お盆休みに実家に帰り、祖父に箒づくりを教わりました。
なぜ祖父が箒をつくれるかというと、曾祖父の代までうちの実家は箒作りを生業としていたからです。
僕の実家の界隈では未だに屋号が残っていますが、うちは「ほうきや」と呼ばれます。
祖父は住み込みで働いていた職人さんの仕事を見て、箒づくりを覚えたそうです。
今や、ルンバが勝手に掃除をしてくれる時代で、箒なんて学校くらいでしか見かけなくなりました。
それでも箒づくりを学びたいと思ったのは、掃除機が主流になっているからこそ、
実は手で箒をつくる技術が残る家はそうそう無いのではないか!と気がつき、
自分の家のルーツである箒づくりに大きな価値を感じるようになったからです。
意気揚々と実家に帰り、祖父に箒づくりを頼みました。
しかし、「そう簡単にできはできないよ」とあっけなく断られてしまいました。
めげずに次の日も、その次の日も頼んで、ようやく教えてくれることになりました。
祖父曰く、箒職人になるには本来3-4年ほど住み込みで修行をして技術を身に付けるそうです。
たしかに3-4年も修行が必要な技術をいきなり教えてくれ!なんて箒づくりをなめているかもしれませんが、
どうしても箒が習いたかったのです。
さあ、いよいよ箒づくりです。
家の裏手にある物置きの一階が祖父の作業場なので、
まずは箒草をやわらかくするための下準備をして祖父を母屋に呼びに行きます。
祖父の箒をつくる手つきを見て、素人が真似出来るものではないことはすぐに分かりました。
これは習得に時間がかかりそう。
それでもひとつひとつの動きを理解しようと、じっと祖父の手を見ていました。
箒をつくっているうちに、祖父は昔話を始めました。
戦争中に満州へ行ったこと。園芸・養豚・畑作・稲作、様々な仕事をしたこと。共に一生懸命働いた祖母のこと。
僕も祖父もおしゃべりではないので、普段会話することはあまり無かったのですが、
箒をつくっているときは自然と話ができました。
そうこうしているうちに、あっという間に箒が完成しました。
箒を普段まじまじと見ることはありませんでしたが、
箒草には色のついた糸が細やかに編み込まれていて、とても美しいと感じました。
すると、祖父から「自分でつくってみろ」と言われました。
僕も見よう見まねで途中までつくったところ、「これじゃダメだ」と途中まで編んだ箒をバラされ、
その材料を使って祖父はもう一本の箒をさっと作り上げました。
やはり1日で箒の技術は身に付かず、祖父のつくったほうきを1本もらって家に持ち帰りました。
それからすっかり箒派になった僕は、毎朝出かける前に部屋を掃きます。
たしかに掃除機は便利だけど、箒は軽いし静かなので、落ち着いた朝のひとときを過ごせます。
広い部屋を箒で掃くのは一苦労ですが、僕の部屋は狭いので箒のほうが気軽で便利です。
今度帰ったら、祖父に「箒って意外と便利だね!」と伝えたいです。
そして、箒づくりと昔話の続きをしてもらおうと思います。