働くスタイルの変化から、家探しの基準が空間ありきに
東京都大田区にある東急池上線「洗足池」駅の目の前には、中原街道を挟んで大きな洗足池が広がっている。その洗足池とは反対側にある駅前商店街の1本隣の道を15分ほど歩く。通りには小川がせせらぎ、並木が涼しい木陰を落としている。春には桜、梅雨にはアジサイ、秋には紅葉。少し距離はあるが、季節ごとにさまざまな景色を楽しむことができる道だ。
『YT-1』は住宅街の中に建つ工場のような外観の建物。エントランスをくぐると2階まで吹き抜けの開放的な空間が迎えてくれる。2010年1月、「工房生活」をコンセプトとした共用部と専有部1室のリノベーションが完了した。現在、同じコンセプトで更に2室のリノベーションが進行中で、段階的に残りの部屋も改修していく計画だ。『YT-1』の最初に完成した部屋に入居しているのが、カメラマンの小山昭人さん(FACE)だ。自宅兼仕事場としてこの部屋を使っている。
「これまでは、代官山、広尾、恵比寿など、城西エリアの1LDKのマンションを自宅兼仕事場として借りていました。というのも、フィルムで撮影していた頃は現像所の近くに住まなければ時間がもったいなかったんです。それが、撮影がフィルムからデジタルに変わったことで、これまでこだわっていたエリアの条件をすっぱり外すことができるようになりました」
確かに、フィルム撮影かデジタル撮影かによってカメラマンの仕事のスタイルは大きく変わる。デジタル撮影では、撮影後にパソコンに向かって画像の処理をする時間が必要になるため、仕事環境としてパソコンスペースの確保や居心地のよさが大切になってくる。
「仕事のスタイルが変わって家で過ごす時間が圧倒的に長くなったので、家探しの基準は場所ありきから空間ありきに変わりました。ここは駅から少し離れているけど駐車場付きで、車で移動することが多い僕には特に不便もなかった。賃料や広さのバランスもちょうど良いハコに『やっと出会えた!』という感じでした」