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INSIDE Vol.15


みんなで暮らす
一生ものの日々

Vol.15

東京都世田谷区『pinos』 リノベーション 住居 シェアハウス
専有面積: 9.35㎡
職種: 遊具デザイナー
趣味: ネフ集め・自転車・旅行

“共通言語”のあるシェアハウス

小劇場、古着屋、路上ミュージシャン。商業施設はチェーン店からお洒落なカフェ、渋い珈琲店まで。それらが2路線が交差する駅を中心にギュッと凝縮されている。東京都世田谷区「下北沢」はそんな街だ。

シェアハウス『pinos』は、駅周辺の賑やかな商店街を抜けた住宅街にある。細い路地の先に見えてくる真っ白な外壁。2階の玄関まで続くのはテラコッタの階段。入り口にはパエリア鍋の表札がぶら下がる。『pinos』はスペイン語で松ぼっくりの意味。9人の住人が同じ屋根(房)の下に暮らすイメージから名付けられた。

「初めて建物を見に来たとき、細い路地先の奥まったところに『pinos』を見つけた瞬間、「カワイイ!!」って。一気にテンションがあがりました」。そう話すのは、『pinos』が完成して初めての住人の1人、西嶋さん。ブルースタジオのメールマガジンで『pinos』の入居者募集を知った。

「まずは家賃を見て、「住めるな」と。でも、シェアハウスという選択肢は元々頭になかったし、大丈夫なの?と心配する友人の声も多かった。それで自分なりにネットで調べてみたんですが、ブルースタジオのWEBサイトでしか入居者を募集していないことが分かったんです。大々的に広告されているシェアハウスとは違って、このサイトを見ている人が集まるなら、何か“共通言語”があるんじゃないかと思ったんです」

西嶋さんが『pinos』へ引っ越した日、既に5人の住人が入居を始めていた。いつもは初対面で人見知りをするが、なぜか『pinos』ではすぐに他の住人と打ち解けられたそう。

「住んだ初日に、物干し竿を売っているお店を他の住人に訪ねたんです。そしたら、『じゃあ今から行こうか』と、当然のように店まで連れていってくれて。他の住人同士もまだ知り合って1週間のはずなのに、既にお互いに慣れている感じだったので、すごく自然に迎え入れてもらいました」

心地よくつながる住人たち

『pinos』は、元々下宿として使われていた築40年を木造アパートをリノベーションしたシェアハウス。住人たちは専有の部屋をもちながら、玄関、キッチン&ダイニング、中廊下、階段、シャワー、トイレなどを共用しながら暮らす。現在『pinos』には、年齢も職業もバラバラの男女9人が入居している。

「若い人が多いんだろうなと思って入居したんですが、30歳前後の住人が多かったのは意外でした。私は住人の中でちょうど中間の年齢ですが、この家にいると年の差がほとんど気になりません。年上の人をおちょくることもあるし、年下の人を尊敬することもある」と西嶋さん。

『pinos』の生活で予想外だったのは、住人全員が顔を合わせる機会が少ないこと。働き盛り、遊び盛りの住人たち。シェアハウスに住んでいても、それぞれの生活リズムが守られているようだ。普段の食事はバラバラだが、日曜日の夜は特に約束をするわけでもなく自然とリビングに住人が集まり、一緒に料理を作ったり、友人も招いて大勢でテーブルを囲んだりしているそうだ。

「極端にキレイ好きだったり、逆に散らかす人がいると、お互いに疲れてしまうと思います。ここの住人は性格も好みもさまざまだけど、みんな程よくきれい好き。だからトラブルはありません」と西嶋さん。夜遅くまでリビングで過ごした日も、必ずダイニングテーブルやキッチンを片付けてから眠るようにしているそう。元々は赤の他人だった人たちが集まっているから、家族のような慣れ合いがない。誰かが片付けてくれたんだと思うと、自分も気を付けようと思う。そんな心遣いの連鎖がみんなの共用部をキレイに保っている。

「ひと時だけど、一生の思い出」

「シェアハウスに住んでいると、1人でいるよりも色々な情報が入ってきやすいなと感じています。住人それぞれが職業や趣味を持っているから、例えばコンピュータに詳しい人がいたり、美術館で働いていて面白そうなイベントを教えてくれる人がいたり。これまで馴染みがなかった下北のことも、クリーニング屋がどこにあるとかあのお店が美味しいとか教え合ったりしています」

西嶋さんの職業は、公園や小学校などにある遊具のデザイナー。照明やテキスタイル、食器、雑貨など国内外のデザインが溢れる西嶋さんの部屋からは、その職業をうかがうことができる。

福岡出身の西嶋さん。『pinos』の前は、地元福岡の友達と2人で住居をシェアして暮らしていた。その家は上京している地元の友人たちが集まる場所になり、たくさんの友人に囲まれた賑やかで楽しい4年間を過ごしたそう。そんな日々の後、また新しい人たちとの出会いに期待して『pinos』へ入居した。

「pinosの住人はもちろん、さらにその友人や彼氏、彼女まで、この家に住んで友達が一気に増えました。pinosに遊びに来た人も、この家での人とのつながりを好きになってまた遊びに来るんです。外で会うのとは違って家にいるときのリラックスした素の顔を見せるから安心できる。仲良くなりやすいんだと思います」

人への興味。人との会話。人への心遣い。みんなで暮らしている意識を持ち、人とのつながりを積極的に楽しむ。『pinos』では、そんな価値観を持つ人たちの交流が生まれているようだ。

2つのシェア生活を経験した西嶋さんに、次はどんな家に住みたいかを聞いてみた。

「まだ具体的ではないけど、次はシェアハウスではないと思います。年齢も関係しているけど、楽しかった思い出が間延びしてしまうのが嫌なので、『pinos』での生活にも期限を決めて、楽しかったこの時期を一生の思い出としてずっと持っていきたい」

2010年9月11日『pinos』にて
撮影:笹本直裕 取材・文:和田亜弓(共にbluestudio)

今回の入居物件のご紹介

東京都世田谷区『pinos』
専有面積:9.35平米
竣工年:推定1960年代築
リノベーション完了:2009年11月





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