映画に学べ!
こだわりの舞台裏。
5、6年前だが、黒澤スタジオの見学に行ったことがある。
東京近郊の住宅地の幹線道路沿いにある映画『乱』のために作られたスタジオ。
大船松竹のスタジオの天井高が低く、セットが入らず急遽、建てたものだそうだが、
その後、この建物をどう扱ったらいいか?久しく困っているという相談を受け、物件を見学させていただいたことがある。
建物はどういうことはないが、撮影でのエピソードや、木で組まれたスタジオ照明セット、高い天井の空間が印象的だった。確か、このときは大型クルーザーをCM撮影していた。
映画の世界の舞台裏は各監督の組によって異なるそうで、『イマドキ、こんなことしないんですけれど...』と言っていた。
紛失してしまい、写真でお見せできないのが残念。
強い眼差し
今年は市川雷蔵が亡くなって40年になる。毎年、京都太秦で夏に映画祭が開かれる。
殺陣でのローアングルの迫力のあるカメラワークは監督/三隅研次の真骨頂。
ちなみに三隅研次は勝新太郎の「座頭市」シリーズでも有名。
もう一人のローアングル映画と言えば監督/小津安二郎。
こちらはだいぶ時の流れがゆるい。
定点観測のように固定された時を捉える空間は世界的に与えた影響も大きい。
小津さんのお墓は北鎌倉の円覚寺にある。
映画を創ってきた彼の墓石にはただひとこと『無』。
時を忘れる構成
鎌倉で撮られた監督/鈴木清順の映画『ツィゴイネルワイゼン』。
鈴木清順は日活での興業成績が悪く、解雇され、TVドラマからアニメーションなど手がけた。
結局10年間、銀幕界で失業状態だった。
その後インディ配給で代表作『ツィゴイネルワイゼン』を生む。
これをを見るといつも時が歪む気がする。現在では世界的に鈴木清順の評価は高い。
鈴木清順の日活時代の仲間で『TV版 ルパン三世』を送りだした監督/大和屋竺。
ロマンポルノからアニメまで幅広く手がけた。ルパン三世『バラとピストル』は彼の作品。
ドライな次元のラブストーリー。30分とは思えない、映画の如く組まれたストーリーは今でも秀逸。
強い情熱
インディペンデント映画の父、ジョン・カサベテス。
今年は彼の生誕70年、没後20年。そんな節目の年。
カサベテスの映画はどれも良いが、以前、劇場で観たピーター・フォーク、ジーナ・ローランズの共演の『こわれゆく女(A Woman Under the Influence)』
1975 は私にとって生涯忘れないだろう一本。
最後に彼の初監督作品 『アメリカの影』1959を振りかえった際の言葉を。
商業的な配給にしようなんて事は思わなかった。
『アメリカの影』 は全面的にひとつの実験であり、主たる目的はただ学ぶという事にあった。
役者たちは自分に対する仕事の報酬を受け取らなかったし、技術者たちも何も要求しなかった。
それは情熱だった。 僕たちは自分たちがしたいことをするという楽しみのために働いていた。
どっちにせよ、バカげた事に使う小銭を稼ぐよりも、創造的な仕事をする事の方が重要だ。
モノづくりは、こうでありたい... INO