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それぞれの使命、相応の使命

さかぐち

鹿児島県出身。ラジオと映画とジャスミンに囲まれて生活中。時の流れに身をまかせ、いつの日か向田邦子になるのが夢です。


「売り手市場」と言われた就職活動。
過去の冷え切った「就職氷河期」に比べ、いわゆる、就活生にとっては有利な時代。

そんな、学生にとっては恵まれた状況にも関わらず、

「自分の強みは?」
「1分間で自己PRをお願いします。」

この手の質問がひどく嫌という1点で、大学3年生の年明けから一斉にヨーイドンで始まる就活にそっぽを向いたのでした。

今思うと、自分の長所、役割、使命みたいなものが分からず、ひとりでモヤモヤしていたところに、
自分を売込まなければいけない就職活動が重なり、ひとりで人生の迷子になっていたのだと思います。

先日、外出先でお昼を食べようと、あるレストランでメニューを眺めていたところ、
隣に座ってきた親子(30代半ばのお母さん・5歳のお嬢ちゃん)がいたのですが、店員さんへの注文の際、私は驚きうろたえました。

椅子に座ると、その両足も地に着かず宙にぶらぶらしているような5歳児が、まあ見事に注文しているのです。
「あの、これって○○は付きますか?分かりました。じゃあ、これとこれをお願いします。以上です。」

なんということだ...
世の5歳児(正確にいうと、5歳児と思しきその子)はこんなにもしっかりしているのか。
思わず、自分が5歳だった時の、もじもじぶりと不甲斐なさが頭をかすめ、さらにその子の凄さが際立ったのでした。

「すごーい」と純粋に思うと同時に、どこか寂しさも感じ、すぐにそれは、子供の時分は子供らしく、その時期相応の身ぶり、役割を演じればいいのに、と。
子供らしさを失った子供への物悲しさだと気付きました。

そんな、ある種の哀愁を感じていた頃、あるシェアハウスの入居者の方よりお誘いを受け、入居者さんとシェアハウスオーナーさんとのお鍋パーティーに参加させていただきました。

「わの家 千峰」は、築90年を超えた、オーナーさんのご実家をブルースタジオで改修、リノベーションしてできた古き良き日本家屋の香りを色濃く残し、現代に継承した唯一無二のシェアハウスです。

パーティーでは、入居者の方が振舞ってくれる鍋料理、お酒、デザートを囲み、そこでの生活やオーナーさんのお話などで盛り上がり楽しいひと時を過ごすことができました。

そんな中オーナーさんのあるひと言が私をはっ、とさせたのです。

「僕は、ここの家を100年残したいと思うんだ。それまでの数年間は頑張らなきゃと思う。」

築90年の木造ともなると、現代の性能重視の築浅物件に比べたら、性能面での「住みやすさ」は勝てない部分もあるのも事実。

ただ、このお家が持つ使命は住宅性能だけではなく、その大部分が、シェアハウスのコンセプトに共感して集うこと、そして、そのコミュニティを維持存続することではないかと思ったのです。

それはこの千峰にしかできない役割であり使命だと改めて気付いた1日でした。

レストランでたまたま隣り合わせた小さな女の子が、その子の歳以上の役を演じていたことへの違和感。

築90年越えのシェアハウスだからこそ実現した人と人の繋がり。

新進気鋭の女性ライターと言われ、TBSラジオで冠番組を持ちながらも、好きなラジオ番組に投稿するネタは1度も読まれたことのないジェーン・スー。

それぞれには、それぞれの役割と使命があって、みんなそれを果たしているのだと改めて考えさせられました。

さて、私の使命って...
まだまだ答えは見つかりそうにありません......





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