Magazine


一覧へ

INTERVIEW No.35


コミュニケーションとオーダーシャツ

高橋啓造 / Keizo Takahashi

1949年 大阪市生まれ。
1971年 カネタシャツ(株)入社
1975年 東京勤務:シャツの営業はじめ企画及び管理に従事する。
2001年 退社
2002年 オーダーシャツショップ「K's PAPA」立ち上げ、現在に至る。

ブルースタジオ(以下BS) 高橋啓造(以下KT)

「お気に入りの一枚がその人をハッピーにしてくれたら最高ですよね。」

iw35_02.jpg
ショップ中央にディスプレイされているシャツ。

BS いきなりですが、高橋さんにお伺いしたいのは、オーダーシャツの魅力についてです。
KT ほんとにいきなりやな(笑)。難しい質問ですが、皆さんが知りたい所でしょうね。なんといってもそのシャツが**「自分だけのオンリーワン」**になることですよ。
BS そのようなシャツを作るにはいろいろと難しいこともあるんじゃないですか?
KT その通りです。オーダーシャツはお客様一人一人の身体的特質と自身の趣味、ライフスタイルからデザインが決まります。ゆったり着たいのか?タイトに着たいのか?ドレッシーにしたいのか?カジュアルにしたいのか?そういったことが重要なポイントになります。お客様から可能な限り多くを引き出すことでベストなシャツができるのです。情報が多ければそれだけ再構築してカタチにするのは難しいのですが、**その人を知れば知っただけベストなシャツができる**モノなんです。ときどきお客様は要求が矛盾していることや、整理しきれていない場合があります。そういった場合には専門的な知識や経験からアドバイスさせていただきます。人は主観的な思考の中では整理することが難しいのです。**客観的な立場に立ち、求めているものを整理する**のも私の仕事だと思っています。それは決してお客様の要求を否定しているのではなく、お客様にとっての"お気に入り一枚のシャツ"を作るための重要な作業なのです。三十数年シャツづくりに関わってきましたが、未だに難しいですけどね(笑)。究極的には「お気に入りの一枚がその人をハッピーにしてくれたら最高ですよね。」
BS 私達もお客様の建物を設計する時に同じような事を考えますね。可能な限りお客様とコミュニケーションをとりながらも、客観的な視点を保つ事を心がけるんです。設計活動の主たる部分は様々な情報を整理する事ともいえますしね。
iw35_03.jpg
高橋さんの目にかなった生地のみがセレクトされている。

表情のあるシャツ

BS K's PAPAさんのお客さんの年齢層はどれくらいなのですか?
KT 気になりますか?
BS ええ。オーダーシャツと言うと高価で20代には縁のない印象がありましたが、先ほどいらっしゃったかたも20代でしたよね。以前に私がシャツをオーダーしたときにいらっしゃった方も同世代だったように思いますが。
KT そうですね〜。コアは20代後半から40代といったところでしょうか。一般的なオーダーシャツショップではシャツ一枚で数万円します。確かにそれでは若い人には遠い存在になるでしょう。しかし、私はオーダーシャツの魅力を若い人にも知ってもらいたいという思いから価格を下げているのです。それで堀田さんも今日来ているシャツをうち(K's PAPA)で作れられたんじゃないですか?
BS そうですね。このシャツも今ではお気に入りの一枚です。大事な契約のときなどに着ています。
KT 良いですよ、似合ってますよそのシャツ。もう一枚どうですか?
iw35_04.jpg
ショーウィンドウには使い込まれて味わい深いおもむきを漂わせている道具や生地がディスプレイされている。
BS またにします(笑)。ところで、格好良いシャツの着こなし方ってあるんですか?
KT ありません。シャツは着飾るモノではないのです。たとえ有名ブランドのシャツをマニュアル通りの着こなしをしたからといってそれがかっこいい訳ではないのです。決まりは無いのです。かっこいい人にはスタイルがあります。ライフスタイル、生き様です。それがある人はそれだけでかっこいいし、シャツの着こなしにもその人なりの表情が出てくる。その表情があるかどうかが重要なんです。大げさに言い過ぎたかな。確かに堀田さんがおっしゃる通り、格好良い着こなしというものはあります。しかし、それは絶対的なものでないのです。その人らしければいいのですよ。
iw35_05.jpg
飾り棚に整然と並べられた襟やカフスのサンプルはお客様がマジネーションを膨らませるために重要な役割を担っている。
BS そうですね。建築でもスタイルのある人のお部屋はかっこいいです。その人らしいです。 そういうお客さんから学ばせてもらうことは多いですね。

マジックを吹き込む。

BS 高橋さんは以前の職場からオーダーシャツの仕事をされていたんですか?
iw35_06.jpg
K's PAPAのタグ。
KT それが違うんですよ。以前の会社は大手のアパレルメーカーで、百貨店や量販店、専門店を相手に仕事をしていました。大量生産型のビジネスタイプですね。マスマーケットを対象にしたマーケティングや企画をしていました。シャツの仕事を30年続けてきて、行き着いたのが今のオーダーの仕事です。一人一人の身体にあった、スタイルにあった一枚のシャツを作ることがシャツの本質だと思ったんです。
BS それでは現在のオーダーシャツのお仕事の魅力を教えてください。
KT オーダーの仕事は以前の仕事と比べて効率がよくありません。以前は一度に同じデザインを何百、何千と生産していましたから。しかし、「着る人の顔が見えてこないな」と、そう感じていました。現在の仕事ではお客さんとのコミュニケーションによってシャツ作りができるんですよ。着る人のことを最大限理解し(短時間での理解には限界がありますが)、その人のための一枚を作る。完成したシャツを受け取りにきたときのお客様の期待と不安にあふれた表情や、シャツをお召しになり満足してもらったときの表情は最高です。そして、そのシャツを表情豊かに着こなして「K's PAPA」へ来ていただいたときは感動です。それが僕にとって、この仕事の最大の魅力です。
iw35_07.jpg
骨董通りを30メートルほど横道に入ったあたりにある落ち着いた表情を持つ外観。
BS なるほどコミュニケーションからモノ作りをする・・・。モノ作りの本質のように思います。高橋さんと話すことが楽しくて、シャツよりお話目的でくる方もいらっしゃるんじゃないですか(笑)。
KT そうですね。僕も人と話すのが好きですからね。話してその人のことをよく知れば知るほど味のある、表情のあるシャツができますからね。ただ、事務的に要望を聞くだけでは良い仕事はできません。コミュニケーションの中からサイズ、趣味以上の情報を引き出すことでお客さんの要望以上のシャツができるんです。
BS マジックですね!お客様の要望を聞き、採寸し、個性を知り、シャツを作る。完成までの2週間の間に高橋さんや職人さんのマジックがそこに吹き込まれて、お客様の期待を上回るシャツを作る!だから、皆さんそれに期待して「K's PAPA」へ何度もシャツを作りにくるんでしょうね。
KT そう思ってもらえるとうれしいです。
BS これからの「K's PAPA」についてお聞かせください
KT 変わりません。同じく一人一人のお気に入りになるシャツを一枚一枚作って行きます。よく、「高橋さんのシャツ私の店に置かせてよ。」と言われますが、断っています。それではオーダーシャツではないですし、僕がお客さんとコミュニケーションしなくちゃ「K's PAPA」じゃないですからね。お店もここの一店舗だけです。堀田さんもしっかりと良い空間作りをしてください。
BS ありがとうございます。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
KT こちらこそありがとうございました。

衣・食・住と言いますが高橋さんの作るオーダーメイドの「衣」と私達の作るオーダーメイドの「住」にコミュニケーションという共通のキーワードが見えたような気がします。

2005年3月19日 南青山『K's PAPA』にて
インタビュアー:堀田幸作(blue studio)
撮影:金子千秋

高橋啓造

Keizo Takahashi

1949年 大阪市生まれ。
1971年 カネタシャツ(株)入社
1975年 東京勤務:シャツの営業はじめ企画及び管理に従事する。
2001年 退社
2002年 オーダーシャツショップ「K's PAPA」立ち上げ、現在に至る。





Rent / Sale

Magazine

Portfolio