昨年末、はじめての担当物件が竣工しましたのでご紹介させてください。
お施主さまは、90歳を超えても元気にお過ごしのお父さまとその娘さん。
一度は離れてそれぞれの暮らしを営んでいたお二人が、時を経てまたご一緒に住まわれるためのお住まいです。
32階建てのタワーマンションの26階に位置するこの物件。
最大の魅力は二面に渡るたくさんの大きな、気持ちのいい窓。
高層階なので、東京と神奈川が一望できます。
この贅沢な条件を活かすべく、間仕切りを取って二面採光の明るいリビングダイニングにすることを提案しました。
中央に配置したのはキッチンと造作のテーブル。
まるで親子のような大小二つのテーブルは、つなげれば大きなダイニングテーブルに。
ご家族が集まって囲む大きな食卓として、また娘さんの趣味仲間が集まってカルトナージュ教室を開くときには作業台として。
親テーブルはお父さまと娘さんのお二人で食事するのにちょうどいいサイズ。
子テーブルを移動させればキッチンを延長させたような作業台にもなります。
この親子テーブルの脚に取り付けられたキャスター。
日本のキャスター界を牽引する会社、ハンマーキャスターさんのこだわりが詰まっているんです。
メイドインジャパンで一つ一つ、アルミを削り出して作られています。
ただそこにあるだけでかっこいい!
動く姿も美しい!
いつもはわき役気味なキャスターですが、見惚れてしまうほど美しいこのキャスターはテーブルの主役にもなるんです。
造作でつくったキッチンにもこだわりが詰まっています。
このお家の主役。開放的なアイランドキッチン。
何をどこに仕舞いたいか、たくさんたくさん話し合いました。
よく見渡せる分、いつだってきれいに保ちたい。
そんな娘さんの想いから、大きいシンクの横に小さなセカンドシンクをデザイン。
洗剤やスポンジをすっきり収納したり、生ゴミ用のゴミ箱にはステンレスのフタを付けて隠せるように。
家で料理をするとき、生ゴミの行き場って困ります。
三角コーナーを置いたらシンクが狭くなるし、作業台に出しておくのは見た目的にも衛生面でも気になる。
そんな悩みを解決してくれるセカンドシンクをデザインできるのは、造作キッチンの魅力です。
キッチンの横にはお父さまのお部屋につながるスチールサッシ。
同じ部屋で過ごさなくてもお互いの気配を感じられる、ほどよい距離感。
そしてキッチン背面の飾り棚の横の通路は、
大容量のパントリーにつながっていて、キッチンとパントリーは通り抜けられるので
ぐるぐる回遊できる動線になっています。
皆さん勉強家で、たくさんの本や資料をお持ちのお施主さまご一家。
リビングにはその本たちをすっきり収納できるよう、壁一面に大容量の本棚を。
全ての収納に扉を付けてラインを通すことで、閉じれば一枚の壁のようにすっきり。
中段のニッチには間接照明を仕込んで、いつでも眺めていたい"お気に入りたち"を飾ります。
2メートル以上あるリッチな洗面カウンターと、水色に塗装したアーチ開口の先にはランドリールーム。
カウンターにダストシュートをつけたり、
カウンターの下に引き出し式のランドリーバスケットを計画したり、
ミラーキャビネットの中には下から引き出せるティッシュボックスを造作したりと
家事や暮らしが楽になる細かい配慮やこだわりが詰まっています。
娘さんのお部屋には愛猫ちゃん用のキャットウォークを造作。
踏み板の一部を透明のアクリル板でつくり、
キャットウォークでくつろぐ愛猫ちゃんの肉球を下から拝める、
猫好きにとってはたまらない空間です。
猫ちゃんが気に入ってくれるといいのですが。。。
娘さんが選ばれた陶器のつまみ。
コロンとしたフォルムと陶器の質感がいい味出してます。
お施主さまのひ孫さんも無垢のフローリングが気持ちいいようで
きゃっきゃと走り回ったりゴロンと横になったり。
広いリビングにちょこんと正座する姿がたまらなく可愛くて思わず撮影。
振り返るとブルースタジオを見つけてご依頼をくださったのは、
お施主さまのお孫さまで、娘さんのお子さまにあたる方。
「祖父と母が前向きに、家づくりを楽しいと思えるような提案をしてください。」
この一言から、お施主さまご家族と私たちのお付き合いが始まり
家づくりを楽しんでいただくことは、私たちにとって重要なテーマでもありました。
お引渡しの日、娘さんから不意にいただいた言葉。
「家づくり、本当に楽しかったわ。ありがとう。」
はじめてお会いした夏の日に受け取ったお孫さまの想いと
たくさんの打合せを重ねた日々、作り手の工務店さんの想い、
すべてがつながり形になったこの空間で、とびきり嬉しい言葉をいただいて、想いが溢れ。
思わずパントリーに駆け込んでこっそり涙をぬぐったのはここだけの話です。
昨年末にお引渡しをしましたが、お付き合いはここからスタート。
暖かくなった頃、お気に入りと思い出が詰まった姿を撮影しに行くのを楽しみに。
ごきげんよう。