【イベントレポート】ブルースタジオオンライン保健室 vol.1
- イベント
"1 階づくりはまちづくり"を掲げる株式会社グランドレベル 田中元子氏にブルースタジオスタッフに向けて講演をいただきました。このようなコロナ禍の事態となり、わたしたちはますますその活動を活発に展開しなくてはならないことに気付かされました。なぜコミュニティなのか、なぜコミュニケーションなのか、それらはひとが創り出すことができるのか、そのために必要な要素とは何か。そしてわたしたちは、何を目的として活動しているのか。ということを講演していただき様々な意見を交わしました。
▼ イベント詳細
2⽉1⽇17:00〜18:30/ ZOOM 開催
17:00〜18:00 レクチャータイム|田中氏
18:00〜18:30 チャット欄質疑応答タイム|田中氏+bs スタッフ
<登壇者の紹介>
登壇者: 田中元子(たなかもとこ)⽒1975年茨城県生まれ。建築に関する執筆、企画編集の傍ら、ワークショップ「けんちく体操」、遊休地活用と新たなかたちの観光活動「アーバンキャンプ」、まちを自分の手で今すぐ変えるためのふるまい「パーソナル屋台」など、都市や建築への関⼼を喚起させるため、さまざまな活動を展開。著書に『マイパブリックとグランドレベル −今日からはじめるまちづくり−』(2017|晶文社)など。2016年〜株式会社グランドレベル代表取締役。2017 年〜墨田区千歳にて「喫茶ランドリー」企画運営。
▼ 講演した内容
<まちづくり>
グランドレベルは「1階づくりはまちづくり」を合言葉に誰もが触れる一階を拠点にまちづくりを図ろうと2016年に設立された。田中氏の思う理想の一階は「まちの人が生き生きと活動しているところが見える場所」だ。田中氏が2014年に神田で開催したURBAN CAMP TOKYO。そこで「受動的な消費をするような行動」よりも「能動的に何かを生産する行動」が参加者を生き生きさせると気づいた。いままでイベントやワークショップは参加者に決まった枠の中で活動するもの企画者として提案するものが多かった。しかし、参加者の中には自分のやりたいように、好きなように表現したいと思う人とのコミュニケーションを重ね「能動性を爆発できるきっかけをつくろう」と田中氏は決めた。
2016年グランドレベルを設立し「喫茶ランドリー」をブルースタジオと創り上げた。ここは私設公民館を目指し「老若男女が集まる場所、分け隔てなくこの空間を楽しみ、くつろぐ場所。そして来る人の能動性を発露させ、喫茶ランドリーの価値を訪れる人なりに見出してほしい」という思いがある。喫茶ランドリーの魅力はハード面(空間・環境的な豊かさ)やソフト面(サービス)の充実だけではなく「オルグウェア」だ。オルグウェアは物質では叶えられない人と人の間に生まれるコミュニケーションや繋がりだ。主婦の方のミシンウィークというイベントの受け入れや近所の在勤者の社内勉強会。どんなイベントもやりたいという声さえあれば認め合いできる空間となった。結果としてオープン半年で100件を超えるイベント、店内の装飾も行き交う人が設え実家のような温もりのある空間と化した。
田中氏はこの講義を通して「まちはみんなのもの。生き生きとした「個」の能動性がまちに表出ることでまちの風景を作る。今この社会は多様化が認められでは年齢関係なくスキルを発揮する。誰が何をしても驚かないことが当たり前。あなたが本当にやりたい事を実現する事がまちづくりだ」。と言い締めくくった。
<チャット欄質疑応答タイム>
Q1. 能動的にアクションしてくれそうな方々の共通点ありますでしょうか?!いい意味でお節介の方々がキーマンになるのかなと感じているのですがいかがでしょうか?
A1. 能動的にアクションを起こす人の共通点は最初は気後れしている人。実はスタッフの集め方が鍵になります。応募チラシの「明るくて、コミュニケーションが高い人!」に集まる人は期待していません。最初は気後れしているような人をくすぐると、その人の面白さを引き出すことができます。本人も気づいていない、その人の面白さに気づいてスカウトをする。
Q2. 元子さんが思う「素敵な人」とはどういう人でしょうか?
A2.どの面を取っても、いつでも素敵な人はいないです。人間だから、いつも明るい性格の人はいないし、いつも意地悪な人はいないです。その人自身がもつ"素敵さ"を出すことができる受け皿になるスタンスが大切なこと。これといった共通項はないですが、その人自身を受け入れる器になり、時にくすぐり、その人の持ち味を見つけることが重要であると思います。
Q3. 喫茶ランドリーを実践して一番実感したことは何でしょうか?
A3.「他人が飽きない」ということです。他人がどんなに偉くても偉くなくても、常に自分の想定外のことをしてくれます。他人と関わっているからこその思い通りにならず、予定不調和になる。それが成功であると最初に覚悟をしたからこそ吉と出たかなと思います。
Q4. 個の能動性が発露することが大事なことはわかります。では田中さんが考えるプロの役割とはどんなことでしょうか?
A4.「引き出すこと。器であること」をプロ意識として持っています。ボロボロでも高貴でもない、使われたいという器であることです。私設公民館としてみんなの手の届く器であること。人によってラーメンの味に好みがあるように常に器としてチューニングをし続けることがプロだと考えています。
Q5. 田中元子さんは何をしている時が「わたしイケてるかもー?!」って思いますか?
A5.お客さんでも、スタッフでも「調子づいている時」によしって思います。お客様とスタッフにも「あなた最高、素敵、いけてる」と言って、「そんなことない」と言いつつ調子こいてる姿が最高に嬉しい。喫茶ランドリーでは何かマニュアルに縛られない姿を意識しています。挨拶は大切ですが、あなたらしく振舞うことはいつもスタッフの人に言います。自分らしさが出て、片足浮いているくらいの人が好きです。
Q6. 喫茶ランドリーが現れた!と、近所の方は色んな意味でショックを受けたと思います。ご近所の方へどのようなアクションを起こして、その緊張感をほぐしましたか??
A6. 喫茶ランドリーのオープンのお祝いで大きなお花をいただきました。もらったお花を独り占めして飾っていても何もならないと思い小分けにして近所に配りました。挨拶周りのような、お裾分けです。しかし、実際に近所の人と直接会話をすることで「花が好きで嬉しかった」や「実は...」という自然な会話が生まれたのです。その時は、必死でやりたいと思ったことをしました。それが相手方のフックに引っかかったのかなと思います。したいと思った事、正しいと思ったこと、良かれと思った事を、全力で尽くすしかない。と思いました。
Q7. 元子さんの元気の秘訣(考えクセや気をつけていることなど)をお聞かせください!
A7.失敗・負けという言葉は自分の中には存在しないです。実際、ゲームでの負けはあると思います。他にも人生の選択や喫茶ランドリーでの出来事。人から見て失敗、負け、ダメと思えることは多々あったと思います。しかし自分の中では「まだ終わっていない」と思っていました。これはまだ途中経過だと。これは嬉しい時も同じで、「これで調子にのるなよ。まだ途中経過だ」。と。また明日に違う日が来るし新しいことが待っていると思っています。
Q8. 田中さんがもしブルースタジオの一員でしたらどんなことがしたいですか?またこれからのブルースタジオはどうあるべきだと考えます?
A8. リノベーションの言う言葉を定着させたからこそ、自分で生み出した言葉を自分で捨ててその先の世界を生み出したらかっこいいと思います。リノベーションという言葉を使わずともブルースタジオということがわかる危険な組織であってほしいです。
▼ 感想
まちと向き合うことについての新しい発見に加え、メッセージ、言葉の重みを見つめ直すことができました。普段ブルースタジオでも、自分ごとにすること、当事者になることの重要性を様々なプロジェクトで向き合うようにしています。
本日の講演では、自分だったら何ができるだろうかと考えさせられ、気付かされるお時間でした。ありがとうございます。次回のオンライン保健室も楽しみにしています!
▼ 関連情報ほか
・株式会社グランドレベルのHPはこちら
・田中元子氏著書「 マイパブリックとグランドレベル −今日からはじめるまちづくり− 」の購入はこちら