News



【イベントレポート】ブルースタジオ 社内勉強会(スタジオ伝伝 藤沢百合さん)

- Event

株式会社スタジオ伝伝の代表である藤沢百合氏にブルースタジオスタッフに向けて講演をいただきました。藤沢さんは以前ブルースタジオで4年ほど働かれていました。その後「株式会社スタジオ伝伝」を設立し、独立。現在は郡上八幡と東京でオフィスを構え、二拠点生活をされています。藤沢さんに町家を中心とした伝統建築の良さや、移住先で地域に溶け込み仕事を広げていくプロセス、姿勢などを伺いました。

▼ イベント詳細
2022年5月23⽇ 17:00〜19:00/ ZOOM 開催
17:00〜18:30 レクチャータイム|藤沢氏
18:30〜19:00 チャット欄質疑応答タイム|藤沢氏+bs スタッフ
<登壇者の紹介>
登壇者:藤沢 百合(ふじさわ・ゆり)氏
株式会社スタジオ伝伝代表
1975年岡山県岡山市生まれ。東京女子大学心理学科卒業後、東京の新築マンション分譲会社にて、不動産用地の仕入れ・販売を担当。工学院大学2部建築学科に編入。卒業後、ランドスケープ 事務所でアルバイトの後、株式会社ブルースタジオにて建築設計・不動産活用企画・賃貸媒介を担当。2014年「日本の伝統建築と生活文化を次世代に、世界に伝える」を目標に、株式会社スタジオ伝伝を設立。翌年より郡上八幡空き家対策プロジェクト「チームまちや」の活動に参加。2017年、スタジオ伝伝郡上八幡スタジオオープン。東京と岐阜の郡上八幡を中心に、設計・不動産・宿泊業の3本を柱に活動。2020年に、直営の町家の宿「Art & Hotel 木ノ離」(郡上市景観賞)をオープン。法政大学デザイン工学部大学院兼任講師・名古屋造形大学地域社会圏領域非常勤講師。


▼ 講演した内容

<仮説と実証の7年半>

スタジオ伝伝は「日本の伝統建築と生活文化を次世代に、世界に伝える」ことを理念として、2014年に設立。伝伝という会社名は「伝統建築と生活文化」を「伝える」から一文字ずつ取り、名付けられた。藤沢氏はかつて旅行して惚れ込んだ町、郡上八幡で空き家が増え、その対策を行う「チームまちや」へのスタッフ募集を偶然目にし、それがきっかけとなって、2015年に郡上八幡へ移住することとなった。郡上八幡は藤沢氏が目標としている「伝統建築を次世代に伝えていく」という考え方をすんなりと受け入れてくれ、2017年には町家の離れを事務所としたサテライトスタジオをオープンした。
現在、藤沢氏は郡上八幡と東京を行き来する二拠点生活をしている。両極にある2つの地域で生活をすることによって、これまでの常識が壊され、郡上八幡で得た経験を東京で活かすことができると藤沢氏は語る。
東京から郡上八幡に移住し、会社の目標である、日本の伝統建築を残す仕事を広げるために6つの仮説を立て、実証していったという。

 仮説1 日本の伝統建築を残し活用することが、日本人の所作や生活文化を残していくことにつながるのではないか
―日本建築特有の目線の高さがある。来訪したお客さんを室内から迎えると、日本家屋の段差から、お客さんを見下ろすことになるので、自然正座してお迎えする。すると今度はお客さんの方が目線が高くなるので、縁側に腰掛ける。そこで、同じ目線の高さになり、立ち話より少しだけ長く・深く話しをすることになる。結果、地域の人との距離が近づき、親密な関係性となる。三つ指をつく、という所作も、そんな段差のある日本家屋から自然に生まれた動作で、関係性の構築も、建築から生まれていることを実体験した。

 仮説2 営業活動をするのではなく、地域に根ざして生活という活動をすることが仕事につながるのではないか
―一方的、積極的に地域の人とコミュニケーションをするのではなく、普通の暮らしをすることが営業につながる。普通の暮らしとは、郡上八幡の水路の掃除をしたり、祭りの準備をしたりと地域の活動に参加して、生活をすること。まずは人柄を知ってもらい、その次に何をしている人なのかを聞かれる。ちょっとした相談に気軽に応えることで、仕事につながっていく。こうした地道に人間関係を築くことが大切。

 仮説3 ほどよい距離感が関係性の継続では大切では
―事務所のある町家の中庭を挟んだ母家と離れの間の7mの距離があり、それがちょうどいい関係性を育む。声が聞こえそうで聞こえない、気配だけを感じる距離感で、違う業種同士でもストレスなくそれぞれの仕事ができ、しかしひとつ屋根の下の仲間としての関係性が築けた。この町家から学んだ距離感を東京でのプロジェクト「欅の音terrace」に活かすことができた。

 仮説4 仲間がたくさんいることが移住定住・ナリワイの継続に大切では
―郡上八幡では徒歩10分以内に仲間(役者)がたくさんいる。近くに仲間がいることでセレンディピティが起こりやすい。それが仕事の循環や紹介のしあいを生み、結果商売(ナリワイ)を続けていくことができる。

 仮説5 あえて地場の不動産屋さん、町の電気屋さん的設計事務所を目指してみては
―まちの電気屋さんがなんでも屋さんなように、まちの人が気軽に相談してくれる設計事務所を目指していきたい。ネット社会の発達で便利な時代だが、地域との関わりがないと、なにをやっている会社か地域で知られない。その地域の中で知られる存在、相談しやすい存在になることが、いざという時に頼ってもらえる。

 仮説6 エゴは認めて公言することから、楽しいが始まるのでは?
―「私が楽しい」と思うことから仕事を始めていく。「みんなのため」を思うと、誰にも突き刺さらないつまらないものになってしまう。エゴがあるところにおもしろいことが起こると考えてみたいと思う。

藤沢氏は郡上八幡と東京の「欅の音terrace」でイベントを積極的に開催している。今後は運営担当がいなくても、まちや居住者同士が協力し合って、自主的に開催していける関係性づくりをしていきたいと語った。

<チャット欄質疑応答タイム>

Q1.「町家を世界に」とおっしゃっていましたが、世界に向けた発信などされているのでしょうか。
A1.世界に向けるための事業として「Art & Hotel 木ノ離」という宿を運営しています。世界の人に町家の良さを伝えるには、実際に日本建築にたたずんでもらうことが大切です。宿に泊ってもらうことで、感じた良さを世界に発信してもらいたいと思っています。海外の人が日本の良さを発信することで、その考えを逆輸入して、町家や日本建築を寒くて不便だからと壊すのではなく、再評価して存続していけるよう少しでも変えていきたいと思います。


Q2.原動力と今後の展望を教えてください。
A2.疑問に思ったことを試してみたい、というのが原動力です。また日本の和の文化が昔から好きだということもあります。今日お伝えしたような自分なりの仮説を立てて、実証を繰り返し、解決策を生み出しています。また展望については、郡上八幡で町家の活用・存続のために不動産事業を広げていきたいと考えています。


Q3.藤沢さんの思うベスト町家を教えてください。
A3.郡上市には7つの地域があります。その地域ごとで町家の姿は大きく異なります。ただ町家の中庭に倉庫やお風呂などを増築して中庭をなくしてしまったものがあります。そういった町家では減築を行うことで、本来の町家の良さである、風の通る中庭を再び作りたいと思っています。


Q4.仕事で大切にしていることを教えてください。
A4.常におもしろさを見つけるということです。「つまんない」ってなんだ?と思います。他の人がうらやましがるくらいに、事業をおもしろくさせることを目標にしています。ワクワクする気持ちを自分で作っていきたいと思っています。


Q5.地域の人とのコミュニケーションで気をつけていることはなんですか?
A5.相手のすごいところやいいところを褒めると、相手も自分に興味を持ってくれます。先入観を持たず、敬意を持って接するのが大切です。まずは人対人。その上で仕事があります。


▼ 感想
藤沢さんの「日本の伝統建築や文化の良さを伝えていきたい」という熱い思いが伝わりました。設計や不動産を軸にしつつも、境界を設けずにさまざまな仕事をされるパワフルな姿勢を見習いたいと思いました。ブルースタジオでも、境界をきっちりわけることをせず、1つのプロジェクトに様々な背景を持つスタッフが当事者となって関わっています。
講演を通して、自分の好きなことを大切にして、近くに仲間を広げていくことの大切さに気づかされました。藤沢さん、ありがとうございました。


▼ 関連情報ほか
・株式会社スタジオ伝伝のHPはこちら

・藤沢百合氏共著「小商い建築、まちを動かす!」の購入はこちら





Rent / Sale

Magazine

Portfolio