少し前、堀商店さんのショールームに行って来ました。
堀商店さんは錠前や建具金物を中心に作っている、創業120年(明治23年設立)の老舗です。
スクラッチタイル張りの趣のある外観は、まさに老舗の佇まい。
建物内には、外が新橋のオフィス街であることを忘れてしまうような静寂な空間が広がっています。
目的は、現在入居者募集中の『宮前アパートメント』の門扉につけるドアハンドル探しです。
どんなドアハンドルが付いたかどうかは、実際に現地にお越し頂いた際に見てみて下さい。
堀商店の担当者さんとの打合せが終わり「さて会社に帰るか」という時にふと思い出したのは、
堀商店さんには予約をしないと見れない部屋があるとのこと。
ダメ元で「予約してないと見れないお部屋があるらしいですが、それってやっぱり予約しないと見れませんよね・・・?」
と恐る恐る訪ねたところ・・・。
「いいですよ〜」
と、なんともあっさり見せて頂くことができました。
建物の奥から階段を上がって案内して頂いたのは、『秘密の部屋』感満載の重そうな木製の扉の部屋。
その小部屋には、代々に渡り収集されな世界中の錠前やそれに関係するものが並んでいました。
まさに『錠前博物館』といったところです。
どこの国??というものから、簡易のもの、複雑なもの。これ鍵か??というようなものまで。
色々と解説付きで教えてもらいながら見て回る中、目についたのは机の上に並ぶ箱の数々。
「これ面白んですよ。昔の人が大切なものを保管していた箱なんですけどね、一見すると装飾なんですけど、ここをこうすると・・・・」
説明しながら、装飾の一部を針で刺すと、上のライオンがガコンッと外れて鍵が開きました。
「やってみますか?」というお言葉に甘えて・・。
面白い。なんだこれ面白い。
ということで興奮が抑えられなくなり、次々に「これは?」「これは?」と色々な箱を開けさせて頂きました。
中には、鍵穴と見せかけて実はそこは鍵穴ではなく、別の装飾の一部が鍵だったり。
社員さんが一度閉めてしまい、開け方が複雑すぎてその後開け方が分からなくなった開かずの箱があったり。
大切なものを入れていた箱というけれど、人が持ち運びできるくらいの大きさの箱なので
盗んで壊してしまえば中のものは簡単に取られてしまうような、そんな大きさの箱にこんな細工を施すことに意味があるのか。
ふとそんな考えもよぎりましたが、きっとこの箱の目的は、そんなことではいのかもしれません。
もっと芸術とか遊び心とか、伝統と職人の心とか。
なんかそんなものが詰まっているのだろうな、と思いました。
ふと子供の頃、箱根に家族旅行に行って買ってもらった寄木細工を思い出しました。
中に大切に入れていたのは100円貯金箱の鍵という俗っぽいものでしたが、
その箱は自分だけが知っている開け方でしか開けることができない『秘密の箱』というところにロマンを感じていた気がします。
今の時代、そんな錠前をつくれる職人さんはほぼいないそう。
理由は単純。
『仕事がないから』だそうです。
今時こだわった錠前を特注する人がどれくらいこの世の中にいるでしょうか?
家の鍵を無くしたら、電話一本で人が来て鍵を開けてくれる。
スペアキーが欲しいなと思ったら、街中で20分かそこらで鍵が出来上がる。
そんな時代が悪い訳ではないですが、なんだかすごくもったいないなとも思います。
堀商店さんでは、伝統的な手法を用いたハンドメイドによる少量生産にも対応しているそうですから、さすがです。
堀商店さんの『小さな博物館』。
とてもおすすめです。
ぜひ予約をして行って見て下さいね。