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Google のトロント開発が中断!

ヨシダ

ブルスタの都市計画担当。コーヒーやお酒が好きでよく都内を徘徊してます。学生時代にフィンランドに建築留学していました。


こんにちは。
ヨシダです。

Googleの関連会社のSidewalk labs.が進めていたトロントの開発から撤退するとのニュースがありました。
今日のブログでは、今回のニュースの背景などを他のニュース記事を参照にしつつまとめてみようかと思います!

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image credits:Sidewalk labs.

はい、いきなりですが、こちらのニュース記事が背景含めてとても良くまとまっております!(笑)
https://wired.jp/2020/05/09/alphabets-sidewalk-labs-scraps-ambitious-toronto-project/
...ですが、今回のブログではこれを機に初めてプロジェクトを知るような方も対象とし、プロジェクト内容も含めて簡単にですがまとめてみようかと思います。


プロジェクトの概要

Sidewalk labs.はGoogleの親会社・Alphabet の小会社です。なので、Googleの関連会社とか兄弟会社と記載されています。2017年のプロポーザルによりSidewalk labs.が選定され、直近まで進めていたのがこちらのプロジェクト。2019年には、約1500Pもの膨大なマスタープランが公開され、業界でもザワザワしておりました。
https://www.sidewalktoronto.ca/midp/
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image credits:Sidewalk labs.

敷地はトロントの中心地から少し離れた場所にあり、元々は工業用途に利用されていたのですが、工業用地としての利用は他の国にシフトしてしまい、かといって利用するためには莫大なインフラ投資が必要なため未利用のまま放置されていたようです。
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image credits:Sidewalk labs.

最初に着手するエリア:Quayside(キーサイド)の敷地面積はザックリ約5.0haほどとなり、Sidewalk labs.も1400億円程を投じる計画でした。その後、他の民間企業からの投融資を促進することで、周辺エリア含めた約140haを開発しようという壮大な計画。なお、良く耳にするIDEA(Innovative Development and Economic Acceleration)というのはプロジェクト全体の名称です。

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image credits:Sidewalk labs.

さて内容について、真面目にまとめようとすると収集がつかないほどのボリュームであり、僕の手では存分に余ってしまいますので(汗)、ここでは(本当に)概要のみ。マスタープラン全体は大きく次の4部構成となってます。①概要、②港湾地区全体を見据えた計画、③主にQuaysideの詳細計画、④公共と民間の連携方針。

②はエリアの歴史から始まり、Quaysideの計画(モビリティ、公共空間、建物・住宅、エネルギー・持続可能性、ソフト・社会資本、デジタル)の概要を説明していきつつ、、各提案における経済指標と(工事費の削減効果など)、エビデンスとなる研究論文等も記載しつつ、、周辺エリアと連携した物流ネットワーク等の事業提案のシミュレーション、最後には開発における経済的効果のシミュレーションや目標値等を設定しています。(もう既にお腹一杯になりそうです。)

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image credits:Sidewalk labs.
海外の都市計画や開発では、度々雇用者数の増減が目標数値になりますが、ここでも雇用者数の増加を大きく打ち出しています。地方創生では、仕事をいかに生み出せるかが重要だからですね。

③では各提案の技術的・経済的な掘り下げ、④では公民の役割分担をまとめており、Sidewalk labs.自体は、開発事業の資金調達のパートナーやリード・デベロッパーの位置づけであると記載されています。個人的には、③の中に記載のある、時間により使い方が変わる道路デザイン、木材振興のためのプレカットによる安価な建物計画、実際のデータに基づいた建築法規の運用(光や風等の実態値をもとにルールを運用)等の施策は今後も検討が続いて欲しいテーマでした。
...このように、、(ほぼ説明を放棄しているのですが、)何となく提案がカバーしている幅の広さが伝われば良いかと思います(汗)。


プロジェクト中断の背景

Sidewalk labs.のCEOの声明から、「コロナの影響でトロントの不動産市況が悪化し、プロジェクトの収益性の確保が困難になった」とされています。プロジェクトによる税収の増額分を成果報酬のような形で受けることも提案していたので、収益性の問題はクリティカルだったのでしょう。
https://medium.com/sidewalk-talk/why-were-no-longer-pursuing-the-quayside-project-and-what-s-next-for-sidewalk-labs-9a61de3fee3a

ただ、冒頭の記事にあるように元々地元からは主にデータの管理内容等を巡って反対され続けていた状況でもありました。
反対派のグループ(Block Sidewalk)からは、「監視社会の実験台にしようとしていた」との指摘もあり辛辣です。。
https://www.blocksidewalk.ca/victory

こうした状況から、Sidewalk側としてもプロジェクトの政治リスクに当惑していたとも報じられていました。他方、トロント市としてはデータの扱いがそもそも合法かどうかの判断、ビジネスモデル自体やインフラ・公営住宅整備の基金等への出資判断等が追いついていないままにマスタープランが発表され、両者の溝も深まっていったようです。
トロント市長からは今回の中断の判断に悔いが残るという指摘もあり、トロント市内で「トップと現場でも温度差」があったのかと感じました。
https://www.cbc.ca/news/canada/toronto/sidewalk-labs-cancels-project-1.5559370
以上から、中断の主要因は関係者間の関係性の悪化なのかと感じました。事業者と住民グループや市・行政、市・行政と市のトップ等の関係性。

こちらのニュース、今後のスマートシティに大きな影響を与えるニュースでした。
データ管理の方法についても、Sidewalkの提案ではトロント市が管理する組織が運用するとされていたのですが、それでも頓挫してしまった今回のプロジェクト。今後のスマートシティのプロジェクトでも、どのようにデータを管理するべきかと、地域や行政とどのように納得感を得ながら進めていくのかがカギになりそうです。

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補足1:日本では「情報銀行」として銀行等の第3者がデータを管理する方向性も模索されています。
http://www.intellilink.co.jp/article/column/security-info_bank01.html

補足2:TOYOTAのスマートシティ「Woven City」については、トップ自らが「やる抜く!」と断言されてます。トロントPJの影響を受けての発言ですが、迅速な声明は流石です。。
https://jidounten-lab.com/u_toyota-2020-03





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