こんにちは。
ささもとです。
前回に続き、最近読んだ本のご紹介です。
文字ばかり、というかほぼ文章です。
『同じ時のなかで』 スーザン・ソンタグ【Susan SONTAG】
本文プロフィールから抜粋して著者をご紹介します。
・1933年生まれ。批評家・作家。米国で最も精力的な知的営為を続けた批評家のひとり。2004年歿。
・ポーランドとリトアニア出身のユダヤ人の血統をもつ三世のアメリカ人として、ヒトラーが政権を握る二週間前に生まれました。〜〜〜幼少時代を通してドイツに取り憑かれていました。ドイツの怪物性、そして、大好きだったドイツの本と音楽に。
著者の生涯最後の数年に精力的に書かれた著述と講演がまとめられた一冊です。
翻訳は木幡和枝【こばた・かずえ】さん。
オランダで僕と同じ職(建物の企画・設計)に就く友人から薦められて読み始めたのですが、夜な夜な、電車移動中、時間がみつかるたび読みふけりました。
僕が要約するよりも、[章立て]や本文からの[抜粋]の方が少しでも魅力が伝わると感じるのでそのようなご紹介の仕方にて。
[章立て]
美についての議論
一九二六年ーパステルナーク、ツヴァターエヴァ、リルケ
ドストエフスキーの愛し方
二重の宿命ーアンナ・バンティ「アルテミジア」について
消し尽くされぬものーヴィクトル・セルジュをめぐって
異郷ーハルドール・ラクスネス「極北の秘教」について
9.11.01
数週間後
一年後
写真ー小研究
他者の拷問への眼差し
言葉たちの良心ーエルサレム賞スピーチ
インドさながらの世界ー文学の翻訳について(聖ヒエロニムス記念講演)
勇気と抵抗についてーオスカル・ロメロ賞基調講演
文学は自由そのものであるー平和賞受賞記念講演
同じ時のなかでー小説家と倫理探求(第一回ナディン・ゴーディマー記念講演)
[抜粋]
「何かを褒めるにしても、美しいと言う代わりに、「面白い」という表現を使うほうが、もっとずっと開かれた態度をとっているとみなされるようになった。」「価値基準として「面白い」を使う。」(「美についての議論」より)
「コスチャはきわめて感情的で、しかも彼の無動機の行為は、自分には忠実でも非合理的な行為だ。ソ連体制の不正に対する彼の自覚が、彼をとおして行動に出た。」(「消し尽くされぬもの」より)
「アメリカは強い、誰もそれを疑ってはいない。だが、アメリカのあるべき姿は、それがすべてではない」(「9.11.01」より)
「一つ目は、これは「奇襲」によって始められた戦争だ、〜二つ目は、〜かたや生産的、自由、寛容、非宗教的で、かたや逆光的、頑迷、復讐的な、競合する文明の抗争だ、というもの。 明らかに、私はこれらの安っぽい危険なモデル、その両方に反対です。」(「数週間後」より)
「問いただしたいのは、疑似戦争の疑似宣言だ。今述べた必要な行動を「戦争」と呼ぶべきではない。終わりのない戦争はない。〜国家が、勢力拡大のために何度も宣言を行っている。それがまかり通っている。」(「一年後」より)
「もし真実と正義のどちらかを選ばざるをえないとしたら、ーもちろん、片方だけを選ぶのは本意ではないがー真実を選ぶ。」(「言葉たちの良心」より)
「カントが書いた難解な記述と格闘したあげく、その人物には、これ全部を完結に言うことができる、とひらめいたのだ。いわく、「あらゆることがいっぺんに起こらないために、時間は存在する・・・あらゆることがすべて一人の人の身に起こらないために、空間は存在する。」」(「同じ時のなかで」より)
「「現実を単純化して、叡智を蔑視したがる傾向」を嘆いている。」(訳者あとがきより)
抜粋に向かない小研究の写真論や翻訳論でも、考えさせられることが多々ありました。
感性と知性の同居。貪欲さ。
内容だけでなく、真摯であること。言葉や表現に向き合うこと。向上心を持ち続けることなど、ひしひしと伝わってくる良書です。
美しい寺社や美術館建築にはビラや余分な看板などはほとんど必要ないのだそうです。そこに居ると緊張感と共に心地よく過ごすことができる。経験したことのある感覚だと思います。
それと似たような感覚で読むことのできる一冊でした。
(笹)