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老いの美学

ユウキ


ユウキです。
9月20日は敬老の日でした。
このブログをご覧になっている皆さんは老後のことを考えるにはまだ早いかと思いますが、老いについて書かれたオススメの本をいくつか紹介します。


まずは僕が愛してやまない谷崎潤一郎の「瘋癲老人日記」。
かなり屈折した形で多くの女性を愛し続けた谷崎。
ここでも体力は衰え、高血圧と闘いながらも息子の嫁(特に足!)に媚び振り回される様子が日記という形で描かれています。
老いてもなお本能に逆らわない、性と死が背中合わせの生き様がステキです。
全文カタカナで読みにくいかもですが、慣れると楽しく読めます。
一緒に収録されている「鍵」も同じく日記形式の小説ですが、これまた超ディープな変態ワールドで傑作です。

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続いて川端康成の「眠れる美女」。
ノーベル文学賞を受賞した日本を代表する作家ですが、彼も女性を愛し続けた男。
この小説の舞台は海辺の小さな宿。
でもそこは、男ではなくなった老人しか泊まることができない。
そしてベッドには深く眠らされた裸の若い女が...
理性と本能の狭間で揺れ動く主人公の葛藤。
いつまで経っても男はオトコなのでしょうか。

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そして室生犀星の「蜜のあわれ」。
初老の「おじさま」と赤い三年子の金魚(!)の不思議な恋物語。
「あたい」は大好きなおじさまのお世話をしながらも、手のひらの上で転がしているようなところも。
「おじさま」もまんざらでもない様子で相手をしている。
この小説は全編セリフのみ。
しかも金魚が若い女性になったり、ゆうれいが出てきたり、何もかもが不思議ワールド。
超現実的な和製SFです。

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これらは「老いの三部作」として有名ですが、もう1冊。

谷川俊太郎の「ひとり暮らし」。
現代詩人として有名な方ですが、これは彼のエッセイ集です。
後半の「ある日」という章は、老いの日々を綴った日記。
詩人という特殊な職業でありながら普通の人であり続けた彼の言葉は、やはり詩人という視点のためか独特の深い洞察力があり、年を積み重ねることの楽しさを感じさせてくれます。
「あとがき」までらしさ全開で、気持ちいい読後感でオススメ。

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これらの本を読むと、年を積み重ねるからと言って偉くなるわけでもなく、いつまでも自然体でいていいんだと思えます。
老いる前にぜひ読んでみて下さい。


<ユウキ>





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