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INSIDE Vol.07


オフィスが
人を変える

Vol.07

東京都港区『GALLO』 リノベーション オフィス
専有面積: 74.01㎡
職種: ラジオ番組制作会社経営 他
趣味: ヴィンテージギター・ファイヤーキング

入居のきっかけは「入った瞬間のひらめき」

濃い色の木材のフローリングに真っ白な壁。『GALLO』 は2階のメゾネットで、住む人が自由にアレンジを加えられる“余白”のデザインが特徴の賃貸物件だ。この部屋にオフィスを構えるのは、ラジオ番組の制作を手がける株式会社BLUE BEAT。会社の設立から8年の間借りていたオフィスが、年を重ねるごとに人やモノが増えて飽和状態に。そのような状況で次のオフィスを探し始めてから1年、ようやく出会ったのがこの『GALLO』だった。

「実は、不動産屋でこの部屋を紹介されたとき、ブルースタジオの設計だとは知りませんでした。ブルースタジオの物件は以前から雑誌で見て気になっていたので、後で知って運命的な出会いだと思いましたね」

そう話すのは、代表取締役の村上雄信さん。入居の決め手となったのは、入り口のドアを開けた瞬間のひらめきだった。自然と、理想としていたオフィス空間をイメージすることができたという。

「1940~1960年代のミッドセンチュリーが好きで、以前のオフィスにいた時から、椅子や机、収納家具などを集めていました。あと、仕事柄CDが毎月100枚単位で増えるんですよ。そんな趣味で集めたモノと仕事で使うモノとを自分なりにうまく見せることができないかと考えるようになっていました。この物件を見たときに、そのイメージと現実が合致したんです」

空間をヒントに、好きな物を思いっきり見せる

モノをどのように所有するか? そこにも入居者が工夫をこらし空間を使いこなす楽しみがある。『GALLO』には、そんな考えから収納スペースがほとんど設けられていない。

「確かにこの部屋は収納が少ないですよね。でも裏を返せば、それだけ好きなモノを置くスペースがある。持っている家具を自由にレイアウトできる、そういうことだと思いましたね。今回のオフィスでは、モノを隠すのではなく、思いっきり見せることにこだわりました」

その言葉通り、村上さんのオフィスはデザイン性の高い家具や雑貨、グラフィックなどが目を引く。オフィスというよりも、寛ぎながら楽しめるギャラリーのような空間になっている。

仕事柄増え続けるというCDは、部屋に合わせて村上さん自らが特注したオープン棚にまとめて収納している。整然と並ぶ大量のCDはそれだけでインテリアの主役に。来客者にインパクトを与え、BLUE BEATへの訪問を忘れられないものにする。このオープン棚の裏にある木材の壁は、入居者が空間を使いこなすために『GALLO』の設計者が仕掛けたヒント。BLUE BEATは、それを見事に使いこなしてくれた。

入居者のスパイスで完成する賃貸物件

村上さんが特に気に入っているのが、2階のソファー空間だ。ローボードと壁面の収納は、以前ラジオの収録で知り合った茅ヶ崎の家具デザイナー、犬塚浩太さんに特注したもの。

「犬塚さんには、この部屋までわざわざ来てもらい家具をオーダーしました。どうしてもオフィスで仕事をする時間が長いので、どのような空間にしたら気持ちよく過ごせるかを一緒に考えてもらったんです。同時に仕事場は、コーポレートアイデンティティを表現する重要なプレゼンテーションの場でもあると考えているので、自分の思い描いていた空間にとことんこだわりました」

現在、外部のスタッフを併せて20~30名が出入りをしているというBLUE BEAT。このソファー空間は、クライアントとの打合せスペースであり、スタッフの寛ぎスペースでもある。この事務所を訪れるクライアントやスタッフの反応はどのようなものだろうか?

「予想していた以上にプラスの反響があり、たとえば、クライアントとの打合せは以前より効率的になりましたね。でも、それ以上にスタッフの意識の変化に驚かされていますよ。自分もそうだったんですが、以前のオフィスにいたときは、打合せで外出をするとスタッフがなかなか帰ってこなかったんです(笑)。それが今はすぐに帰ってくるようになりました。これは良い意味で想定外でしたね。居心地のよい環境になったことで、作業の効率も格段に上がりましたよ」

ブルースタジオでは、入居者が「住みこなす」力を存分に発揮できるように、引き算のデザインを心がけている。当たり前のことだが、賃貸物件はデザインの段階で入居者が決まっていない。デザイナーは、立地や部屋の広さなどの条件から、そこを使う人を具体的に想定し、部屋の間取りや仕様を決めていく。賃貸物件に加えられる入居者というスパイス。たとえ同じ部屋だとしても、使う人によって十人十色の空間になる。つまり、入居者が住んで初めて、賃貸物件のデザインは完成するのだ。

『GALLO』に加えられたのは、BLUE BEATのスパイス。元の空間をヒントに収納棚をオーダーするなど所有しているモノを“魅せる”ことにこだわり、コーポレートアイデンティティを表すと同時に、スタッフが戻ってきたくなるような居心地のよいオフィスとなった。

デザイナーの想定を超えるような空間の使いこなし。それを見られることは、賃貸物件をデザインする醍醐味であり、次のクリエイティビティへのエネルギーを得るありがたい機会でもある。

2008年11月10日『GALLO 306号室』にて
撮影:岩田啓治 取材:大山啓 文:和田亜弓(共にblue studio)

※この記事は、インタビュー記事 を元に、2009年3月にリライトしたものです。

今回の入居物件のご紹介

東京都港区『GALLO』
専有面積:74.01平米
竣工年:1964年
リノベーション完了:2007年6月





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