ケイジです。
秋晴れのある日、家族で川崎市の生田緑地にある日本民家園にでかけました。
[日本民家園HP]
ここには、緑地の中に20棟以上の日本各地から移築した古い民家の建物が点在しています。
積雪の多い地域の民家は屋根の勾配がきつく養蚕用の階がある3階建てになっていたり、海辺の網元の民家は土間が広かったり、宿場の建物があったりと、様々なタイプの個性的な民家に入ることができます。
また建物本体だけでなく、垣根や柵・階段等散策路まわりも可能な限り現代的なものを排してあり、昔の風景を再現しようとかなり努力して作り込まれているので、ちょっとしたタイムスリップ感覚を体験できます。
なかでも印象的だったのが、室内で感じる光です。
日本建築の中でも書院造り等は柱と梁で大きな開口部が庭に面していたりして、どちらかというと開放的な造りのイメージがありますが、民家の建物は開口部が少なく、室内はかなり暗い空間です。
実際には見学用に最低限の照明が設置されていますが、壁や床の木材はすべて黒ずんでおり、室内は薄暗く保たれています。かつては夜はろうそくと囲炉裏の火、昼は小さな窓から入る外光だけで生活していたものと考えると、現代の住宅で感じるのとは全く違う感覚で、当時の人は光を見ていたのではないかと思われます。
ある人が、たとえば蛍光灯のような均質な光を受ていると、室内のどこにいても同じような存在感をもって知覚されますが、民家の中では、外からの光の届くところにいる時と光の届かない奥の方にいる時とでその人の存在の濃度が全く変わるように感じられます。また、暗い内部から眺めた窓から見える外の緑は、いつもよりみずみずしく輝いているように見えました。
秋の名月の日が近かったので、縁側に沿って月見のお供えが置かれていました。月見団子、すすき、芋、柿、お酒等が設えられていました。電球も街灯もなくろうそくしかない時代に座敷からみる満月の光は、お供えをしたくなる程美しかったのだろうと想像すると、昔の人が少しうらやましくなりました。
・・・と、オトウチャンは久々に建築史オタク的な感慨にひたっていましたが、子供たちにとっては、ちょっと変わった散歩程度のものだったのかも知れません。
ともあれ、合掌造りの民家の中で食べた蕎麦は彼らにも満足の味だったようです。
ケイジ