こんにちは、blue studioのノリです。
先日、「阿片王 満州の夜と霧/佐野眞一(新潮社)」を読み終えました。
存在していた事自体がフィクションのような国家、満州国をノンフィクションに描いた佐野眞一の本です
ストーリーは、阿片王と言われた里見甫(サトミ ハジメ)を
取巻く人々を描きながら、里見甫という人物像をあぶり出す内容となっています。
彼は、阿片密売の総元締として、中国で暗躍した地下組織「青幇」や「紅幇」と連携し、国民党、関東軍の裏金をつくり出していた人物として記されています。関東軍と結託はしていますが、思想は右でも左でもなく、その上、私欲は肥やさず飄々とした人物であることが読み取れます。
電通が今のような広告会社になったきっかけを作った一人であるとも言われ、東条英機や岸信介ともつながりがあったような記述もあります。結局のところは夜霧のような謎に包まれた主人公です。
書評では賛否両論ありますが、膨大な情報量から組上げられる内容は読んでいて飽きが来ず、思わず夜更かししてしまいます。ご興味がある方は是非一読下さい。
ノンフィクション作家として有名な佐野眞一ですが、彼がノンフィクション作品をつくる際に座右の銘としている言葉があとがきで紹介されています。
「私は捕虫網を使わない。素手で蝶々をつかまえる」
フランスの映画批評家であり、ヌーヴェルヴァーグの精神的父親とも称される
アンドレ・バザンの言葉です。
筆者は、固定概念や先入観という捕虫網を使わずに、誰の胸にも突き刺さる「小文字」だけで対象とするモノを等身大に描きたいと言っています。
つくりあげるモノは違えど、
ものづくりに携わる人間として、身にしみる言葉です。
<ノリ>