長かった残暑もようやく終わり
ほんの少し年をとったせいか 秋の夜長に時より昔のことを思い出します。
頻繁に連絡を取り合うことはせずとも
昔から深い付き合いをしてくれる私の友人たち。
みな朗らかで どんなときでも私を受け入れてくれる優しい友人です。
そのなかで、ひときわ異彩を放つヘンな女が2人います。
一人はりえちゃん。もう一人はミナミです。
りえちゃんはウサギが大好きな 私より7つ程年上の女性。
ミナミは高校時代からの友人で 大学受験を共に乗り切った仲です。
今回はそのミナミについてお話ししたいと思います。
ミナミとは高校2年次のクラス替えで同じクラスになり、2年、3年と同じクラスでした。
2年生の時はそれほど仲がいいというわけではなくクラスメイトの一人という感じでしたが、
3年の受験シーズンに一気に距離が縮まりました。
互いに塾の学習室での勉強が好きでなく、学校の教室を利用していました。
二人ともセンター試験の結果に愕然としながらも削がれたモチベーションを
なんとか維持しつつ毎日学校に通っていました。
当時、私たちの高校はセンター試験が終わると自由登校になったため、
空調設備のない真冬の教室を利用するのは私とミナミくらいでした。
先生も見回りに来ることがなく、常に教室に二人だけという状況だったので、
小腹がすいたらおやつを食べ、眠たくなったら昼寝をし、
勉強に飽きたらどちらからともなく話しかけ、悩みや不安を相談し合う。
そんな自由な勉強スタイルが心地良かったのを覚えています。
そんなある日、職員室の前を歩いていると、中から泣き声が聞こえてきました。
それも廊下中に響き渡るほどの大きな泣き声。
私は「あ〜ぁ、かわいそうに。受験のストレスだよね〜」などと思いながら
職員室の窓を覗くと、泣いているのはミナミ。
人前で泣いたことがない私にとって、この状況はだいぶ衝撃的で、
「え!?どうしたの!?なにが起こったの!?」と
私の前では明るく振る舞っていた彼女の泣き叫ぶ姿に動揺すると同時に、
人前で自分の感情を爆発させることができる彼女を羨ましくも思いました。
二人ともなんとか大学に合格し、私は地元で、ミナミは関西の大学に進学することになりました。
大学生になってからはお互い連絡をとることもなくなりましたが、
それから15年ほど経った頃、なにかのきっかけでミナミと久々に連絡をとるようなりました。
社会人になったミナミは広島で放送局のディレクターをしていました。
15年分の話題は底をつかず、平日にも関わらず夜通し互いの近況報告や悩み相談などを
電話で話していました。
そんなある日、ミナミが突然
「仕事を辞めて趣味のバイオリンに集中する」と言い出したのです。
は?
我々はもう三十路を過ぎているのだぞ?
2回目の衝撃です。
彼女が趣味でバイオリンを習っていたことは聞いていましたが、
バイオリンを習い始めてまだ1年ほど。
まさかプロになるわけでもあるまいな と思いつつ話を聞いてみると、
バイオリンを習ううちに
仕事する時間があったらバイオリンを弾きたい、音大に入ってもっと極めたい
と思うようになったということでした。
私は彼女の将来を案じつつも、彼女の夢を見守ることにして
「お互いがんばろう!」と言ったのが3年前。
それからまたぷっつりと連絡が途絶えていますが、
ミナミは今もどこかで自分らしくイキイキと過ごしているんだろうな。
東京という大都会で いやがおうにも刺激を受けていると、
ダブルパンチをお見舞いされたミナミのことが自然と頭に浮かんできます。
次、連絡をとった時またいろんな話ができるように
いろいろ見て、知って、挑戦して。
ネタ集めをして時を待とう。
おわり。