先日、コクーン歌舞伎の「天日坊」を鑑賞してきました。
コクーン歌舞伎は、古典歌舞伎の演目に現代の要素や音楽、斬新な演出を取り入れた新しい歌舞伎公演です。
今回観劇した天日坊は10年ぶりの再演ということもあり、楽しみにされていた方も多く、満員の会場でした。
「天日坊」は主人公の法策が、あることをきっかけに源頼朝の落胤に成りすまし、
天下を目指して鎌倉へと向かう道中での出来事を描いたお話です。
他人に成りすますうちに、自分以外の誰にもなれないことをさとり、一体自分は誰なのかと自問自答していきます。
私も自分は何者なのかとたまに考えることがありますが、誰でも一度は向き合ったことのあるテーマではないでしょうか。
会場ではトランペットを中心とした洋楽器の音色が響き、盛り上がりを助長させたり、主人公の心情をあらわしたり、
音楽に合わせて会場も一体となっていく様子を肌で感じました。
また、テンポ良く進んでいくストーリー展開や現代ことばを取り入れたユーモア溢れる掛け合いがとても楽しく、
歌舞伎に馴染みのない人にも見やすい軽快さがありました。
その一方、役者の華々しさや力強さ、見せ場である見得や立ち回りもしっかりと堪能することができ
継承されてきた伝統の重みが、型を崩すことによってより強調されていたように思います。
"古いものの価値を継承しながら、新たな価値を創造する"
いま自分の手掛けていることと重なるものが多く、会場を出た後もしばらく余韻に浸っていました。