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INSIDE Vol.13


家をきっかけに
暮らしが変わる

Vol.13

東京都大田区『YT-1』 リノベーション 住居 兼 アトリエ シングル
専有面積: 48.00㎡
職種: カメラマン
趣味: 写真

働くスタイルの変化から、家探しの基準が空間ありきに

東京都大田区にある東急池上線「洗足池」駅の目の前には、中原街道を挟んで大きな洗足池が広がっている。その洗足池とは反対側にある駅前商店街の1本隣の道を15分ほど歩く。通りには小川がせせらぎ、並木が涼しい木陰を落としている。春には桜、梅雨にはアジサイ、秋には紅葉。少し距離はあるが、季節ごとにさまざまな景色を楽しむことができる道だ。

『YT-1』は住宅街の中に建つ工場のような外観の建物。エントランスをくぐると2階まで吹き抜けの開放的な空間が迎えてくれる。2010年1月、「工房生活」をコンセプトとした共用部と専有部1室のリノベーションが完了した。現在、同じコンセプトで更に2室のリノベーションが進行中で、段階的に残りの部屋も改修していく計画だ。『YT-1』の最初に完成した部屋に入居しているのが、カメラマンの小山昭人さん(FACE)だ。自宅兼仕事場としてこの部屋を使っている。

「これまでは、代官山、広尾、恵比寿など、城西エリアの1LDKのマンションを自宅兼仕事場として借りていました。というのも、フィルムで撮影していた頃は現像所の近くに住まなければ時間がもったいなかったんです。それが、撮影がフィルムからデジタルに変わったことで、これまでこだわっていたエリアの条件をすっぱり外すことができるようになりました」

確かに、フィルム撮影かデジタル撮影かによってカメラマンの仕事のスタイルは大きく変わる。デジタル撮影では、撮影後にパソコンに向かって画像の処理をする時間が必要になるため、仕事環境としてパソコンスペースの確保や居心地のよさが大切になってくる。

「仕事のスタイルが変わって家で過ごす時間が圧倒的に長くなったので、家探しの基準は場所ありきから空間ありきに変わりました。ここは駅から少し離れているけど駐車場付きで、車で移動することが多い僕には特に不便もなかった。賃料や広さのバランスもちょうど良いハコに『やっと出会えた!』という感じでした」

メリハリをつけた空間の使い方

『YT-1』は、北西の壁一面に大きな開口部のある約40平米の空間だ。間取りは、入り口側の土間エリアと窓側のフローリングエリアからなる。光沢のある白い土間のエリアはコンパクトなキッチンとサニタリーを含んだスペースで、住む機能を備えている。一方、フローリングエリアはウッドチップボードの間仕切りで2分されており、エントランスから続きの大きい空間と小さい空間とに分かれている。

小山さんは、フローリングエリアの大きい空間を仕事場として、小さい空間をベッドスペースとして使い分けている。ベッドスペースには、洋服や生活備品、撮影機材などをアルミラックやボックスを駆使してミニマムに収納。一方で、仕事場としている空間には床を広く残した。これは仕事道具やポスターのような大きな作品を床に広げることがあるためだ。デスクや収納の脚にもロールをつけて、容易に移動し広いスペースをつくれるように工夫している。

土間エリアで打合せや食事などに使っている木のテーブルは、この部屋に元々備え付けてあった家具。リノベーション工事の際に余った木材で作られたもので、入居者が自由に使うことができる。

「物件を案内してもらった時に『テーブル付き』と聞きました。自分でいざ購入しようとすると、見つけるのも選ぶのもなかなか難しかったりするのでいいサービスだと思いましたね。とても気に入っていますよ」

この部屋を機に、趣味としての写真を楽しみたい

「この部屋を一言で言えば『アレンジが効く部屋』ですね。そのアレンジのヒントになるようなものがこの部屋には用意されているんです」と小山さん。その1つが、小学校の図工室で見るような孔あき合板の壁。既存の棚板の位置を自由に決めたり、新たなパーツを買ってきて付け加えたりすることができる。小山さんは棚板をバランスよく配置して、画像処理をするために必要なパソコンや機材、写真関連の書籍など置いている。また、天井に複数並行しているライティングレールも光を照らす位置を容易に変えることができ、ちょっとした撮影をするのに好都合だったという。他に、間仕切りのウッドチップボードも入居者が自由に手を加えてよいことになっている。

「カメラマンのための部屋かな?と思うくらい、タイミングよく出会ったこの部屋が僕にぴったりで驚いています。元々職業にするために写真を始めたので、これまで仕事以外で写真をじっくり楽しむってことをしてこなかったんです。でも、この部屋に出会ったのを機に、趣味としての写真も楽しみたいと思っています」

小山さんが写真に興味をもった理由は、映画や雑誌と違って、写真には1人で追求する楽しみがあることだ。もちろん1つの広告写真をデザイナーやスタイリスト、アートディレクターなどと一緒につくり上げることもあるが、カメラマン1人で撮影から現像、見せ方まですべてにこだわって作品をつくることもできる。

次に『YT-1』を訪ねるときには、小山さんが自分の楽しみとして撮影した写真が飾られているかもしれない。

2010年6月18日『YT-1』に て
撮影:笹本直裕 取材・文:和田亜弓(共にblue studio)

今回の入居物件のご紹介

東京都大田区上池台 『YT-1』
専有面積:48 平米
竣工年:2002年6月
リノベーション完了:2010年1月





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