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INTERVIEW No.27


ラティスなスタイル

伊達恵子・金井大輔 / Keiko Date・Daisuke Kanai

「Lattice Aoyama」の入居が始まりました。今回は、入居者の方2組にお話を伺いましたので、インタビューを通してこの建物に特有の空気感を感じ取っていただけるのではないでしょうか。

ブルースタジオ(以下BS) 伊達恵子(以下KD)

たくさんの出会いと一枚の絵

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BS 伊達さん、Latticeにご入居が決まった時「青山にお帰り!」って言われたとのことでしたが、どういうことだったんでしょうか?
KD はじめに独立したのが青山でして、永くこの街でやらせていただいてきました。8年前に銀座にもギャラリーを出しましたが、、、去年入院 したこともありまして西麻布の事務所だけにして、「しばらくは自分の時間を大切にしよう」という風に考えておりました。ところが半年もしないうちに「すご くいいスペースができるらしいよ」と教えていただきまして。。。それでLattice青山を知って、見学をして申し込み、今日に至っております。
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BS その時、どなたにご紹介いただいたんですか?・・・お礼言わないと・・・
KD 息子ですよ。・・・こちらに出会ったのも縁ですよね。
BS こ息子さんだったんですか。ありがとうございます。とても嬉しいです。
KD ここのスペースを拝見したとき、とても透明感のある感覚で、程よい緊張感をもって凛とした気持ちになれるようにと思いました。またそうした空間をいろんな方々と分かち合いたいとも思いましたのでこちらに引っ越して来たんですよ。・・・展示の場にもしたいと思っております。
BS 素晴らしいコンセプトですね。ところで、伊達さんがギャラリーはじめられて何年経つのですか?
KD そうですね、この仕事するようになってちょうど25年経ちます。いろんな方との出合いがございまして、私だけの力ではありません。ここまでやって来れたのは。
BS 応援して下さる方との出合いということですね。
KD それと作品や作家との出会いです。独立後夢中にやってきた10年ほどの間で、偶然な出合いが多かったように思いますが、今振り返りますと、全て出会 うべくして出会ったように思えてなりません。点だった出会いのひとつひとつが一本の線となって繋がっていて、既に出来ていた道によって、私はただ導かれて きた気がします。・・・そう思ったら恐くなくなりまして、「これから先どこに行ったらいいかわからなくても、見えない道が用意されてるはず」という風に考 えられるようになりました。
BS 出会いによってたくましくなったということですね(笑)。それは、伊達さんのお人柄に惹かれてみんな集まって来るんですよ。きっと。
KD ありがとうございます(笑)。・・・それから、絵とのショッキングな出合いがあります。フェルメール「青いターバンの少女」。こ の小さな絵とは別の場所で2回出会ったんですが、2回とも涙がひたすら溢れてきて、止まらなかったんです。1回目は、私の周りにもいろいろな出来事が起 こった頃で、不安やいろんな思いがクロスオーバーしていたという事もあったと思いますけれど、2回目もすごく涙がでてきたの、、、そのころは全然引きずっ てなかったのに、、、「なぜ、涙が溢れて止まらないのかな」って不思議になって、それで作家のことや絵のことをいろいろ調べているうちに、「余命いくばく もない自分の娘を描いた」のかもしれないということを知りまして、とてもショックだったんです。
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フェルメール「青いターバンの少女」
BS 1枚の古い小さな絵からの大きなショック。
KD そうです。何世紀経ってもこの小さな絵は何かとても大きな力を持っているんです。こういう力をなんて呼ぶのか、、、「魂」という言葉かも知れません が、、、こういうものは、作家の肉体がなくなった後も脈々と残ります。この絵は私がこの仕事を続けられる原動力になっているんです。

ドキドキ感!

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取材時に開催中の展覧会「大村俊二個展」より

BS ところで、伊達さんが、いま注目してらっしゃるジャンルなどありますか。
KD 「クラフト」から脱却しようとしていると言う意味で「ガラス」は面白いので注目しています。今、祐天寺のギャラリーでやっております個展も、その次 に新潟で開催します展覧会も両方、、、たまたまかもしれませんが、ガラスですね。ただ、基本的に私は素材にこだわってません。
BS ・・・とおっしゃいますと?
KD ガラス、陶器、墨、オイル、、、作品の素材は、作家の表現の手段でしかないと思っています。重要なのは作家が自分の相性に合った表現方法を見つけたかどうかではないでしょうか。
BS なるほど。
KD 作家にも、無理してやってほしくないですし。
BS これからのお仕事の展開は?
KD 今後取り組みたいのは、イタリアの彫刻家ペリクレ・ファッツィーニです。本を出版したいとも思っています・・・もともと、私はイタリアの彫刻が専門でもありますので。
BS そうだったんですか、、、
KD それから、、、国内の若い作家です。ドキドキ感を分かち合いたじゃありませんか。展示の準備の時に作品に掛けられたベールを取る時はとてもドキドキするんですよ。「こんどはどんな作品をつくったのかな?」とか、作品の設置がうまくいくと「あ、作品が喜んでる!」とかそういう風に感じます。
BS この場所は、リアルタイムでドキドキを楽しむようなそういう空間になっていくわけですね。
KD そう!いい作品と出会ったり、アーティストと話していると、自分の垢が流れていくのが分かります。私たちは毎日多くのことを考えますので精神的にも 揺らぎますし、朝と夜とでは精神状態が微妙に変わるものだと思います。でも、素晴らしい作品に出会ったときや純粋につくるのが大好きな作家と話しをしていると、自分のコア/核・・・ あるべき姿と言いますか・・・そこに戻れるように感じるんです。それがアートの一番大事な部分なんじゃないでしょうか。作家や作品には本当に助けられて来ましたし、私はそういう経験をさせていただいてきましたから、是非皆さんにもそう感じて欲しいと思って、この仕事をしているんです。
BS 本当に素敵なお仕事ですね!!!いいお話をありがとうございます。



ブルースタジオ(以下BS) 金井大輔(以下DK)

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金井流起業

BS 自由が丘から移ってこられた訳ですが、どのように物件をお探しだったんですか?
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ラヴヴァイト社ディレクションのサイト
DK 普通のオフィスビルには入りたくなかったんですよ。だからといって、マンションも違うし・・・と考えていて、ブルースタジオさんのHPはかなり以前 から見ていましたね。新しい/古いというこだわりはそんなになかったので、古い物件でで自分達でインテリアをつくっていくこともアリだったのかもしれませ んが、あらかじめある程度までつくり込んでもらっていたのでここは入りやすかったですね。あとはもちろん立地も抜群です。
BS ここに質問がはいります。青山を狙っていた?>
DK 決してそうではありませんでした。「できれば青山に行きたい」というのはありましたが、限定というわけではなかったです。でもたまたまというか、嬉しいですね。
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BS ・・・ところで金井社長。いいカラダしてますよね。何か鍛えてますか?
DK 水泳をしています。
BS こどおりで!
DK 会社は11:00始業としているので、その前にすぐ近くのプールに泳ぎに行きます。
BS 仕事とプライベートははっきり分けられる方ですか?
DK そうですね、分けたい方ですね。 携帯への転送メールもあまり見ないようにしているかもしれませんが(笑)。ただどうしても夜は遅くなってしまいがちですので、朝の始業時間をゆとりをもっ て設定しています。毎日5時に仕事が終わる人と違って自分の時間を夜に持つのは難しいので、そういう有意義な時間を午前中に持てるようにという考え方で す。
BS 独立される前は、お勤めだったわけですよね。
DK そうですね。20歳で上京、制作会社にweb担当で入社して、2年間やりました。私と、1月後に入社した品川とほぼ2人でweb関連の仕事を回して いて、その頃クライアントさんのおかげでだいぶ叩き込まれたのでスピードには他に負けない自身がありました。デザインは私、システムは品川、という具合に 2人の得意分野もうまく組合せることが出来ましたので、独立したわけです。当時22歳でしたので、万一失敗してもやりなおせるという考えも、正直なところ ありましたし・・・
BS クライアントさん持って出て、、、
DK いや、持って出ませんでした。それだけはしないと決めていたので。
BS 鏡ですね。素晴らしいです。
DK 起業をするより以前に、1人のフリーデザイナーとしていろんな会社にエントリーしていたんですよ、実は。そこで、若い社長さんと多く出会い、感化さ れたということもあるんでしょうね、会社を興してから、その頃出会ったベンチャーの社長さんなどからまずお声をかけていただいたんです。その頃から今まで ほとんど口コミでお仕事いただいており、ほとんど営業に出るということがありません。

豊かな環境を求めて・・・

BS 「web creators」という雑誌で、お名前を拝見したことがありました。
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DK そうでしたか。。。
BS 沢山の会社が出ていましたが、その中でも御社は実に特徴が出てました。さりげなくアピールが上手で、絶対これ金井社長がつくってるなって思いました ね。金井さんはすごくそういうイメージコントロールがお上手だと感じています。
DK ありがとうございます。これくらいの規模の制作会社って、星の数程あると思うのでやるからには目立って面白いことをやって行きたいんですよ。
BS なるほど。もう1つ、金井社長に対する僕の分析は、「起業家にしてはガツガツしていなくてナチュラル」ということなんですね。良い意味で「肩の力が抜けてる起業家」と言った言い方が良いかもしれない、、、
DK ・・・そうですね。目標はもちろん必要ですが、やっぱり「モノづくり」の人間なので、環境がよくないといい仕事が出来ないと思うんですよね。刺激が あってこそモノが作れると思っているので、午前中に時間をとっているのもそういう訳ですし、「缶詰めでモノをつくれ」っていうことなら自分が会社やってい る意味がないと思っていますから。
BS 今後、会社をどのようにしていきたいとお考えでしょうか?
DK 具体的な話で言いますとwebの制作は変わりなく、一方でもっと幅広い方々と出会って創作の場をWeb以外のデザインワークにも広げていきたいです ね。Webの制作をさせていただく中でいろんな事業、業態の立ち上げに関わることも多いですが、化粧品のサイトをつくったりすれば、自分でもその仕事をや りたくなりますしね、、、それから、もう少し大きな流れで言うと、不必要に大きい会社にはしたくないと考えています。もちろん利益が出ることが必要です が、自分自身にとっても、みんなにとっても居やすい環境をつくることがとても大切ですね。多分、自分の一生をの中で会社にいる時間が一番長いんじゃないかという考え方でいますので、この場所を充実させていくというのが課題です。
BS とってもよく分かりました。非常に合理的な考えですよね。
DK 「何年後に上場だ」というよりももっと人間的な意味で豊になれる環境を求めています。
BS なるほど。さらなるご活躍を期待しています!

「他の入居者の方々がどんな方で、どんなふうに部屋を使っているかとっても興味あるんですよね。見学会でもやりませんか?」と金井社長の言葉。入居者相互のコミュニケーションも少しずつ始まっている様です。

2004年5月26日 Lattice Aoyama にて
インタビュアー:泥谷英明(blue studio)
撮影:武井良介

伊達恵子・金井大輔

Keiko Date・Daisuke Kanai

伊達恵子/Keiko Date
株式会社光凛プレンヌ・ビュ代表取締役


金井大輔/Daisuke Kanai
株式会社ラヴヴァイト・ジャパン・エルティーティー代表取締役

1979年・大阪出身、現在25歳。
大阪でグラフィックデザインを学んだ後、
20歳の時上京し新卒で入社した広告制作会社を経て、
22歳で独立、翌年法人化。
デザインのクオリティとコストパフォーマンス面が定評で、
口コミだけで新規直取引クライアントを多数獲得し、
現在は、大手ISPを含む一部上場企業の サイト・ディレクションから、
事業企画面から大きく携わっている急成長中ベンチャー、
若手起業家の方から多くの信頼を得て、活動中。
主に、アートディレク ションを兼ねた、デザインと事業プランナーとして日々、最先端のウェブ業界で活躍中。





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