“共通言語”のあるシェアハウス
小劇場、古着屋、路上ミュージシャン。商業施設はチェーン店からお洒落なカフェ、渋い珈琲店まで。それらが2路線が交差する駅を中心にギュッと凝縮されている。東京都世田谷区「下北沢」はそんな街だ。
シェアハウス『pinos』は、駅周辺の賑やかな商店街を抜けた住宅街にある。細い路地の先に見えてくる真っ白な外壁。2階の玄関まで続くのはテラコッタの階段。入り口にはパエリア鍋の表札がぶら下がる。『pinos』はスペイン語で松ぼっくりの意味。9人の住人が同じ屋根(房)の下に暮らすイメージから名付けられた。
「初めて建物を見に来たとき、細い路地先の奥まったところに『pinos』を見つけた瞬間、「カワイイ!!」って。一気にテンションがあがりました」。そう話すのは、『pinos』が完成して初めての住人の1人、西嶋さん。ブルースタジオのメールマガジンで『pinos』の入居者募集を知った。
「まずは家賃を見て、「住めるな」と。でも、シェアハウスという選択肢は元々頭になかったし、大丈夫なの?と心配する友人の声も多かった。それで自分なりにネットで調べてみたんですが、ブルースタジオのWEBサイトでしか入居者を募集していないことが分かったんです。大々的に広告されているシェアハウスとは違って、このサイトを見ている人が集まるなら、何か“共通言語”があるんじゃないかと思ったんです」
西嶋さんが『pinos』へ引っ越した日、既に5人の住人が入居を始めていた。いつもは初対面で人見知りをするが、なぜか『pinos』ではすぐに他の住人と打ち解けられたそう。
「住んだ初日に、物干し竿を売っているお店を他の住人に訪ねたんです。そしたら、『じゃあ今から行こうか』と、当然のように店まで連れていってくれて。他の住人同士もまだ知り合って1週間のはずなのに、既にお互いに慣れている感じだったので、すごく自然に迎え入れてもらいました」