「建物をきれいにして一時的に入居者が入ったとしても、この先も入居が続く状況をつくらなければ、問題を先送りしているだけ。この商店街そのものを魅力的なものに変えていくことで、先々も人が集まる状況をつくっていくことが、このプロジェクトの目的です」
そう話すのは、『西調布一番街つくるまちプロジェクト』の先導者である石川恭さん。舞台は、西調布駅と旧甲州街道の間にある長さ100mほどの小さな商店街「西調布一番街」。商店街の空き物件をアトリエとしてクリエイターへ貸し出し、ものづくりをする人たちが集まる“つくるまち”へと、商店街そのものをリノベーションしていこうという試みだ。
昭和30年代に、石川さんのお父様が私有地に店舗用物件を建て、商店を誘致したことが始まりとなって生まれた「西調布一番街」。かつては食料品店から生活用品店、飲食店までがひと揃いし、周辺の労働者や生活者の暮らしの中心地だったが、近隣にあった工場が閉鎖したことで人の流れが変わり、ここ数年で空き店舗が増加。石川さんが親族で所有する物件にも空室が出始め、石川さんはさまざまな対策を検討したという。
「商店街の通りは実は私道。幅員が狭いこともあって、建て替えたとしても収益性が見込めるボリュームの建物を建築するのは困難。さらに、この商店街に物件を持つオーナーは私たちだけではありません。足並みを揃えた再開発に臨むことも難しい状況でした」