Magazine


一覧へ

INSIDE Vol.23


バイヤー的感覚で
発掘した部屋

Vol.23

東京都大田区『うめこみち』 リノベーション 住居 カップル
専有面積: 39.74㎡
職種: インテリアショップ勤務
趣味: 雑貨・アート集め

たてものと家族の新しい歴史

東京の「品川」から横浜を経由して、神奈川の「三崎口」までをつなぐ京浜急行電鉄。通称・京急線には、青物横丁、屏風浦、生麦、金沢文庫など、歴史を感じさせる駅名が並んでいる。その中でも、ひときわ魅惑的な名前の駅がある。「梅屋敷」。名前を聞くだけで、梅の花が咲き誇る大きなお屋敷が目に浮かぶ。その名前の通り、江戸時代には東海道沿いの梅が見事な茶屋を中心に栄えた街。多くの旅人たちが足を休め、道すがら出会った人と会話を交わしたそうな。そんな梅屋敷を昔から知る家族が、ここ『うめこみち』の大家さんだ。

ひいお祖父様が建てた築80年、戦火も逃れた立派な母屋。その母屋の増築部分は、お祖父様によって隣地に曵屋されていた。さらに30年前、お父様によって、隣地に4階建ての賃貸マンションが建てられた。曵屋後、4軒の長屋として使われていた母屋の一部は、駐車場の中にぽつんと取り残された状況だった。

この既存の状況を生かし、建物を家族と見立てて再生を図ったのが『うめこみち』だ。築80年の母屋は、この場所を見守る存在の「ひいおじいちゃん」。リノベーションした築60年の長屋は「おじいちゃん」。築30年の賃貸マンションは「おとうさん」。そして今回、長屋を囲むように新築した2軒の建物は「ちびっこ」たち。“たてもの家族”は、小道と芝生があるひとつの庭をみんなで囲んでいる。

2012年、5世帯の住人を新たに迎えた『うめこみち』。新芽が芽吹くようにゆっくりと新しい暮らしが育まれている。

価値観やセンスにかなう空間を選ぶ

築60年の木造長屋、通称“おじいさん建物”に入居しているのは、共にインテリアショップで働いている新實さん夫婦。結婚して初めて2人で暮らす家を探していて、ブルースタジオのWEBサイトで『うめこみち』を見つけた。

「場所にこだわらず、40平米以上で10〜12万円という条件で物件を探していました。『うめこみち』はその条件に合っていて、写真から僕たちの好きな雰囲気だということも分かっていたので、内見にきて3分で入居を決めました」

そう話すご主人は、20代にして引っ越し経験がすでに9回。これまでも場所にはこだわらず、空間を重視して物件を選んできた。ご主人と付き合いが長い奥さまも、これまでに彼が住んだ部屋をたくさん見てきたそう。

「地方出身なこともあって、せっかく東京にいるんだから色々な場所に住んでみたいと考えています。1つ駅が変わるだけで、ガラッと雰囲気が変わる。そんな都市って日本では東京だけですから」と奥さま。

結婚を機に4年〜10年くらいの長い期間、住む家として選んだ『うめこみち』。物件に付随してくる「街」のよさは、住んでから発見していけばいい。そう考えて、住む場所へのこだわりを清く捨てることにより、短期間で自分たちの価値観やセンスにかなう物件を見つけ出した。大家さん家族の顔が見えるという『うめこみち』ならではの暮らしも、ここに長く暮らしていくと考えたときに安心感になったそうだ。

「自分たちのお店をつくる」という夢に向かって

「実家が一軒家だったので、庭からそのまま家に入るスタイルや2階建てというところが気に入っています。階段を介して1階と2階のスペースがきっちり分かれているのも暮らしやすいですね」と奥様。1階はキッチン・ダイニングと水まわり、2階はリビングとベッドスペースとして使い分けている。

キッチン・ダイニングには、空間の広さに合わせて朝食用のテーブルをセレクトした。ヴィンテージのアンバーグラスなど、お気に入りの食器を並べた業務用のオープン棚や靴の収納に使っているチェスト。これらの家具は、この部屋に合わせて中古家具屋で発掘してきた戦利品。デザインや品質だけでなく、その価格も含めたバランスを大切にしたという。

ヨーロッパの蚤の市や目黒の中古家具屋、インターネットのオークションなど……。どこかに眠っているはずのお宝を、自分たちの目で選び出す。そんな共通の楽しみをもつ2人には、近い将来の展望がある。

「自分たちのお店をつくりたいというのがずっと共通の想いで。結婚をしたことで、よりそれを目指しやすくなったなと感じています。実家がある愛知に小さいけれどお客さんを集めている好きなおもちゃ屋さんがあるんですよ。僕たちもニッチで新しいことを始めれば、お客さんの方が面白がって来てくれるんじゃないかと思うんです」とご主人。

インテリアショップで接客の仕事をする傍ら、休日は家でインターネットや映画を見て過ごすことが多いという2人。そんな肩の力を抜いた時間にも、自分のアンテナを張りインスピレーションを求めてしまう。いつだって「お店をつくる」という夢に向かう途上だから。

そんなバイヤー的入居者に射止められた『うめこみち』。中古家具屋で発掘する戦利品のように、デザインだけでなく「家賃を含めたバランス」も、2人の目に適ったようだ。

2012年7月21日 『うめこみち』にて
撮影:山田耕司 取材・記事:和田亜弓(blue studio)

今回の入居物件のご紹介

東京都大田区大森中『うめこみち』
専有面積:39.74平米
竣工年:昭和33年
リノベーション完了:2012年1月





Rent / Sale

Magazine

Portfolio