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INSIDE Vol.27


古き良き昭和を伝える
築85年の平屋

Vol.27

東京中野区『わの家 千峰』 リノベーション シェアハウス シングル
専有面積: 9.47㎡〜11.59㎡
職種: ***
趣味: ***

母の思い出をシェアハウスの個性に

西武新宿線「野方」駅から歩くこと3分。昭和の面影を感じさせる商店街を通り抜けると静かな住宅街に出る。そこに佇むのが、築85年の木造平屋建「わの家 千峰」だ。

この家は大家である石川さん自身が生まれ育ち、家族とともに暮らしてきた思い出の家。その大切な家を残したいという想いから、住人6人のシェアハウスへと生まれ変わった。

今は亡き石川さんのお母様は、「千峰」という雅号をもつ芸事に秀でた方で、四季の移り変わりを大切にし、家族やまち、人々との関わりを大切にしていた人。千峰さんが長年にわたり心豊かな暮らしを築いていたこの家に、どのような入居者が集まったのだろうか。

今回は、個性豊かな5人の入居者と石川さんの話を対話形式でご紹介する。

丁寧に暮らす豊かさ

ブルースタジオ:
入居のきっかけを教えてください。

ちひろさん:
私はオープンルームがきっかけでしたが、この古い家に住めるチャンスって今しかないなと思いました。新築はこれからいくらでも住む機会があるけど、今を逃したら自分でこういう家を作るのは無理だと思ったのでこのタイミングで、と思いました。

ひでみさん:
こういう家って残すの大変じゃないですか。

えりさん:
大変です、大変でした(笑)

ひでみさん:
残すのが大変なのに残そうという、そういう人たちの心意気に乗っかりたい、残していきたいし、残るべきだと思ったんですよね。こういう家って探してもまずないですもんね。

センさん:
わたしは初め、シェアハウスに住むつもりはなかったけど、昔の日本の部屋がどうなっているか好奇心で見にいきました。日本にも、まだこんな家が残ってるんだ!と感心しました。

ブルースタジオ:
大家さんのお母様、千峰さんについてはどうですか?

ひでみさん:
生活にとけ込んでますよね。

しんじさん:
すごくハイセンスな方だったんだな〜って思いますね。

ひでみさん:
この襖もそうですよね。全部が空気を作ってて、それが作品として作っているというよりは、生活をつくっているというか……。一軒が千峰さんの雰囲気に包まれていて、それもすごい! それは多分、千峰さんが長年かけて作り上げてきた空気だと思うし、古い素敵な家と絡み合って、ここにしかない味があってすごい居心地がよくて、安心します。

センさん:
そうそう、落ちつくんです。
  
ひでみさん:
僕、一番最初に入居したんですけど、そのときから和んだ空気が感じられました。

しんじさん:
人がいなくても確かに感じますよね。不思議と居心地がいいですね。

ひでみさん:
すごい昔から住んでいるような、すっと溶け込める空気があります。千峰さんの長年かけてつくってきた空気感に我々がしみ込んでいっている感じです。

ブルースタジオ:
普段の生活はどうですか?

 
ひでみさん:
キッチンがすごく良いですよ!

えりさん:
思い切って4畳半をつぶしたから、キッチンが広くなって立ち話も出来るようになってよかったです。

しんじさん:
いつも2〜3人で一緒に作ったりしてるよね。

ブルースタジオ:
以前の生活との変化はありましたか?

ひでみさん:
僕はがらっと変わりましたね。東京でも毎日忙しくてあまり家にいられないけど、家にいる時間がすごく有意義になりました。夜、縁側で涼んでるときとか、ものすごくいいんですよ!そういう瞬間、瞬間で生活のよさを味わうことができるようになりました。今までは、お茶を入れるにも飲めればいいや、って思っていたんです。新築アパートワンルームだと味気ない生活になってしまうけど、ここに住むとゆとりを作りたくなります。一つ一つの動作を美しくしたいと思えるような空間です。

しんじさん:
僕はたぶん料理とか掃除とか、普段1人で暮らすより気をつかうようになりました。さすがに、汚しっぱなしにしておけないっていうのももちろんあるんですけど。料理も前からやってはいたけど、ここの環境がいいっていうこともあって、もっと色々なものを試したくなる、っていうので、そこに楽しさもあるのでストレス解消になって・・というので結構毎日夜遅いんですけど、それが息抜きになってますね。
 
ちひろさん:
たしかに1人で暮らしてたら、夜10時過ぎに帰って来てご飯作ろうとはならない、コンビ二でいいやってなります。なんとなくここだと、そんなこったものは作れないけど、一品くらい作ろうか、という気になります。

住んだからこその発見

ブルースタジオ:
千峰の一押しポイントはなんですか?

(全員):
縁側ですかね〜

しんじさん:
縁側で何回も寝てます。

センさん:
はじっこのところでよく寝てるよね!
  
しんじさん:
リクライニングできる椅子をもってきて、本読んで、酒のみながらそのまま寝ちゃうから、誰かに発見される、みたいなことがよくあるんです。

ブルースタジオ:
他の皆さんはどうですか?

ひでみさん:
ここは昼間もいいけど、夜がとにかくいいんです! 千峰はお酒がとにかくおいしい! 庭で、たまに寝転がってシガーをすったりするとすごく気持ちいいんですよ! ゆらゆら煙がのぼっていって、月明かりで雲が流れていて、瓦屋根がせまってきていて……。住まなきゃわからない美しい瞬間がすごいたくさんあるんです。

しんじさん:
確かに、それを感じられるのは、夜の中庭ですよね〜。

ひでみさん:
そうですよね。あの異空間な感じいいですよね。

しんじさん:
これだけ空をゆっくり眺められるところなかなかないし、それが生活する場にあるっていうのはすごくいいですね。そのためだけに帰りたくなるというのはありますね。帰って酒のんでゆっくりすることで、1日をリセットできます。

しんじさん:
センさんはアイデア出るようになったんだよね?
  
センさん:
アイデア浮かぶようになりました、リラックスできる状態ができました。6畳ワンルームの生活は、日本では普通かもしれないけど、中国ではあまりないです。狭い部屋に帰ってきても壁とテレビがあるだけで、ただ帰って食べて寝るだけになってしまうけど、ここは1日の流れがあります。朝起きたら、歯磨きをして、朝ご飯作る間に洗濯したり……。あるべき生活のステップがきちんとできます。生活している〜と実感できます。洗濯も前は1週間に1回しかやらなかったけど、毎日やっていて楽しいです! 中国にいたときと近い感覚。毎日どこかで変化があって、新しいものを感じられます。

ブルースタジオ:
檜風呂には入ってみましたか?

しんじさん:
そもそも檜風呂がある物件がないですからね。お風呂のために帰っているといっても過言ではないかな。毎日のように使ってます。シャワーだとどうしても後回しになってしまいます。

ひでみさん:
この家ではじめて檜風呂というものに入りました。香りが違う! 浴槽に入らない場合でも、檜風呂に入ります。前は簡単に済ませてたけど、洗い場広いし、窓があるし、お風呂を沸かさなくても檜の香りがします。これも美しくしたい生活の動作の1つです。本質を捉えたものがあると、生活はそれについていくというか、それを体現してますよね。

ブルースタジオ:
石川さん(オーナー)からみて、入居者の皆さんはいかがですか?

石川さん:
最初にこの家にどういう入居者がいいかターゲットについて話したんですけど、だいたい当初の話と合っているんですよね。

しんじさん:
どういう人だったんですか?

石川さん:
普通の会社員ではなくて、高円寺あたりで飲むのがすきなような、なんとなく芸術家っぽい人。まさにみなさん、そういう人ですよね。

えりさん:
利便性を大事にしちゃうような人とかだと住めないと思います。

しんじさん:
色々な人に話すけど、ここは人を選ぶと思います。だけど、ここを選んだ人だから気が合うっていうのもあります。

ブルースタジオ:
入居者の皆さんで集まることはありますか?

ちひろさん:
みんな多忙で集まったことないんです。すれ違いの生活。でも夜帰ってくると、誰かしら居間にいるので、お話したり、テレビ見たりします。
  
えりさん:
今度バーベキューしましょう!

今回の入居物件のご紹介

東京都中野区『わの家 千峰』
専有面積:9.47〜11.59平米
竣工年:1929年
リノベーション完了:2014年3月





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