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INSIDE Vol.24


空に近いワンフロアで
家族と暮らす

Vol.24

東京都昭島市『haramo Contatto』 新築 住居 ファミリー
専有面積: 59.53㎡
職種: 建築デザイナー
趣味: テニス・自転車・ラーメン屋巡り

“カイダン” コミュニティー

東京都昭島市、青梅線の「中神」駅より徒歩3分。畑の点在するのどかな風景の中に忽然と現れるシンメトリーで重厚感のある四角い建物。ブルースタジオが設計を担当し、2011年5月に完成した賃貸共同住宅『haramo Contatto』(以下、Contatto)だ。

4階建ての造りではあるが、エレベーターは見当たらない。各階の住戸に向かうのは、建物の中心をくり抜くように空に向かって真っ直ぐに伸びる大階段。その幅は最大で4mメートル、階段と言うよりもむしろ建物内のコートヤードのようだ。

「4階までの階段」と言われれば、普通は敬遠してしまう。『Contatto』は、このような一般的な「階段」のイメージを逆手にとり、「カイダンコミュニティー」をコンセプトに、「階段を生活の一部としてとことん楽しんでもらおう」という考えでデザインされている。大階段の途中には花やグリーンが植えられた踊り場があり、各住戸の玄関はその踊り場を挟んで顔を合わせるように並んでいる。階段の頂部には、180度に大空と多摩の山並みを望むテラス。庇が心地よい日陰をつくり、1本の金柑の木を囲むようにベンチが配されている。天気のよい日は、ここで本を片手にひと時を過ごす住人の姿もあるそうだ。

竣工から1年半が経った、22世帯の入居者が暮らす『Contatto』。住人たちは、この階段をどのように生活に取り入れて暮らしているのだろう。今回は、『Contatto』の設計を担当したブルースタジオのデザイナーであり、現在、家族と共にこの物件に入居している吉川英之に、その暮らしぶりを取材した。

自ら設計した建物に住まうということは、デザイナーにとって最高の喜びであると同時に、最高の学習の機会。吉川ファミリーはこの住宅をどのように住みこなしているのだろうか。

家族に彩られた暮らし

1歳半になる愛娘と妻と共に、3人で暮らす吉川ファミリー。「階段をとことん楽しむ」をコンセプトにデザインされた『Contatto』では、もちろん各住戸も階段付きのメゾネットになっている。吉川ファミリーは、10タイプの間取りの中から、メゾネット型でありながらも、LDKと寝室、水廻りがワンフロアに納まった最上階の部屋を選んだ。それは、竣工当時、生まれたばかりだった小さな娘のことを考えて決めたこと。

「この子が自由に歩き回るようになったときのことを考えて、キッチンからすべての行動範囲を見渡せるのが魅力的だったかな。実際に歩き回るようになった今は、遊んでる姿も、寝ている姿もみていられるから、安心だし幸せを感じます」。娘を胸に抱えながら奥さまはそう話す。

ワンフロアに生活空間が納まっていることに加えて、2面の大きなガラス窓の先に広がるテラス空間も魅力だった。リビングルームの延長であるかのような広いテラスでは、休日の晴れた日にコーヒーを片手に景色を楽しんだり、ランチをしたりと豊かな時間を青空の下で過ごすそう。窓は開け放つことができるので、妊娠中から出産後にかけて家に居る時間が長かったという奥さまは、室内に居ながらに外を感じられる環境がとても良かったと笑顔で話す。

室内の家具やグリーンは、すべて吉川のチョイス。さまざまな雑貨に彩られた賑やかなインテリアだが、色々な居場所があり、個性的でありながら居心地がいい空間だ。

生活を潤すもの

各住戸のプライバシーを是とする多くの日本の共同住宅、マンションでは、住人間のコミュニケーションが乏しい。だが、『Contatto』では建物の象徴でもある大階段を介して、ここに住む人同士の自然なコミュニケーションが育まれつつある。

家で娘と過ごす時間が多い奥さま。入居前は階段のある生活を多少心配していたが、実際に暮らしてみればまったく苦ではなかったという。

「折り返しがなく障害物も無い広い階段は物を抱えていても苦にならないし、おまけにこの子を抱いて階段を昇り降りしていると、すれ違う人がみんな話しかけてくれたり手を差し伸べてくれたりするんです。会話も生まれやすくなりますね」と話す。

大空の下、この階段の往来は里山の散歩のような感覚に近いのかもしれない。同じ建物に暮らす住人との、すれ違いざまに交わされる何気ない挨拶は、山でのそれに似て心地よいものなのだろう。

豊かな暮らしは部屋の中だけで作られるものではない。便利な設備によって造られるものでもない。何気ない生活のシーンやシンプルな空間にこそ、そこに暮らす人たちらしい豊かさが輝いてみえることがある。

何気ない階段での一コマ。そんな妻の話に眼を細めるデザイナー・吉川の横顔が印象的だった。

撮影:山田新治郎(山田新治郎写真研究室)、藤沢百合(blue studio) 
取材・記事:申梨恵(blue studio)

今回の入居物件のご紹介

東京都昭島市『haramo Contatto』
専有面積:59.53㎡
竣工年:2011年5月





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