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INSIDE Vol.31


アートウォールに込めた これからのライフスタイル

Vol.31

東京都世田谷区『BUFF』 木造賃貸
専有面積: 43.08㎡
職種: アイドル衣装デザイナー
趣味: アイドルのライブ鑑賞

仕事の転機、BUFFとの出会い

 新たに住居を探すとき、何を決め手にするだろう?
会社からの距離は?家賃の目安は?コンビニやスーパー、子どもがいるなら学校だって近所に欲しい。賃貸住宅を探すこと、それは「今」のライフスタイルに合った住居探しであることが多いだろう。しかし、BUFFに暮らす政金さんは違った。「これから」のライフスタイルの理想を、住居に込めたのだ。

 政金さんの職業はデザイナー。以前は湘南エリアに住み、バイクでデザイン事務所に通っていた。パチンコ関連のデザインを手がけていたが、だんだんと仕事に行き詰まりを感じるようになったという。仕事への熱意が失われていくのと反対に、もともとファンだった「アイドル」への気持ちは高まっていった。

「普段は優柔不断なんですけど、好きなもんに限っては、もう決めたらバンッという感じで」と政金さん。

 ついには仕事を辞めて、アイドルに関連したデザイナーになることを決断。紆余曲折あってデザイン事務所には属したまま、個人的な仕事場を借りることになった。「住居兼、仕事場」という新生活のスタートライン、それがBUFFだった。

上:物件名のロゴが描かれた外観
中:1階の土間空間。左手は無骨なキッチン
下:上階はフローリング空間。階段の上で靴を脱ぐ。

木造のメゾネット式空間を自分らしく使いこなす

 世田谷区上北沢は、ゆったりと穏やかな空気が流れる住宅街。徒歩7分ほどの駅までの道には、肋骨通りと呼ばれるまっすぐにのびた桜並木が美しい。そんな閑静な街にたたずむのが、築40年の木造戸建が生まれ変わった賃貸住宅『BUFF』である。もとは一階をオーナー住居、二階の4部屋を下宿としていた建物は、改修されメゾネットタイプの2戸建てになった。外壁のグラフィックペイントは主張しすぎないポップさで、上北沢の街になじみつつそこでの暮らしに個性を感じさせる。

 「バイクを置けて、ちょっと変わってるとこで、事務所兼で使えそうなセパレートっぽい感じのとこを探してたんです。変わってるのが一番の決め手ですね。」(政金さん)と、「これから」の家を選んだ条件を語ってくれた。初めて見た印象から、絶対住みたい!と即決したという。選んだ条件でもある、生活と仕事を兼ね備えた住宅にはどのようなライフスタイルがあるのだろうか?

 『BUFF』のいちばんの特徴は、メゾネット式でメリハリのあるふたつの空間だ。一階部分は土間床で、キッチンの前にデスクを置いた作業スペースとなっている。土足のままのアクティブな空間には、デザイン作業を手助けするパソコンやコピー機が並んでいた。二階は木造ならではの、ぬくもりの空間。天井は小屋組みがむき出しになっており、とっても開放的。さらけ出された柱や梁からは、木という素材の温かみがダイレクトに受け取れる。三方向の窓からは光が注ぎ、くつろぎの生活スペースが広がっていた。

 仕事は長い期間をかけてデザインを練ってから、集中的に作業をすることが多いという政金さん。時期によっては昼夜関係なく、一階の作業スペースで長時間過ごすこともあるという。座りっぱなしの作業のため、二階では横になってリラックスして過ごすことが多いのだとか。

 部屋のあちこちには政金さんのセンスが光る、魅せる収納が目を引いた。階段に沿って掛けられたハットやメガネ、二階に上がってすぐにあるシューズラック。メゾネットタイプの住宅を生かして、ファッションアイテムもインテリアの一部にしてしまう工夫があった。

上:インパクトのある額縁の収納棚にはDVD類が並ぶ。
中:独特のセンスで選ばれた家具や小物。
下:階段にも絵や小物を飾って見せる収納に。

『ART WALL』が支えた、仕事への決意

 現在、政金さんはアイドルの衣装デザイナーとして働いている。もともとなんのツテもなく飛び込んだ世界。服飾系の大学で学んだ経験から、やがて衣装制作を請け負うようになった。現在は一ヶ月ほどのスパンで依頼を受けて、いくつかのアイドルグループを担当しているという。好きなことを仕事にと決意し入居したBUFFで、アイドル関連のデザインだけを手がけるようになったのだ。

 「これを描いてくれたおかげで仕事やってんだろうなぁ」
そう呟く政金さんの視線の先には、あるグラフィックペイントがあった。「IDOL」と描かれたそれは、ちょっと変わったBUFFの入居者特典。部屋の一角に、入居者が希望するグラフィックペイントを施す『ART WALL』サービスだ。外壁のペイントも担当したアーティスト「holiday」によるペイントは、部屋に少しのアクセントを与える。入居者が替わるごとにペイントは追加・更新されていく。それは「BUFF=磨く」という名前の通り、自身の暮らしにこだわりや愛着を持つこと、ライフスタイルを磨いていくことを支えるものになる。

 政金さんの部屋のペイントは「IDOL」の文字のまわりに、いくつかの三角形が描かれており、まるでスポットライトで照らされているように見える。その光源の先に時計を飾るところにもインテリアへの遊び心が見えた。

 なぜ「IDOL」にしたのかという問いに「単純に、好きだから」と答える政金さん。このペイントは、政金さんの「好き」の気持ちをかたちにしたものだ。目に見えるように残ることで、「これから」のライフスタイルへの決意は支えられてきたのかもしれない。この先も『ART WALL』は、BUFFに住む人たちの「これから」に、ささやかなきっかけや暮らしの支えをつくっていくだろう。

上:IDOLのウォールアートと時計。
中:小物が並ぶ1階キッチンの棚。壁にはアイドルのポスターも。
下:使い込まれた仕事用の机。

2017/8/22 BUFFにて
TEXT: 東村ほのか、PHOTO:近藤みどり

今回の入居物件のご紹介

東京都世田谷区『BUFF』
構造・規模:木造2階建
専有面積:43.08
リノベーション竣工年:2014年





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