基本はコミュニティ-やから。こっちは中古車のコミュニティー。こっちは○○のコミュニティー、、、それぞれ、スタイルが違うだけやで。 |
BS | 99年、もはや伝説かも知れない「Wired Cafe」をつくられましたね。キャットストリートに。設計事務所のLDKもつくられました。これらはパラレルなことだったんですよね。 |
HI | パラレルというか一緒や、全部が。みんな、カフェと設計事務所と分けたがんねんけど、「なんでやねん」って思うわ。みんな、設計事務所は「こうある べき」みたいなもんを勝手に決め過ぎ。ホンマに。別に、設計事務所が飲食業やってもエエやろし、ゴミ拾いやってもエエやろし。 |
BS | じゃあ、設計事務所の存在価値と言うのはどのあたりにあるんでしょうか、 |
HI | それは社会基盤づくり。インフラづくりですね。だから、「Wired Cafe」の設計ではトイレがその中心に据えたわけ。あの道をよ~く観察したら、渋谷から表参道まであんだけ長い道でトイレが無かったでしょ・・・今でこ そコンビニでトイレ貸してくれるけど、当時はそんなことなかったやろ?それからピアスとタトゥーの定点観測したけど、あそこは凄かったよ。センター街の 20倍はおったな。 |
BS | そのマーケティングは、ダイエー時代にあみ出した手法ですね。 |
HI | そう。写真とって、ビデオ撮って、分析するんやな。同じタトゥーでも、SMスタイルから、カリフォルニアスタイルまでいろいろあるからな。その分析。大事なのは「何人おるか」やなくて、「どんな人がおるか」やから。 |
BS | 新しくできたこの店にもどんな人が来るか、楽しみですね。 |
HI | このスワンチェアに誰を案内するか、、、 これはとっても大事です。うちのスタッフは、この特別な椅子の意味をよく知ってるよ。店のスタイルを決めてしまう場所やから。毎年みんなでロスとかパリと か行って遊んだりするんやけど、そういうところでみんなに見せて教えてくる。テーブルにしても、椅子にしても、接客にしても「本物はこうやで」って。 |
「自分らしいスタイル」
BS | こ従業員の方はどんな方なんでしょうか。 |
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HI | 「フリーター」。我々は、仕事を一緒にするパートナーとして「フリーター」は魅力的な存在です。まず、志があってプライドが高い。それから能書きを 垂れる。そんで「オレは出来るんとちゃうか?」という大きな勘違いをしてる・・・つまりね、エエ大学出て「あんな会社には行きたくありません!」「あんな センス悪い先輩にはついていけません!」そういうやつが来る。それでこっちの返事は、、、「わかるよ。」「わかるけど、お前、なんか勝手にやった気になってないか?」大学の建築学科出て建築家の先生になったつもり、美術大学出てそれなりの作家になったつもり、写真学校出て写真家になったつもり、、、こういうヤツが多いな。 |
BS | フリーターって従業員としては扱いにくそうじゃないですか? |
HI | まず、彼らの鼻をへし折る! |
BS | え?鼻をへし折られるんですか? |
HI | そう、でも、これはこっち(自分たち)へのプレッシャーもあるんや。鼻をへし折るに足るだけ物事を知ってないとアカンし、経験してないとアカンし。 日頃からね。でも彼らは、鼻をへし折った瞬間に、どん底から這い上がってくるんよ。 |
BS | 人間って、人によって育った環境も違うじゃないですか・・・ |
HI | そうやけど、オレにいわせたら同じやな。特に日本人と・・・韓国人は。だって、考えてみて。み~んな、小学校6年間同じ教育受けて卒業するやろ。小 学校2年間しかいってないヤツ、ほとんどおらへんヤロ。世界中にはそんなんいくらでもおるからな。 |
BS | われてみれば、そうですね。 |
HI | 逆にキャリア志向の人間は結局銭でしょ。彼らにはスタイルがないから、スタイル身に付けるために雑誌読んで頑張って勉強したりしてるわけ。中身がないけど今の世の中は彼らが勝利しているというのが現実なのよ。でも、このまま放っといたら、日本全国中身のない国になってしまうよ。 |
BS | 何か打つ手はないんでしょうか。 |
HI | 皆に、「自分らしいスタイルのある」人たちに育ってほしいなあ。そう思います。「自分らしさ」というか。・・・次の日本には絶対必要だと思う。 |
BS | この店で、都内9店舗目じゃないですか。これからも増えていくと思うし、、、人もどんどん増えますよね。 |
HI | そう。「フリーターの塾」やらなあかんわ。「遊び、学び、仕事」このサーキュレーションやね、教えたいのは。 |
BS | 日本の教育に何か足りないということ? |
HI | いままで「一つのことを極める」ということをさせない教育だったわけで、「標準化人間」をつくり出すのには、非常によい教育だったということが言え ますよね。それから日本全体で大きくなっているときはそれでもよかったけど、シュリンクしたときに誰も先頭に立てへんから、総倒れになるんやな。こう (↓)落ちたときに、這い上がれるような人間でないとあかんでしょ。なりふり構わんと、志し高く、能書き垂らして、大きな勘違い。坂本竜馬や!時代をぶち 破るには、大きな勘違いしたらええねん。みんなと同じことやって「ええ子、ええ子」褒められて育つわな。そんで一流の大学出て、MBAとか取って、○○コ ンサルとか入ってええ給料もろてね。ちょっと余裕出てきたらサスペンダーとかして、ベンツ買うて「ベンツ大好きや」。死ぬときに「どんな人生やった?」っ て聞いたら「自分の人生は、他人の人生でした。」って言いよるわ。僕自身も聞かん坊やけど、聞かん坊の人間が「人に勝とう」と思ったら人に負けない技量を持たないとダメ。勝てないですよ。人前で大きなこと言うためには、「絶対お前らよりエエもんつくったる」っていう自信が必要でしょ。 |
[Lattice Aoyama]への参加と今後
BS | 今回、日本土地建物さんのコンバージョンプロジェクトにジョインされたわけですが、この建物を初めてご覧になった時、どんな印象でした? |
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HI | 素質を感じたね。この建物がはじめできたのは何年? |
BS | 1965年ですね。東京オリンピックが終わった直後で、経済成長をひた走ることになります。 |
HI | その頃の建築は、近代建築が発展し切らないままいきなりポストモダンになるそのちょうど狭間にあたるわけで、こういうのが良いわけよ。素質があるし、非常に価値があるよね。 |
BS | それで、出店を決めた? |
HI | それと青山一丁目という最高の場所なのに、いや最高の場所だからこそ、商売人の入れ替わりがないんやな。こういうの「善光寺商法」って言うんやけ ど。店開けといたら人が入ってくるようなところやから旧態依然の体質が残っていて、逆にチャンスがあるエリアとも言えるわけ。もう1つは、コンバージョン の魅力。この店でつくるのは、今あるものでもアカンし、これからつくるものでもアカンのよ。過去にあったものをつくって、それで新たな価値を創出する。コ レがコンバージョンだと僕は思っているわけ。大切なものは過去、いっぱいあったんですよ。でも、そういったものをたくさん捨ててきたでしょ。以前は、シェ ルチェアが喫茶店にあったでしょ。スワンチェアがホテルのロビーにあったでしょ。「懐かしいなあ」そう言ってもらえるわけ、55歳、60歳くらいの方に。 この床材「ジントギ」にしても、蓄熱するから夏冷たくて冬は暖かい。それから、張り替えないでも10年間十分使えるでしょ。これは、フローを考えるときは めちゃめちゃ有利やで。家具でも素材でも、いにしえのもので残っているものは本当によく計算されているよ。こういうものが価値があるし、こういうものを実体験せなアカンやろ。スタッフにもそういって聞かせてる。 |
BS | これから、カフェ・カンパニーの展開は? |
HI | コンセプトは「Style makes your Community」です。これからは、スーパーと一緒にやる。また、本屋さんと一緒にやる。コンビにと一緒にやる・・・こういう展開でいきます。コミュ ニティーを必要としている業態に対して、僕らは飲食という装置でもってコミュニティーをつくっていくわけです。コミュニティーにこそ安らぎがあるし、昔からあったのに忘れ去ってしまったようなそういう素晴らしいものを世にもう一度問うような、そういう会社にしたいです。 |
BS | ここの店にどんな人に来てほしいですか? |
HI | それは、オールレンジでいける。キャピキャピの若い子からおじいちゃんまで、全ての人に来てもらえる自信があるね。 |
BS | ことにかく、もうすぐ開店。おめでとうございます。 |
HI | ありがとう。また来てや~。 |
拝啓 入川会長。正直なところ、ものすごくテープ起こし難しかったです。いつもはテープ回転を速くするのに、今回は遅くしました。言葉のエネルギー、コミュニケーションのパワー、そうした目に見えないものを感じるのに十分なインタビューでした。
2004年5月29日 Lattice Aoyama 1F <CAFE 246>にて
インタビュアー:泥谷英明(blue studio)
撮影:武井良介
入川秀人
Hideto Irikawa
<入川秀人>
1957年 神戸生まれ
1980年 (株)ダイエー:デベロッパー事業本部に入社後、店舗開発/環境デザイン・設計などを手がける。
1998年にはLDK(有)代表取締役社長に就任し、事業開発から業態開発、都市開発まで幅広い分野にて活躍。六本木ヒルズのTSUTAYA TOKYO ROPPONGI(2003)の店舗プロデュースなどで高い評価を獲得する。現在、渋谷を中心とた9店舗の直営店を経営するコミュニティ・アンド・スト アーズ株式会社 代表取締役社長楠本修二郎と共に代表取締役会長を務める。
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