福岡オフィスのいでちゃんです。
コロナ禍が世界的な騒動となってまもなく2年になりますね。
以前の「当たり前だった生活」から大きな変換を余儀なくされてから時間が経ち、
今の生活がむしろ当たり前だったのではないかとさえ錯覚しそうです。
日頃の生活だけでなく、私たち建築設計に従事する人間も大きく振り回されています。
当たり前に海外で生産、加工されていた資材建材がみるみる価格上昇し、
釣られて需要が増加した国内材も上昇する事態となっています。
今後世界的に流通が落ち着いたとしても、
一度価格が上がった材料の価格を戻すことは考えづらいですね。
この事態を機に、多くの設計者は材料の産地や流通を見つめ直したことでしょう。
かく言う私もその一人です。
考える上で基本となる要素を、
材料、産業(流通も含む)、エンジニアリングと考えて、
それらが無理のない範囲で関わりあう、最適というよりは快適な、
心地よい組み合わせが風土的なものになるのだと考えています。
外海(そとめ)の石積み外壁の集落、石見(いわみ)や津和野などの石州瓦の集落など、
現地の材料と当時の流通コストとの境で無理のない範囲で出来上がったものが、
無理がないために周囲に広まって一体的な景観を生み出してきました。
大野教会堂
津和野近傍の街並みの集落遠景
また周辺の土地の性質を理解し、それを熟知したエンジニアリングを活かせば、
長い目線で無理のない維持も可能となることは想像に難くないですね。
最たる例が白水ダムではないかと考えています。
軟弱な阿蘇溶結凝灰岩をベースとした地盤に負担をかけないよう、
地質を熟知した地元の石工の知見を技術用い、
周囲の自然地形を引用して出来上がった美しい構造物です。
白水溜池堰堤(白水ダム)
現代では、例えばラワンやメルサワといった外材を使っては、
伐採のしすぎで材料の価格が高騰する様を繰り返していました。
石州瓦も同様に、豪雪地での相性が良い為に他地域での採用が増え、
瓦の材料の土が枯渇する可能性が懸念されています。
もちろん価格と求める性能のせめぎ合いは必ず生まれるので、
現代のグローバルな流通システムと新技術にどっぷりと浸かってしまった私には
懐古的に昔からの素材や技術だけを用いてということは残念ながら全てはできません。
現代ならではの最新技術や流通システムを用いながら長い目線で検討し、
素材や土地に快適で無理のない組み合わせの選択こそが求められる技能こそがエンジニアリングで、
その積み重ねが未来の風土を形作ることになるのでしょうね。
そうであったらいいなと考えています。