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便利な時代に「不便」を考える

さかぐち

鹿児島県出身。ラジオと映画とジャスミンに囲まれて生活中。時の流れに身をまかせ、いつの日か向田邦子になるのが夢です。


こんにちは、さかぐちです。

突然ですが、実家のねずみ色の冷蔵庫に、ある時こんな紙が貼られていました。

『足るを知る者は富む』

こんな風なニュアンスの言葉だったと思いますが、
それはある日忽然と現れ、特にその教えを叩き込まれるでもなく、
ただただ、その年季の入った冷蔵庫にポツンと磁石でくっついていたのを覚えています。

ちなみに、その冷蔵庫。
あまり性能は良くなかったのですが、
いつも「ブー」と重低音を響かせて健気に頑張る姿に、私はずっと愛着を持っていました。

「足るを知る者は富む」標語にも似たような言葉、
貼った張本人の母も大体のニュアンスでしか理解していない様子でしたが、
今になってよくよく調べると、
これは老子が説いた言葉で、
足る=満足すること を知っている者は、富む=心豊かに生きることができる、という意味のようです。

現代社会では、インターネットが発達し、IT化の時代で私たちは何かとキャッシュレスや、AIなど新たなシステムを迎え入れてきました。

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人工知能(AI)が人間の暮らしをより豊かに!

便利な世の中になっていると言われれば言われるほど、
IT社会へのフックを持ち合わせていないと、途端にその便利ツールが不便な障害になってしまうと実感しています。

 実家の話に戻りますが、私が小学四年生の時、地デジ化に伴い、
我が家のブラウン管テレビも、近未来的でスマートな液晶テレビへと移り変わりました。

その液晶テレビと一緒に、ビデオデッキも購入したのですが、
なんの手違いか、当時流行り出した録画機能が付いておらず、長らく夢見た録画への道が絶たれ、我々一家は脱力したのです。

(それから10数年が経ち、私たちはようやく、録画機能付きのテレビを購入しました)

ただ、その時のことを今思い返すと、録画ができないのは非常に不便なはずなのに、
なぜか我々家族は録画できないが故に一致団結していたように思います。

例えば19時から見たいテレビがあったときには、その前にお風呂やその他家事など家族全員で時間を逆算し、テキパキと行動していました。

「お風呂上がったよ!○○くん早く入って、お母さんが入れるように○時までに上がって!」

「3人(兄弟全員)で力合わせて、あと30分で洗濯物取り込んでたたんで!(もしくは)お風呂洗って!」

など。

そして、みんなが好きな番組の時には必ず家族全員が居間に集まる。

ひとつしかない、そして、後戻り(録画)ができないからこそ、皆んながその時間に意識を集中させていました。
そんな平成とは思えない日常風景を思い出すと、今よりもずっと幸せで楽しかったなぁと思うのです。


 人から言われて、自分の置かれている状態があまり便利な状態ではないということに気づく、ということも時々あります。

冬に一人暮らしをしている自宅に知り合いを招いた時。

外出先から戻り、「寒いねぇ」と言いながら暖房のスイッチをON。
そして、お茶を淹れるためにポットを温めている最中、威勢の良く鳴り響く「パチン」という音。

かつて遭遇したことのない状況に慌てふためき、私の名を呼び続ける知り合い。
「はいはい、ブレーカー戻すのでお待ちください」という私の声に知り合いは安堵しつつも、
なぜこの状況をそのままにしているのか、と理解に苦しむという表情を浮かべていました。

足りなければアンペアを上げればいいじゃない、という知り合いの提案を無碍にするわけではなく、きちんと向き合い、出した結論。

暖房のつけ始めは電力がかかるので、運転が安定し始めたら、その他家電類を使用するなど、
ブレーカーが落ちない工夫はたくさんあるので、わざわざアンペア数を上げる必要なし!ということです。

私の中では、ブレーカーが落ちるか、私が根を上げるか、どちらが先なのか一種のゲームであり、
これは自分自身との闘いなのだ!、と楽しみにながら暮らす道を選びました。

足りない中でいかに工夫し、生活するか。

足りないから不便で不幸せ、なのではなく、
「足りない」と思う気持ちが、不幸せ、生きづらさを感じさせてしまうのだな、と最近つくづく考えています。


・なかなか冷えない冷蔵庫

・録画のできない液晶テレビ

・暖房と電子レンジを同時に使うとパチンという音ともに落ちる自宅のブレーカー

・そして、大手を振って外出できないこのご時世

自分に嘘をつくのも辛いので、自分自身を騙すのはあまり健全ではありませんが、
生きづらさに目を向けることより、
これからも自分の気持ちに正直に生きながらも、
満足するためにどうすれば良いかを真剣に考えていこうと思いました。

不便なことは、イコール不幸せではない!
とここまで書きつつも、インターネットさえ繋げばすぐに観ることのできる動画配信サイトはつくづく便利で、心の支えだなぁとしみじみ感じます。

便利なのも良い!不便なのも時には良い!

自分の都合の良いように、心の持ち様で自分の幸福度も変えられる!

そう思って、これからも力強く生きて行こうと思います。

※考え方にはもちろん個人差ありますので、宜しければ、あくまで、酷く偏った私見中の私見とお受け止めください。





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