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INSIDE Vol.05


調和する
論理と感性

Vol.05

東京都新宿区『2SKY.BLDG』 リノベーション オフィス
専有面積: 42.50㎡
職種: 弁護士
趣味: 音楽鑑賞

理想の弁護士像とフィットした部屋

第2スカイビルは1968年、海軍出身の異端建築家、渡邊洋治の設計により建築された。潜水艦の中へ潜り込むような黒い螺旋階段が地上から屋上まで続く。

2008年4月、ブルースタジオはこの老艦を大規模なリノベーションによって新たな船出へと旅立たせた。今回から2回に渡り、この老艦の新たな入居者を紹介する。

このビルの7階に事務所を構えるのは、弁護士/河井敏伸さん。数年前からブルースタジオのことは知っていたが、第2スカイビルへの入居を決めたのには、偶然とも必然とも言えるようなエピソードが・・・。

「たまたま通りかかったときにオープンルームの看板を見て、立ち寄ってみたんです。それで、この部屋を見て・・・。そろそろ事務所を移ってもいいなぁとは思っていたんですが、その場で割と、直感で決めたという感じでした。この部屋は、男性的な力強さがありますよね。あと、自由な感じもします。それが、自分の理想としている弁護士像とフィットしていたんです」

部屋の内装は、建物の男らしいただずまいを強調するような、モルタル仕上げの床や黒い鋼板壁が特徴的。木素材は一切使われておらず、スタイリッシュな雰囲気だ。

白と黒で統一された家具は、そのほとんどが入居後に購入したもの。これらは、河井さんの好きなテイストでセレクトされたものだが、法を扱う者の潔白さや公正さを象徴しているようでもある。応接用の黒いテーブルは、鏡面素材で周りの物が映りこみ、触るとすぐに指紋がつく。毎回打合せの前には、このテーブルをピカピカに磨いておくのだそう。

職業に対する信念

この部屋に事務所を移転したことも1つのきっかけとなり、自身の弁護士事務所のWEBサイトの立ち上げを考えた。そして、多忙を極める中、3週間という短い期間でWEBサイトを開設。WEBページにはオフィスの写真も掲載した。

「事務所のWEBサイトを作ったのは今回が初めてです。WEB制作会社へ依頼をしてつくってもらったのですが、その間の制作者とのメールのやりとりは相当な量でしたね。2月5日に立ち上げたばかりでまだあまり反響はありませんが、弁護士は敷居が高くてはいけないと考えていますので、窓口を広げて様々な仕事を受けていきたいと考えていますね」

“超難関試験を突破した偉い先生”という弁護士像を想像する方も多いのではないだろうか。しかし、近時の司法試験制度の改革の影響で、今後弁護士の数が増えていくことは確実。これからの弁護士には競争も待ち受けている。

「弁護士事務所で、威張ったおじさんがふんぞり返ってソファーに座っている・・・。そういった古い弁護士のイメージは払拭したいと思っていますね。弁護士って、そんなに偉いもんでもないだろうと考えていますし。このオフィスは、大抵のお客様に好評ですよ。コンクリートむき出しの天井を見て、まだ工事中ですか?なんて聞かれたこともありますけど(笑)。先生らしいですねと、言っていただいたこともあります」

河井法律事務所のWEBサイトでは報酬が明確に表示されているが、ここにも河井さんの信念がある。

「現在、弁護士報酬は各弁護士が自由に定めて良いことになっていて、統一された基準がないんです。ただでさえ困っていて弁護士を頼るのに、報酬がいくらなのかが分からなければ余計不安になってしまいますよね。だから、WEB上にも金額を表示していますし、契約前には必ず見積書を提示して、十分に納得してもらってから依頼をしてもらっています」

写真上:小上がりの部分は土足厳禁にしているという河井さん。写真は縞鋼板の土間部分。

空間と思考の整理整頓

取材中に届いた1枚のFAX。河井さんはすぐに席を立ち、FAXを確認。そして、仕事のFAXではないと分かると、すぐさまシュレッターへ。“必要のないものは溜め込まない”。一連の行動は、普段からの習慣であることを感じさせた。

「物が整理されていないと、思考も機能的に働きませんね。物の在処など、余計な情報を常に頭の片隅に置いておくのももったいないですから。判例のデータも、有料のサービスを利用して、すべてネットワーク上で管理しています。」なるほど、パソコン上のスペースにも、無駄は一切見当たらない。

365日中363日は仕事をしているという河井さん。自宅にいるよりもこの事務所にいる時間が圧倒的に多いそうだが、生活感は全く感じさせない。本はよく使うものとたまにしか見ないものを2つの書棚に分けて保管。また、大量の資料は、事件ごとに分けて管理しているという。
“自分の頭だけが頼りですから”。多数の事件を処理するクリアな頭は、機能的な空間使用によって保たれている、と言っても過言ではなさそうだ。

「先日も、ここに若手の経営者を集めて朝食会を行いましたが、そこから逆算して事務所のイメージを決めていったというのもあります。先生、というよりも一緒に仕事をする仲間として、“こいつと一緒にやりたい”という印象を受けてもらいたいですね。」

弁護士としては珍しく文学部出身、社会学を専攻した河井さん。コミュニケーションのベースは、あくまでふつうの言葉でないといけないと考え、形式論ばかりではなく弁護士も現場を知るべきという信念がある。
職業に対する真剣な態度や顔つきは、顧客からの信頼感を得るだろう。しかし、そんな顔つきが好きな音楽のお話になると、途端に緩む。取材も始終、心地よい音につつまれる中行われた。

写真左上:執筆の際はヘッドホンを装着。射撃用のもので、人の声のみ耳まで通る。

2009年2月19日『第2スカイビル』にて
撮影:岩田啓治 取材・文:和田亜弓(共にblue studio)

今回の入居物件のご紹介

東京都新宿区『第2スカイビル』
専有面積:42.50平米
竣工年:1968年
リノベーション完了:2008年6月





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