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歩いて帰ろう

おおた

東京→瀬戸内→東京へ。最近買った本は『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである』『きのう何食べた』、最近の気付きは「旅先で手紙をかくと楽しい」です。


すっかり秋めいて心地よい天気です。
引越をしてからずっとあたためていた夢をかなえる日(日々)が来ました。

「職場から歩いて帰る」です。

築地にあるオフィスから自宅までは、歩いて1時間もかかりません。
曲がる場所もほぼ無いため、地図を見る必要もありません。

こんなことを心がけています。


①「歩く」ということを意識する
いつもは何も意識せずに歩みをすすめ目的地へと向かいますが、
「歩く」ということを意識します。

前職は勤務中に人前で歩く場面が多かったため、少しおとなしい歩き方へと矯正し、
今も基本的にはその歩き方(ができているはず)なのですが、
歩いて帰る日は、周りをあまり気にせず「歩き」ます。

いつもよりも歩幅を広く、手をふって、
少し速いスピードを意識しながらずんずん歩くのはかなり気持ち良いです。


②まわりを「見る」
人や物にぶつからない、正しい場所で道を曲がる、程度の情報として視線から
もう一段階解像度をあげて「見」ます。

・・・というと特別なことをしているように聞こえますが、
具体的には、帰宅してから作る夕食のアイデアとなるようなものを探します。

和風だしの匂いがしてきたら、煮物にしようかとか
釣りをしている人がいれば、魚料理にしようかとか
寒くなってきたら、今夜は鍋にしようかとか
そんなことを考えます。

都会のスーパーはいつでもなんでも買うことができます。
しかし、目につきやすい値段の安さや量といったフィルターではないところからメニューを考えられるのは嬉しいです。

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歩いていると、対岸の川沿いに並ぶマンションやオフィスの灯りがよく見えます。
東京の狭い道路や地下鉄ではなかなか目に入らない窓越しの灯りをみていると、
その一つひとつの灯りにそれぞれ暮らしがあるのだと思います。


「あのともしびの一つ一つは、見わたすばかり一面の闇の大海原の中にも、なお人間の心という奇蹟が存在することを示していた。(略)それぞれの糧を求めて、それらのともしびは、山野のあいだに、ぽつりぽつりと光っていた。」
(サン=テグジュペリ/堀口大學訳『人間の土地』より)

「あの灯りの一つ一つにも人生がある」
(山口つばさ『ブルーピリオド』8巻より)


日頃、自分が今どこにいて、どれくらいの距離を、どこへ移動しているのか、
どのような情報を受け取って、何を自分で考えるのか、
便利になりすぎたこともあって見失いがちな日々ですが、
歩いて帰ると、そのもやもやが晴れていくような気持ちになります。

夜が心地よい季節を、もうしばらく楽しみたいと思います。





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