“物語のある暮らしをデザインする”ことをコンセプトに活動するブルースタジオ。では、そんな暮らしを提案するブルースタジオのスタッフたちは、どんな“物語のある暮らし”を送っているのだろう? 今回の特集では、スタッフそれぞれのライフスタイルの中に潜む、ブルースタジオのものづくりの源泉を探ってみたい。
賃貸マンション
05私のクリエイティブを刺激する
セミ・スケルトンなワンルーム
STAFF
菊嶋かおり
1985年生まれ・山梨県出身
設計スタッフ
居住者構成/本人+パートナー
形態/賃貸マンション
所在地/港区 間取り/ワンルーム 面積/40㎡
Q1現在の住まいへの入居を決めた理由は?
以前住んでいたのは、ザ・賃貸仕様の普通の部屋。「自分が暮らしを楽しまずして、お客様によりよい暮らしの提案ができるのか?」という想いから引越しを決意。「自分が住みたいと思えるか」という条件のみを優先して、さまざまな物件を見ました。なかなかぐっとくる物件に出会えずにいたある日、『東京R不動産』でこの部屋を見つけたんです。即座に明朝の内見希望を連絡し、内見してその場で即座に申し込み。荒々しいコンクリート躯体、角部屋なのに断熱なし!という普段の仕事では挑戦できないような部屋のデザインに刺激され、実験的に住むことを決めました。
Q2現在の住まいのプランや内装について教えてください。
間取りは、キッチンが目線の高さの壁で仕切られたワンルーム。コンクリート躯体むき出しの天井、赤く塗装された配管といったアヴァンギャルドな内装は、私たちが入居する2年前にリノベーションされたものでした。水色の壁部分の巾木と回り縁は淡いピンクだったのですが、ここをグレーに塗りたいと思い、photoshopでパースをつくって、どこを何の材料で塗りたいのかを説明する資料を作成して大家さんにプレゼン。原状回復なしでの塗装OKが出たので、友人らを駆り出してDIYで塗り上げました。
Q3自宅のインテリアについてこだわっていることは?
この部屋のインテリア計画を立てている時に、昔からずっと憧れていたアルゼンチン出身デザイナーの名作チェア『BKF Chair』がこの部屋にはハマる!という天啓を得て、何となくブラジルやアルゼンチンがテーマに。大胆な幾何学模様のIKEAのラグやラタンのスツール、学生時代から愛用しているグリーンのテーブルなどに、モンステラやストレリチアといった野趣溢れる植物を合わせて、あえてテイストも素材感も異なるミクスチャーなインテリアにしています。実はこの部屋、「白い」壁や天井がないんです。ニュートラルな色である白がないことで、良くも悪くも「いつも見ているものから偏った部屋」になったかなと思います。
Q4都会的なロケーションですが、住み心地はどうですか?
以前も新宿という都会的な場所に住んでいたのですが、その時に比べて季節の移り変わりを実感するようになりました。2方向に運河を臨み、その先には東京湾があり、海上に広がる空も眺めることができます。運河にはカモメやカモが集まり、時々水面を跳ねる魚の姿も。空気が澄んだ日には富士山も見えるんですよ!品川に建つ高層ビルの合間からチラリと望む富士山は、さながら現代版・冨嶽三十六景「東海道品川御殿山ノ不二」だなぁ、なんて思いながら過ごしています。部屋の中からは車両基地へ向かう新幹線も見えます。運河の上の鉄橋をゆっくりと新幹線が走っていく様は、なかなか出会える光景ではないので気に入っています。
Q5今の住まいで気に入っているところは?
夕方、家で本を読んでいると、南米やアジアのゲストハウスの中庭にいるような感覚にとらわれることがあります。そうした感覚は、私にとってほとんど理想的な居心地なんです。引っ越してすでに半年以上経つのですが、実はまだ慣れない(笑)。毎日、新鮮な感覚で暮らしています。
Q6「こんな暮らしがしてみたい!」という夢はありますか?
いつか中古マンションを購入してリノベーションをするなら、思い切り実験してみたいと思っています。新しい素材や住まいの在り方をお客様へ提案してみたいと思いつつ、それが有効かどうかの実験ができるのは、究極のところ「自邸」なんだよなといつも思います。今の賃貸が思いのほか気に入っているので、まだ家を購入する予定はないのですが、いつかの家づくりへ向けて、日々妄想だけは膨らませています。
編集後記
「中古を買ってリノベーション」「ブルースタジオ物件に住む」「スタイルのある賃貸生活」。それぞれの住まい方を送るブルースタジオスタッフを紹介した今回の企画。彼らのコメントを見ると、「仕事でリノベーションに関わっているから」ということよりも、まず「自分自身も住まいを楽しみたい」という想いが伝わってくる。“豊かな暮らし”を求めること。そうした、いち生活者としての率直な想いが、お客様との共感性につながったり、よりよい住まい方を追求するという姿勢にもつながるのだろう。彼らの暮らしの中にブルースタジオのものづくりの源泉があることを、実感させられるレポート結果だった。
text:Kanako Satoh