''工芸とはなにか。えらばれた道具。本とはなにか。えらばれた言葉。
私たちが年に3冊刊行している『工芸青花』は、この時代の人々がなにを感じて、なにを考えたかを、(後世に)つたえるための本です。''
(引用:https://www.kogei-seika.jp/)
少し前に『青花の会』の会員になりました。
年3回「工芸青花」の本が届き、会員には青花の会主催の催事への優先参加できるというという特典があります。
この本は、民芸や歴史をはじめ「工芸とはなにか」を綴った本なのですが、本自体がまさにそれを体現したような
心惹かれる装丁をしています。
持った時の麻布の手触りもさることながら、
1ページ目を開くと、薄い紙で大切に保護された望月通陽さんの型染絵に目が惹かれます。
興味のある方は会員にならなくても購入できるので、ぜひ。
古いものや手仕事が好きで、高校生くらいの時から骨董屋に通っていました。
どこかへ旅行に行くと、必ず古いものを取り扱うお店に行くくらいには骨董・工芸が好きな私は、
この本の存在を友人から教えてもらい「ちょっとお高いけど・・。」とだいぶ悩んだ末、会員になりました。
会員になり、いつ届くだろうとポストを気にしながら過ごし、少しして届いた本がポストに入っているのを見つけた時は
年甲斐もなく、まるでサンタクロースからプレゼントが届いた時の幼な心が蘇る思いでした。
先日、そんな工芸青花主催の骨董祭に行ってきました。
「工芸とは何か」
Wikipediaには「実用品に芸術的な意匠を施し、機能性と美術的な美しさを融合させた工作物のこと。」とあります。
あるいはそうであったり、またあるいはそうでなかったり・・・。
その答えは人によって様々かと思います。
工芸青花の骨董祭では、古いもの、作家ものの器や装身具に始まり、オブジェや服まで様々なものが並んでいました。
どれもこれも魅力的なかたち・手触り・色のものがずらり。
ひとつひとつを美術品のようにじっくりとっくり眺めつつ、美術品と違うのは目で見て・触れて・持って・傾けて、と様々な角度から
楽しめることでしょうか。
その中で相方と話し合い購入したのは、シンプルな白いマグカップ。
シンプルだけれどもなんとも言えない、愛らしさがあります。
平な底だとか、てろんとした持ち手だとか・・。
そして私が個人的に気になって買ったのは・・・。
「指の跡が入ったオブジェ」です。
それだけ聞くと「何だそれ?」となるかもしれませんが・・・。
籾殻で一定温度でじっくり焼くことでできるという不思議な色合いのそれは、なんだか目が離せませんでした。
そこにびっと入った深い溝は、作家さんの指の跡だと聞いて、なんだかとても面白く感じてしまい、
色々なところを見て最終的に「一期一会」を言い訳に購入へ。
つるんとした冷たい感触と、その色合い。
そしてころんとした佇まい。
先日家を購入して、これから引越しして新生活を迎える今。
この子をどこに置こうか考えるのがとても楽しいのです。
そして私が考える「工芸」とは、ひとの手跡が残っていることなのかなぁ、と思いました。
今回は本当に「指のあと」ですが、それは私の好きなものの様々な部分で現れていました。
例えば作家さんがひとつひとつじっくりと作ったことが分かるもの。
例えば一部使い込んだ摩擦でつるんとした部分がある古家具。
例えば、絵の具の固まったパレット。
例えば、使いやすいように紐をつける等、過去の誰かの工夫が見て取れるもの。
作り手側でも、使い手側でも。
その人の歴史や熱意、はたまた感情が形になって残っているものに、浪漫を感じてわくわくしてしまいます。
どんな人が作ったのか、または使っていたのかを考えて、それが今私の手元にあるということが嬉しいのです。
この先、例えば100年後に私の子孫の手に渡るのか。
はたまた今のように流れて、どこか知らない国の知らない言葉を話す人のもとに渡るのか・・。
私の手の跡がつくまで大切にして、これからも色々な誰かの手元を渡り続けてくれたらなと思います。