“物語のある暮らしをデザインする”ことをコンセプトに活動するブルースタジオ。では、そんな暮らしを提案するブルースタジオのスタッフたちは、どんな“物語のある暮らし”を送っているのだろう? 今回の特集では、スタッフそれぞれのライフスタイルの中に潜む、ブルースタジオのものづくりの源泉を探ってみたい。
賃貸マンション
03植物がもたらすフレッシュな毎日
ベランダーのボタニカル・ライフ
STAFF
藤笠隆之
1978年生まれ・岡山県出身
設計部門マネージャー
居住者構成/夫婦
形態/賃貸マンション
所在地/世田谷区 間取り/1LDK 面積/40㎡
Q1現在の住まいへの入居を決めた理由は?
長く住んで馴染みのあった下北沢周辺で物件を探しました。この部屋は、内見した時にベランダから夕日と富士山が見え、その見晴らしが気に入って決めました。環七沿いで内装は新建材ばかり、間取りにも不満がありましたが、広いベランダを見て、ここを何とかすればいい家になるな、という直感があったんです。それと、この家は梅ヶ丘の駅から北沢川緑道を歩いて帰ってこれるんですが、前からこの緑道が好きで、いつか近くに住みたいと思っていたんです。道沿いに坂本一成さん設計の「代田の町家」があったり、さまざまな植物が育っていて、毎日歩いていても飽きません。
Q2自宅のインテリアについてこだわっていることは?
今あるものは、貰ったり拾ってきたり、安く譲ってもらったものばかり。自分で作ったものもあります。インテリアショップでアルバイトをしていた学生の頃はたくさん家具を買っていましたが、当時の家具はほとんど手放し、手元に残っているのは思い出のあるものだけ。今の家に住んで植物にハマってからは、植物と相性のいいリンゴや野菜の木箱などに手を加えて収納にしたりしています。インテリアに植物を飾るというより、インテリアを植物に合わせているというか、家がグリーンに占拠されてきているというか…。植物はインテリアの小道具ではないということを実感しています。
Q3“ベランダー”に目覚めたきっかけは?
今の家の、広いけれどガラーンとしたベランダを見て、デッキを敷きたくなり、デッキを敷くと今度は植物を置きたくなって…と、気が付くと部屋のことはそっちのけで、ベランダいじりばかりするように(笑)。妻はもともと植物好きだったので誰も止める人がおらず、さらにいとうせいこうさんの著書『ボタニカル・ライフ』に出会って、完全にハマりました。
Q4グリーンがそばにある暮らしの魅力は
何ですか?
毎日、必ずベランダに出るようになったので、季節や天候の変化に敏感になりました。無垢の木や天然素材が経年変化するように、植物も日々少しずつ変化します。極端な言い方かもしれませんが、植物と暮らしていると、毎日違う部屋に住んでいるような感覚が味わえると思います。それから、素焼きの鉢を塗ってカスタマイズしたり、マクラメでグリーンハンキングを編んでみたり、植物をきっかけに新しい物事にチャレンジする機会も増えました。外を歩けば植物に目が行くし、知っている街も植物に着目して見ると新鮮に感じたり、花屋さんを見つけたら入ってみたりと、以前とは暮らし方が随分変わりました。
Q5現在の住まいで気に入っているところは?
もちろんベランダです(笑)。実は、この家に住むまでは「ベランダがあるよりも部屋が広い方がいい」という考えを持っていたんです。この家に暮らして、住まいに外部空間があることの魅力に改めて気付かされました。今では、部屋が多少狭くても、外部との接点がたくさんある方がいいと思っています。
Q6「こんな暮らしがしてみたい!」という夢はありますか?
とりあえず、引っ越してきてからそのままになっているダンボールを片付けて暮らしたいです…。棚がほとんど植物で埋まっているので(笑)。本当に必要なものだけに囲まれたミニマリストな暮らしが理想ですが、性格的に無理かもしれません。賃貸か購入か、新築か中古かというこだわりは、実はあまりないんです。自分が住む家でも仕事で関わる家でもどちらでも、「住んでいる人が思わず何かを始めたくなる」、そんな家をつくりたいなと思っています。
編集後記
「中古を買ってリノベーション」「ブルースタジオ物件に住む」「スタイルのある賃貸生活」。それぞれの住まい方を送るブルースタジオスタッフを紹介した今回の企画。彼らのコメントを見ると、「仕事でリノベーションに関わっているから」ということよりも、まず「自分自身も住まいを楽しみたい」という想いが伝わってくる。“豊かな暮らし”を求めること。そうした、いち生活者としての率直な想いが、お客様との共感性につながったり、よりよい住まい方を追求するという姿勢にもつながるのだろう。彼らの暮らしの中にブルースタジオのものづくりの源泉があることを、実感させられるレポート結果だった。
text:Kanako Satoh