Magazine


涼感文学のすすめ

手が2本、脚が2本伸びており、着物と間食をこよなく愛する。 主食はグミ。好きなおやつは雪の宿。豪快に笑う習性をもつ。


都です。
日増しに太陽の光が眩しく感じられるようになってきました。
もうすぐ夏も来てしまいますね...。皆さんは涼しくなりたい時、どう過ごしますか?

私は暑くなると、過ごし易い夜更けを長く楽しみたくなります。
そんな時、自宅でじっと読書するのが好き。
だからついつい夜更かししてしまうんです。

そんなこんなで文学的な気分なので、お気に入りの小説から、
今回は蒸し暑さを払拭すべく?
ちょっとヒヤっとする、怪しくも五感に刺激的な小説をセレクトしてみました。
楽しんで頂ければ幸いです。

sg150512_02.jpg

みずうみ / 川端康成

美しい少女を見るとどうしても後を着けたくなってしまうという主人公が描かれた
現代で言うストーカーのはしりなのでは...と思える変わった小説です。
この主人公のストーキングの手口がとてもエキセントリック。
道端の側溝に隠れるんですよ...。笑
側溝に身体をうずめて、鼻の下を伸ばし美少女の到着を今か今かと待つ主人公...。
ふと、目の高さに咲いていた美しいすみれの花に気づきます。
ハッと我に返るのか...と思いきや、
視界の邪魔だ!と、むしゃむしゃと食べてしまいます。
す、すごい...。

sg150512_03.jpg

片腕 / 川端康成

「片腕を一晩お貸ししてもいいわ。」と娘は言った。―
という書き出しで始まり、若い娘からその片腕を一晩借りる男の寓話です。
男は娘の腕を連れ帰り、誰かに見つかりやしないか...
電車やバスで帰ったら誰かに怪しまれちゃうかも...歩いて帰ろうかな...
などとドキドキしながら、やっとのことで自分のアパートに連れ帰り
片腕との秘密めいたお喋りを楽しむ。

...おっとっと、冒頭から何とも怪しい設定ですが、実は美しい描写が印象的な短編です。
娘の腕の暖かさや、円み、爪の形、とくとくと波打つ脈の音
男の部屋に立ち籠める泰山木の強い香り。
五感が刺激される秀逸な作品です。

sg150512_04.jpg

薬指の標本 / 小川洋子

小川さんの小説はそのヒンヤリとした文体がどれも好きです。
一番のお気に入りは「博士が書いた数式」「猫を抱いて象と泳ぐ」。

ですが...よりヒンヤリ感を求めるなら、こちら。
「標本室」で働いている女性が、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされます。
「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」
靴はあまりにも彼女の足にぴったりで...。

...ほら、なにやらあやしい始まりですよね...。
私は作中に登場するふたりのデートシーンがとても好きです。
茹だるような夏の暑い日にふたりは古い建物の共同浴場で待ち合わせをするのですが、
暑さと対比的な、冷たいタイルの感触、ひっそりと静まった風呂場の空気。
まるで自分が体験しているように、文体から鮮やかに感じられるのです。

-----

巷には涼感を求めて、様々な商品が店頭に並んできましたね。
こんな感覚的な納涼を味わっては如何でしょう。
ちょっとヘンテコなものばかりでごめんなさい 笑





Rent / Sale

Magazine

Portfolio