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【イベントレポート】ブルースタジオ 社内勉強会(ヘルベチカデザイン 佐藤哲也さん)

- Event

ヘルベチカデザイン代表の佐藤哲也氏にブルースタジオスタッフに向けて講演をいただきました。
ヘルベチカデザインは、福島県郡山市を拠点とし、「本質に眠る本当の価値をデザインによって引き出していく」を理念としているグラフィックデザイン事務所です。代表の佐藤氏は、ブルースタジオが携わっている福島県白河市のリノベーションまちづくり事業のユニットマスターとしても活躍されています。グラフィックデザインからまちの人々の意識を変えていくプロセスや仕事をする上で大切にしていることについて伺いました。

▼ イベント詳細
2022年2⽉21⽇ 17:00〜19:00/ ZOOM 開催
17:00〜18:30 レクチャータイム|佐藤氏
18:30〜19:00 チャット欄質疑応答タイム|佐藤氏+bs スタッフ

<登壇者の紹介>
登壇者: 佐藤哲也(さとう てつや)⽒
1974年福島県生まれ。法政大学経済学部経済学科卒業。ヘルベチカデザイン株式会社 代表取締役。商品開発や地域ブランディング、プロジェクトなど実績多数。2018年、2019年グッドデザイン賞受賞。FUKUSHIMAデザインコンペティション最優秀賞(白河だるま)、金賞(ラヂウム玉子)。一般社団法人ブルーバード 代表理事。公益社団法人日本グラフィックデザイナー協会 福島地区 代表理事。福島学院大学短期大学部情報ビジネスデザイン学科 講師。

▼ 講演した内容
<地域の解像度を上げる>
佐藤氏は福島県須賀川市出身。2011年の東日本大震災がきっかけとなり、同年8月1日郡山を拠点にヘルベチカデザインを設立。当初は佐藤氏を含め2名のスタッフだったが、現在では20名ほどのスタッフとグラフィックデザインを中心とした商品開発や地域ブランディング、「ブルーバードアパートメント」の運営など、地域とデザインを結ぶ様々なプロジェクトを手掛けている。佐藤氏はデザインの仕事を通じて、福島の食文化の魅力を再発見したことで、第一次産業にデザインの視点を入れ、自分達の地域の解像度を上げていきたいと考えた。その上であえて自分達のカラーを取り払ったデザインを行う。「自分達のグラフィックのテイストはなく、地域に合わせて考える。グラフィックだけでなく、どうコミュニケーションをもたらすかという視点」を大切にしている。

<つづきをつくる>
福島県飯坂温泉にある「阿部留商店」からWEBデザインと名物「ラヂウム玉子」のパッケージのリニューアルを依頼された。クライアントは包装紙の新しいデザインを希望していたが、デザイナーによる余計な要素を加えない、「阿部留商店」のアイデンティティーを守るリデザインを試みた。「販売当初から続くレトロな包装紙や、店構えは、時代の積み重ねでできた奇跡みたいなデザイン。十分に気をつけないと景観を崩してしまう。おもしろさをどう残すか。偶然の賜物」を大事にしていきたかった。
その結果、数種類あったお店のロゴを1つに統一し、元々の包装紙の柄のバランスを整え、包装の手間を一部省くために、包装紙のデザインを用いたお店の紙袋を新しく作成した。デザインを変えたり変えなかったり、バランスを整えていくことで、店のアイデンティティーが可視化される。店主のプライドが高まっていくプロセスこそが、これからの未来の「つづきをつくる」ことにつながる。

<グラフィックデザイナーが街づくりしている話>
デザイナーという職業について、まちのどこにいるかわからない不明瞭な役割と考えていた。ヘルベチカデザインが郡山を拠点にする意味とは「活動そのものが地域のシンボルとなるような価値を生み出す」ことと考え、地域が地域らしく生き抜くための機能を生み出していきたいと思った。そこで築45年のビルをフルリノベーションして、「ブルーバードアパートメント」をオープン。1階は住人と地域の人々が交流できるまちの喫茶室(カフェ)が入り、上階にはシェアオフィスとイベントスペースとなっている。自分たちでないとできないことこそが、地域の「価値」となっていく。

▼チャット欄質疑応答タイム

Q1.クライアントはデザインを大きく変えてほしいから、デザイン事務所に依頼すると思います。そこをあえて変えないようにデザインしていく上で大変だったことはありますか。
A1.「変えたくないので相談させてください」という依頼が最近は多いです。均質化されていることに危機感を抱いている企業が多いからだと思います。

Q2.クライアントは「ラヂウム玉子」の赤、黄色、青の包装紙の色を変えたかったということでしたが、どうコミュニケーションをされたのですか。
A2.まずはどうして変えたいのかという理由をクライアントに尋ねます。今回はその課題に対する解決方法が色でなかったため、包装紙の色を変えないという結論に至りました。

Q3.まちの地域性に気づくためにアンテナを張っていることや気をつけていることはありますでしょうか。
A3.いつも通り生活をすると、地域の文化が見えてきます。自分がそこに馴染むために何をしていくかを考えています。日々ありのまま、人と接していく。デザインで何かを解決できるとは思っていません。自分の暮らしと現地の暮らしを比較することもしています。

Q4.広告や宣伝についてはどう考えられているのですか。
A4.ポテンシャルがないものを宣伝しても意味がないと考えています。ポテンシャルとは、「自分自身が、その商品やことがらの一番のファンになっているか」がとても大事です。
自分達が好きなことをやり続けることが、未来へと続き、商品そのものがじわじわ売れていくことにつながります。

Q5.クライアントとコミュニケーションをとる上で大切にされていることを教えてください。
A5.まずはご相談いただいたお仕事を受けられるかを考えます。その際に私たちが大切にしているプロセスのお話や、「できるのはこういう領域です」と説明いたします。そうすることで、クライアントとプロセスを共有することができ最終成果物に対する認識にズレがなくなります。

Q6.事業継承についての相談はありますか。
A6.事業継承の課題については、携わっている仕事と結果的に関係しています。依頼されるプロジェクトについては最終的にどういうフェーズになるか、年数を区切って考えるようにしています。グラフィックデザインが入り口ですが、最終的には事業継承などの問題を解決していけたらと思います。

▼ 感想
レポートでご紹介した「阿部留商店」さんの事例以外にもデザインによって、地域と人々がつながる様々な事例を教えていただきました。「なにを変えて、何を変えないのか」この判断がとても難しいところだと感じました。佐藤さんはデザインを行う上でまず、観察に時間をかけ、その地域に1週間ほど寝泊まりをして、地域に入り込んでいくところから始められるそうです。そうすることで現状を捉え、見過ごされていたクライアントのポテンシャルが明確になっていくのだと思いました。ブルースタジオでは地域の人々がプライドを持った当事者となるような「場」のデザインを行っていますが、グラフィックデザインからまちをつくるプロセスを伺い、大変勉強になりました。佐藤さん、ありがとうございました。

▼ 関連情報ほか
ヘルベチカデザイン株式会社のHPはこちら https://helvetica-design.co.jp/
ブルーバードアパートメントのHPはこちら https://bluba.jp/





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