初めて訪れたとき『まさにこの部屋!』と思いました
かつて九十九谷と呼ばれていた東京都大田区「西馬込」駅の周辺は、丘と谷が入り組む起伏に富んだ街。大正時代、宇野千代夫妻がこの街に家を構えたことをきっかけに芸術家や文人達が移り住むようになり、「馬込文士村」とも呼ばれた。文士たちの住んでいた場所には記念館や居住跡案内板があり、彼らの足跡を訪ねることができる。
『√root』はこの街の丘の上に建つ集合住宅の1室。1977年に建てられた建物は、大量供給の時代にありながら3階建・12世帯と小規模で、外構や共用部がゆったりしている。築後30年が経っているが、オーナーが大事に手入れをしてきた建物はきれいに保たれていて味わいがある。この『√root』に、2010年7月から入居しているのが小林さん夫婦だ。
「当時住んでいた二子新地の1LDKの部屋が手狭になってきたので、いい部屋がないかなぁと探していたんです。西馬込に一人で暮らしている母がいるので、そろそろ近くに住みたいと考えてこの辺りで探していたんですが、よくあるnDKの部屋しか見つからなくて」とご主人。「私たちには個室は必要じゃなくて。人をたくさん呼べる広い部屋と使いやすい台所さえあればいいんです。『√root』を初めて訪れたときに、まさにこの部屋!と思いました」と奥さま。
『√root』の中心にはキッチンがあり、そこに立つと部屋をぐるりと見渡すことができる。赤いタイル張りのキッチンも小林さん夫婦が気に入ったところ。2人でキッチンに立つイメージがすぐに湧いたという。
入居してまもなく小林さん夫婦は新居パーティを開催し、夫婦共通の友人や両親を招き料理をふるまったそうだ。「キッチンに余計な仕切りがないので、友人たちも料理の準備や後片付けを手伝いやすかったみたいで、みんなでキッチンに行ったり来たり」と奥様。 パーティでは小上がりの畳も大人気に。段差に腰をかけてお酒を飲んだり、ちゃぶ台で料理をつまんだり。子どもたちも小上がりによじ上ったりジャンプで降りたりと、大人たちの心配をよそに楽しんでいたそうだ。