読書の秋ですね。
最近は電子書籍やamazonでワンクリックで本が買えるので、図書館へ行く機会が少なくなっています。
事実、行きたいなぁと思える図書館が近所に全然ありません。
特に市営の図書館ともなると、不潔な匂いを漂わせる人の溜まり場、家具もお決まりの黄色っぽい木製椅子、なんの色気もない蛍光灯、ちょっとしたおしゃべりも許されないような雰囲気...
みたいなネガティブなイメージしか湧きません。
図書館ってもはや何のためにあるのでしょうか?
そんな疑問に答えをくれる図書館を過去に一度だけ体験したことがあります。
OMAが設計した、 「Seattle Public Library」 です。
この図書館に来てまず驚くのが、この大空間です。
ちょっと過剰なんじゃないかと思えるくらいの大空間ですが、空間が大きく、外皮の透明性があるからこそ、図書館というよりは公園のような自由さを感じることができます。
実際に、この場所にいる人々は、本を読むことに限らず、編み物をしたり、何やら絵を描いたりしている人までいました。
中には、日本の市営図書館のように不潔な匂いを漂わせる人もいたのですが、大空間だからかそんなに気になりませんでした。
この空間にはカフェ屋台もあります。さすがシアトル。
そりゃ本を読んでたら、コーヒー飲みたくなりますよね。
個人的にはコーヒーの飲めない図書館なんて不要だと思います。
ちなみに、この空間には「Living Room」という名前がつけられています。
まさに、市民のためのリビングルームという感じの、リラックスできる空間でした。
次に、Book Spiral と呼ばれる開架書庫スペース。
この書架の仕組みは非常に画期的です。
書架空間が一筆書きで繋がっているので、突然ある分野の蔵書が増えたときにも、階を隔てることなく配置が可能です。
例えば、IT系やビジネス系の分野の本の増加が著しい場合、簡単にその分野の書架を増やすことができます。
スパイラルの間にはショートカットの階段も用意されているので、ある分野からある分野への移動もスムーズに行うことが可能です。
予想のつきにくい社会だからこそ、変化に対応しやすい仕組みを、建築によって体現しているところが画期的だと思いました。
Book Spiral から、さらに登ると Reading Room に出ます。
室内なのに、隣のビルの影が落ちて来たり、見上げると空が見えたり、まるで屋上庭園のような感じです。
あまりの心地よさに1時間くらい昼寝をしてしまいました。
こんな素晴らしい図書館が近くにあったら毎日でも通いたいですが、なかなかそれは難しそうです。
しかし、少なくとも、「居心地の良さ・読書だけに限らない活動への寛容さ」みたいなものを備えないと、
どんどん図書館が不要になる時代に突入してきていると思います。
あともう一つ、T-siteのような書店には不可能な、図書館ならではの役割になりうると思うのは、
売れる・売れないに関わらず、古くても良い本を書架に並べるキュレーション的な側面にあると思います。
T-siteのような書店では売れない本は、どんどん行き場を失って行きますが、
古い本・売れない本でも良い本を受け入れられるのが図書館です。
まとめると、
Seattle Public Libraryの素晴らしさは、何と言っても「空間の寛容さ」にあると思います。
不潔な匂い、編み物、お絵かき、お昼寝、おしゃべり、コーヒーをも受け入れる、寛容な図書館です。
そんな素晴らしい図書館を、自分の中で、「クサい図書館」と名付けようと思います。
「クサい図書館」を自分もいつか設計してみたいです。